日吉歯科診療所 熊谷 崇
今回のマルメ大学研修は、2006年秋に亡くなられたダグラス・ブラッタール先生の強いサポートにより実現された2007年マルメ大学研修の第二弾です。 マルメ大学でもこのような研修セミナーを開催することは異例とのことですが、私どもの研修についての意図を良く理解していただき、歯学部をあげて今回もセミナーのために力を尽くして下さると約束していただいています。
私がこのセミナーを企画したとき、まず始めにブラッタール先生にお願いをしたのは、スウェーデンの「歯科医療哲学」を理解できるようなセミナーにしてほしいと言うことでした。歯科医療システムを構築しようとするとき、多くの人は形からはいることが多いように思います。ちなみに、オーラルフィジシャンコースを受講された方は、日吉歯科診療所のシステムを参考にすることが多いかもしれません。しかし、システムを忠実に模倣したとしても、決して患者さんの真の利益につながる歯科診療所として機能することはできません。なぜならば、システムを動かすのは「哲学」だからです。どんな「哲学」をもって歯科医療に臨めばいいのか、皆さんにはこの研修セミナーを通してその答えを各々で考える機会にしていただきたいと願っています。
ある意味では、それぞれの参加者にとって、歯科医療者としての自分を考えるターニングポイントとなる研修になるかもしれません。そうであってほしいと願っています。ですから、参加の皆さんには、そうした心構えで参加していただくことを強く希望します。物見遊山的な安易な考え方ではなく、また単なる自己研鑽ではなく、これからの自身の歯科医療をどう構築すれば患者さんの真の利益に結びつく歯科医療を展開することができるかということを、しっかり学び、そして考える機会にしていただきたいと思います。
日吉歯科診療所 加藤 大明
本研修は、2007年Oral Physicianスウェーデンマルメ研修の第2弾として2011年6月13日から17日までの5日間、スウェーデンマルメ大学歯学部にて行なわれました。カリオロジー科教授Dan Ericson先生をコースディレクーターとして同大歯学部の全面サポートのもと企画され、日本からは57名の歯科医師、歯科衛生士が参加いたしました。
5日間のプログラムは、歯科医療の哲学、PBL教育、深部齲蝕への対応、メインテナンス等多岐にわたる内容の講義、公立歯科医院、老人介護施設等の見学、およびグループディスカッションから構成されており、(詳細は下記表をご覧ください。)科学と合理性、そして生体への尊厳に基づいた講義に参加者は多くを学び、どのセッションにおいても講義終了後途切れなく質問が寄せられました。そのような参加者の真摯に学ぶ姿勢に対し、講師陣の先生方には熱意をもって応えていただき、言語や歯科医療のシステムを超えた濃密な交流が連日行なわれました。
また研修終了翌日の帰国日には訪問歯科大手オーラルケアAB社を訪問しました。高齢者の残存歯数の増加を背景とした予防中心の取り組みに日本の訪問歯科診療の未来を見いだす参加者も多くいました。
ここに本研修のプログラム、研修中の写真、および参加者の感想を掲載いたします。
会場と周辺
研修
レセプション等
「勉強になった」と一言で言い表すことができないほど多くの事を学び、得、多くの事を考えさせられた充実した一週間でした。
授業の詳細や、スウェーデンと日本の違いの細かい具体例についてではなく、私がこの研修を通して感じたことを書きたいと思います。
私はU20の専門医を目指し勉強しています。20歳以下の成長期の子供たちが対象ですので、カリオロジーは私たちの仕事における主軸と行っても過言ではありません。私が日吉歯科で勉強し始めて、7カ月が経とうとしています。もちろん日吉歯科がやっているような歯科医療に憧れ、自分もそんな歯科医療がしたくて、学びに来る決意をした訳ですが、一日一日経てば経つほど、一つ一つ学べば学ぶほど、私の中に描いていた「予防医療」とは、何てぼやっとした、そして薄っぺらいものだったのだろうかと恥ずかしく思っていました。MTMの流れも、唾液検査の役割も、リスク評価の意味も、何よりこういった歯科医療の必要性も、どれも表面的な認識に過ぎなかったのです。しかし、毎日の診療や、それを通して院長やふじこ先生を始めとする諸先生方、そしてスタッフの方々から、多くの事を教えて頂き、私が進むべき道、目指している歯科医療の形が、少しずつではありますが、見え始めてきた気がしています。
そんな中、マルメ研修に参加することができました。もちろん、国民性、国の政策・制度、社会的背景などは、全く違います。リスクアセスメントの因子となるものや、その評価方法、それから決められるメインテナンスの間隔なども少しずつ違いがあります。しかし、歯科医療の本来あるべき姿、私たち歯科医療従事者が果たすべき役割、カリオロジーという考え方、そもそも何のためのカリオロジーなのか?といったような、歯科医療者の根本的なフィロソフィー「精神」も…、一人ひとりのリスクをきちんと読み取り、それに応じてその人その人に合った対応をしていくという歯科医療のあり方も…、日吉歯科の考え方や日吉歯科の中で毎日当たり前に行われていることと、ほとんどと変わりがないと感じました。
「カリエスがなくなると歯医者の仕事がなくなる」といった風潮が日本にはどうしてもあります。これはまさに、「歯科医師の仕事=カリエスの治療をすること」と捉えているという証拠です。もちろんカリエスの治療も歯科医師の大切な仕事ですが、歯科医師、歯科医療従事者の本来の仕事ではないのです。「新たなカリエスを作らせないこと。」「カリエスができる環境をできるだけ作らせないこと。」「カリエスフリーを維持させること。」そのために、最善を尽くし、それらを実現させていくことが、私たちの本来の仕事だとすると、人の数だけ、カリオロジーが必要な訳ですから、永遠に仕事は無くならないはずです。もちろん、私たちは、カリエスだけを相手にしている訳ではないですが、これは歯周病にだって同じことが言えると思います。このことが、歯科医師、歯科医療従事者の共通認識になっているという点が、スウェーデンと日本の一番の違いなのだと私は感じました。
歯科医師、歯科衛生士といったライセンスを与えられているということは、歯科医療を通じ、国民のよりいっそうの健康を実現させる責任を持っているということです。ただ目の前にある表面的な現象・現状を捉えて、画一的な対応をするといった「仕事」は、その責任を果たしていると言えるでしょうか。自分の目の前にいる患者さんの将来そして一生に目を向け、今何が必要なのか?真剣に考えること、つまり、きちんとしたリスク評価に基づいた予測を行い、個々に合った対応を考え、実行していくことが私たちの役目なのです。私たち歯科医療者が本来やるべき仕事は、本当に誇るべき素晴らしい仕事なのだと強く感じます。と同時に、その誇りと責任を私たちは決して忘れてはいけないとも感じます。
スウェーデンと日本では、国民性も国の政策・制度も社会的背景も全く違うからと、他人事のように、絵空事のように捉えているとひとも多いと思います。スウェーデンという国は確かに「予防パラダイス」ではないのですが、国全体が「予防医療」という同じ方向を向いているという事実も、そしてそれから生まれた結果も、間違いなく素晴らしいことです。このことをしっかり、受け止め、学び、私たちの国に、きちんと反映させていかなくてはならないと感じます。
日吉歯科で過ごした月日がなければきっと、この研修で私が得られたことの半分も得ること、感じることはできなかったと思います。しかし、私の経験や知識はまだまだ不十分です。帰国後、院長より、このような研修では自分の能力以上の事は得られないと教えて頂きました。その通りだな…と思います。これから更に、日々、患者さんに真剣に向き合い、その人その人に合った歯科医療を考えて行くことを続け、少し成長できた時、またスウェーデンに行って今回のような研修を受けると、きっと今回とは違った視点、角度から、もっと多くの何かを感じ取り、得ることができるのだと思います。U20のドクターとして、成長して、是非また勉強に行きたいです。
オーラルフィジシャンコース・スウェーデン、マルメ大学研修の全日程を終えて、自分の中では得たものがあまりに多すぎ、そしてあまりに素晴らしすぎて、何から話を始めればよいのかわからないというのが正直な所です。ですが、まずは、期待していた以上のこの多くの収穫を得ることができたマルメ研修に参加する機会に巡り会えたことに感謝を申し上げます。
私にとって、この研修は初めての海外研修、というより初めて日本の外に足を踏み出す機会であり、長い間不安もありましたが楽しみに待ち望んでいました。成田空港で加藤先生から配布された熊谷先生の御手紙に、どんなシステムを忠実に模倣したとしても、決して患者さんの真の利益につながる診療所として機能することはできない。システムを動かすのは「哲学」であり、どんな「哲学」をもって歯科医療に臨めばよいのかを考える機会にしていただきたい、という言葉がありましたが、スウェーデンの歯科医療の源にある考え方は期待を裏切らない大変素晴らしいものであり、自分が今後、歯科医師としてどのような考え方で歯科医療に貢献できるかを考える大変よい機会になったと思います。
歯科医療を実践するにあたり、知識や技術があることは勿論、現場においては、診療を円滑に効率よく行うシステムの構築など、本当に沢山の要素を総動員して取り組まなくてはなりません。しかし大切なことは、すべては誰のために、何のために、歯科医療を行い、どんな医療を目指していくのかという根本的な考え方が明確であることが必要ではないかと、今回の研修で感じました。この考え方が明確ならば、何をなすべきかはおのずと見えてくるものであり、ぶれない行動がとれるのではないかと思います。原点はそんな個々の医療に対する姿勢なのではないでしょうか。私にこの様な考え方を抱かせてくれたのはD.Ericson先生をはじめとした豪華な講師陣や、スウェーデンという国家の社会のシステムの在り方でした。
講義に関して、内容は高度であり、大変勉強になったことは言うまでもありません。なによりも特筆すべきは、講義で取り扱って下さった内容は医療従事者の視点のみならず、患者さんの目線にあった歯科医療を行うために、確固たるエビデンスに基づいて追求してきた結果であり、講師から「どのように患者さんの健康を守り、増進すべきか」という揺るぎない理念のもとで研究、臨床、教育に取り組んでいるという姿勢が肌で感じられるということです。考え方の元がしっかりしていて、皆が同じ方向を向いていることがいかに大切で大きな力として作用するのかを思い知らされました。また、どの講師も我々聴講者が飽きずに集中して講義を聴けるように配慮をして下さいました。我々の様子をみて休憩をとって下さったり、講義の中にユーモアを取り入れて下さったりと、とにかく目の前の相手の事を考えてくれる姿勢が一貫していて、暖かみがあり、素晴らしい講師陣でした。
また、マルメ市内の公的医療期間、高齢者の介護施設などを見学し、研究機関のみならずスウェーデンの歯科医療、社会福祉の考え方も一貫し、リンクしている点も素晴らしいと思いました。考え方にブレがなく一貫しており、さらには経済的側面まで考えたシステムが導入されていることは素晴らしいと思いました。
そもそもスウェーデンは、「人が人として生きるにあたり、当然であることを実現するのに、どうすればそれが国家全体にいきわたるかを考え、とにかく具体的に実現することを追求する」という国の姿勢がはっきり見える国家であると思います。国家単位でしっかりした考え方をもっているため、形成された社会のシステムも方向性のぶれないものとなるのかもしれません。少なくても私はこの姿勢をいろんな意味で今の日本は見習うべきであると思います。あたりまえのことをあたりまえにやることは決して我々にできないはずがありません。人としてあたりまえに振る舞う人間性は我々も持っているはずですから。
講義の個々の内容や細かい研修の項目の感想については、省略させていただき、今回の研修の大きなテーマについての感想を私なりに述べさせていただきましたが、全体を通して実に有意義な研修であったと思いますし、声を大にして言い切れます。
熊谷先生、未熟なオーラルフィジシャンの我々にこのような機会を与えてくださったことに大変感謝いたしております。先生とブラッタール先生の絆により得られたこの研修に、デンタルプロフェッションとして多くのスタッフと素晴らしい時間を共有できた事を誇りに思います。
冒頭この海外研修は医療哲学に触れ、歯科医療人として魂を揺さぶられるものになると加藤先生から訓辞を承りましたが、まさしくその通りでありました。
私が今回の研修の感想を一文字で表現すると 『至』
本当の歯科医療を育む豊かな環境、風土、感性を全人教育を謳うマルメ大学の教室で垣間見えました。
常日頃より日吉歯科診療所を目標に抽象的ながら、口腔ヘルスセンター基盤の上に専門性の高い歯科医療の構築という、実現目標が明確になりました。
自分を取り囲む周囲の環境、鋭意取り組んできた専門的な臨床、それらに附帯する設備などのハード面、人材育成や教育などのソフト面などの全てが【オーラルヘルス】で一貫して繋がり、そのコアな部分がこの医療哲学在りきで発信されていると確信できました。
スカンジナビア歯学が自分の源流であり、およそ自分達が患者さんに提供できる歯科医療の本質的価値であるという結論に至リました。
ごく当然のように繰り広げられる、科学に基づきエビデンスに裏づけされた確実性のある歯科医療を求める姿こそ、私が答えを探していた『ワールドスタンダードな歯科医療』とは『真の患者利益追求』に至りました。
同時に、未来の日本の歯科医療はオーラルフィジシャンとして口腔の健康を守り支える医療で地域に貢献し、無形の社会資本となるであろうと確信に至りました。
我々が、敬い学ぶべきは、社会全体で健康福祉の増進を尊いもの、『価値ある国民の利益』と捉え、その真のエンドポイントにむけて持続可能な成長を維持させる整備された比類なき高い社会基盤でしょう。
公的なヘルスセンターや福祉施設をみても、米国型と異なり、市場に委ねず医療の質を保つ組織的な仕組みが自然と形成されているのも、それを動かす理念が国民に浸透しているのがよく分かりました。
結果、スウェーデンの歯科医療は、市民に何を約束するかが明確になっており、市民の期待にこたえ続けることで形成される社会資産になっていると思われます。
私も地域を代表して、本当の歯科医療を求める市民の方々のために、勉強させていただいた知識と新しいモノの見方をもって診療にあたりたいと思いました。
本当に感無量です。 歯科医療人として至福の時間を過ごさせていただきました。
ダンエリクソン先生をはじめとする、カリオロジー科の講師の先生方はどんな時でも受講生よりも先に教室にいて準備され、その温かい配慮に『至誠』の心を感じました。
マルメ研修を通じて多くの歯科医療のエッセンスを吸収できた大変有意義な研修となりました。
日本を出発する際に熊谷先生からの旅の心得にもあるように患者さんの真の利益に結びつく歯科医療を展開するにはシステムだけでなく理念と哲学を学んでほしい。この言葉の意味を考えながらセミナーに参加しました。
マルメ大学の講師陣らの講義はユーモアに溢れ歯科医療のエッセンスが詰まった内容の濃いものでした。日本の大学教育の中には学ぶことができないリスクアセスメントを主体とした授業内容では普段使用している患者教育ツールのサリバテストやカリオグラムを用いて患者さんへの伝え方、ツールを用いた考え方や診断法を学び知識のさらなる整理となり、最新の知識も増え、違う見方ができるようになりました。また、カリオロジーの講義の中でIngegerd先生のカリエスの進行速度についての講義はとても興味深く、齲蝕の進行速度は思っているよりも遅いことをデータをもって示され治療の介入時期や総合的に判断する診断について学びました。臨床の中で常に疑問に感じていた内容であったためとても勉強になり今後のカリオロジーに対する考え方や診断に大きな変化が生まれました。
スウェーデンの歯科医療は国のシステムの転換によってDMFTの歯数を減少していると漠然としたことはわかっていました。講義や医院訪問にてスウェーデンはすべてリスクアセスメントを行う事で患者のリスクを診査診断し治療計画、メインテナンス処置、期間、治療費を決定しています。リスクアセスメント抜きでは医療は成り立たないことや一人一人のデータを蓄積し他の公立病院に転院してもデータを共有できる点に関して国の方針の違いを感じました。また、キャピテーションシステムの費用支払い制度がよりいっそうの口腔の健康を良い方向に転じていることがわかりました。一人一人を尊重し平等で対等な国民性であることが個人の健康を重んじる歯科医療となりリスクアセスメント主体の医療を展開していると感じました。
最終日の講義の中で「もしマルメを見たならば全世界を見たものと同じ」とありました。これはまさにその通りであり、現地を目で見て地を歩き会話し肌で感じ取ることで国際感覚や広い視野を持つ大切さを実感します。健全な歯を育成する、口腔の健康を守り育成する医療者の理念や哲学が国家の政策を予防主導へと転換することで国民全体に口腔への価値が広く浸透し受け入れられ国民の口腔の健康は維持できメインテナンス90%という数字にもはっきりと示されていると感じました。マルメ研修にて真の利益に結びつく歯科医療は哲学と理念が大前提にありシステム、リスクアセスメント、MIへと結びつくことが再認識できました。
このたびは本当にお世話になりました。
1週間のマルメ研修が終わりました。
あっという間の1週間でした。
私は人口4万人にほどの田舎の歯科医師です。
開業して25年になりました。
恥ずかしい話ですが今日まで長い間「削る・詰める」を繰り返してきました。
それが「患者利益」だと思っていたからです。
もちろんそれなりに口腔衛生教育も行ってきたつもりです。
しかし本当の「患者利益」とはカリエス・歯周病を発生させないことこそがそれでであることを再認識しました。
マルメやスェーデンの人たちの口腔内への関心の高さや、その健康を守ろうとする歯科関係者の方々の熱い思い、たゆまぬ努力がひしひしと伝わってきました。
日本の歯科関係者が一人でも多くこのスェーデンの歯科事情を理解しそれをこの日本で実践されることを望みます。
私も残りの歯科医師人生を地域住民の口腔の健康に役立てたいと思います。
いつかスェーデンの歯科関係者が来日されたとき日本人の口腔内も改善したものだといっていただけるように日々研鑽、努力したいと思っております。
待ちに待ったスウェーデン研修。
前回の研修に参加した方々からお話を聞く中で、私も是非一度自分の目で見てみたい!!と思い、行く前から大変楽しみにしていました。実際に参加してみて、話しできいていたのと自分の目で見たり聞いたりするのでは格段に違い、本当に参加することができて良かったと思います。歯科衛生士人生の中で一番と言っても良い位、多くの刺激を受けた一週間となりました。
まず、セミナー初日にD Ericson先生は今回のセミナーのゴールとして「口腔の健康を増進すること」と掲げました。そのためには、①知識の確認②知識を加える③新しい視点を持つことが大切だということ。講義中はカリオロジー、ペリオドントロジー、MI、薬剤との関連、Risk assessment等多くのことを学びましたが、全てがエビデンスに基づいており、私達は口腔というとても大切な部分を担っているという責任感をあらためて感じました。その中でも強く印象に残ったことを上げていきたいと思います。
〈芯〉
全ての講義を通して強く感じたこと。今回のマルメ大学の講師陣だけでなく、スウェーデン全体が「口腔の健康を守る」ということを目標に取り組んでいるということです。1970年代まで日本のようにカリエスが多かったのに、何故こんなに違いがあるのか。それは哲学がしっかりと浸透しているからだと感じました。何故予防が大切なのか、そのために何を行う必要があるのかということをぶれない芯を持ち、しっかりと提示することにより、政府、国民を動かすことができている。日本でも哲学のもと学んできましたが、その本質がここにあると思いました。
〈知識を加える〉
“Risk assessment”というのは「患者さんのリスクを把握して、リスクにあった治療を行うこと」であり、毎日行っているつもりでしたが、マルメでの“Risk assessment”は少し違いました。
・ リスクを判定・説明するシステムがある
・ リスクにあった治療を行う
・ リスクは支払う金額にも反映される
とてもわかりやすくはっきりとしたシステムでした。リスクにあった治療という点では、リスクの低い人はカリエスも歯周病も急速には進行しないため、歯石のついたところ以外は歯ブラシだけでも良いという考え方。大胆だけれど、エビデンスがあるからこそいえることであり、リスクの把握がとても重要だと感じました。
〈新たな視点〉
・将来と福祉
スウェーデンの福祉制度は非常に有名ですが、それに加えて今後は予防により多く残存してきた高齢者の歯牙をどのようにケアしていくかということが課題となってきているということです。日本では各病院、歯科医院が類似したシステムで訪問歯科を行っていますが、スウェーデンではオーラルケアABという派遣会社がほぼ全ての高齢者・障害者施設、時には在宅介護に介入し、訪問歯科診療を行っていました。そのため、同じ基準でリスク判定を行い、医療提供しているため、同じレベルで医療が提供されていると感じました。もちろん、日本とは制度自体が全然違うため、完全に導入するということは難しいと思いますが、日本も近い将来同じような軌跡をたどると思うと、統一したリスクアセスメントに基づいた最小限の指導で口腔内を維持していくという点は必要だと感じました。
・教育
働いている歯科衛生士がとても輝いて見えました。何がそうさせているのか。もちろん文化も制度も違うため、働く環境は少し異なるかもしれませんが、教育が大きく影響を及ぼしているのではないかと感じました。
まず、スウェーデンの歯科衛生士教育ではPBLを交えながら、知識と技術を交互に学んでいるということ。そのため自分から進んで学ぶという“自主性”が身に付き、実際に学んだ知識がどのように臨床に関わってくるかということを実感しながら学ぶため、身になりやすいということです。
2つめは1年生の時から、DR、DH、DTがチームを組み、患者さんを担当していくということです。早い段階から患者さんをチームで持つことにより、コミュニケーション能力の向上や、医療人としての心構え、他職種との連携について時間をかけてじっくりと学ぶことができる。そのため、スウェーデンの歯科衛生士は「歯科衛生士の役割」というものをしっかりと理解し、私達にしかできないことに誇りを持ち働いているようにみえました。
このように「口腔の健康を増進する」ための知識を多く得るとともに、世界にも目を向けて学ぶ必要性を実感した1週間でした。まずは自分たちの目標を達成するために、日本では何ができるかということを考え、周囲にも広めていきたいと思います。そして、この熱い気持ちを忘れぬよう今後も”プロフェッショナル”として働いていきたいと思います。
最後に、マルメ大学の関係者の皆さん、スタッフの皆さんのサポートにより研修を受講できたこと、同じ志を持つ方々と研修を受けることができたことに心から感謝致します。ありがとうございました。
オーラルフィジシャンセミナーを受講して以来、日吉歯科のシステムを模倣し今日まで診療室を改革してきました。しかしそこには多くの問題が現れました。保険診療のシステム、スタッフの教育、患者さんの歯科医療に対する意識の問題など。過去カリエスの多かったスウェーデンが今日のような予防を軸とした診療システムを作り上げるのに多くの問題を乗り越えてきたはずです。システムを運用する確固たる哲学を自分自身の目で確かめ、肌で感じ、今後自分自身は地域の患者さんの為にどのような行動をとるべきなのかを考え実行したいと考えました。
コペンハーゲンからマルメへと向かう車中、美しい景色に癒されながらこの地で暮らす人々は歯科治療をどのように理解しているのであろうかととても興味がありました。
マルメ大学での講義はどの先生方からも自分たちが実践してきた歯科医療に対する誇りと崇高な哲学が感じられました。その哲学が次代を担う学生達にも確実に受け継がれ進化していると実感しました。パブリックの歯科診療所の見学からこの国では今やリスクアセスメントを軸とした予防歯科医療がふつうに浸透しているのを見せつけられました。
日本とスウェーデンの違いは何なのでしょうか?どの医療現場でも当たり前にリスクアセスメントが行われそれを分析、研究者達は結果を国の政策に反映されるよう真摯に努力する。現場の歯科医療者たちはそれらの情報を患者さんにフィードバックし患者さん自らが自分の歯を守っていく事の意義と方法を気づかせる。
政府、研究者、現場の歯科医療従事者、患者さん皆が価値を共有し目標達成の為に共に努力していく。すばらしい。素直にそう思えました。
エリクソン先生が日本でこのようなシステムは実行していく事は可能ですかと問いかけて下さいました。今の日本では確かにそれは困難かもしれません。しかし我々オーラルフィジシャンがゆるぎない哲学で患者さんの為に真摯に努力していけば道は開けていくのではないでしょうか?
今回の研修に共に参加させて頂いた歯科衛生士2名も歯科医療の可能性と素晴らしさに気づき大きく羽ばたいてくれると確信しております。
今までは予防歯科の大切さ、歯を削らないことの重要性、人間一生自分の歯で咬めることが自然界の成り行きで、歯を若いうちから歯を無くすことの不自然さを熊谷先生から多くの講習会や研修会で学んできました。またスウェーデンではカリオロジーの学問が世界でも最先端を行き、その結果スウェーデン国内では高年齢になっても自分の歯を失わない人々が何万人といることなどもちろん熊谷先生やいろいろな雑誌などから情報を受けていました。日本でそれと同じような状況を作っているのが唯一山形県で、しかも酒田市は高齢になっても歯が残る人が多い。今まで私の感覚では、たとえ高齢者になっても歯が残る人が多いのは日吉歯科を中心とした市や町の周辺住民の方だけの存在で特殊のようなものでありました。しかし今回のマルメ研修で、ゆりかごから墓場までといわれるスウェーデンで直に現地の人と話をし、施設など訪問し、現実的に人々の状況、暮らしと接する(見学すると)と、医療のシステムが病気の予防を中心としたシステムで、小さいときから20歳までケアーにたいする教育を徹底的に行っていて、高齢者になっても病気にかかりにくい環境をつくること、そして病気になってもきちんとした患者にあった医療システムが受けられるという最適な循環システムがあることがわかりました。これらの医療システムは患者に真の健康という恩恵を与えられ、国民が安心し満足するシステムはないのでないか思われました。それもスウェーデン本国では行政や国がらみで人々の歯の健康を支え、真剣に人々の将来の健康を見据えたうえに成り立っているようであると認識しました。
まずマルメ研修の初日はエリクソン先生の予防歯科の概要を説明講義していただきました。先生の考え方、言わんとすることは熊谷先生と全く同じでした。強調されたのは全世界のほぼ90%の歯科医院は、人の歯を削って収入を得ようとするでき高払い制の経済中心の歯科医療であって、人間が本来受けるべく患者に幸福をもたらす歯科医療とは逆の方向に進んでいることが顕著に現れていると述べられていた。その中心となるものがアメリカの充填、修復型の歯科医療である、と・・・・
スウェーデンでは従来はそのような考え方であったが、歯科医療というものを患者中心に考え、突き詰めてみて、毎日が古い充填物や修復物をはずし取り替える作業的な医療に疑問を唱えた。カリオロジーなど多くの研究を行ってみると、必ずしも早い段階から歯を削らなくても早期にはカリエスは進まないことがわかってきた。やや深部(エナメル象牙境)にカリエスがあってもウ窩が存在しない限り、早期にカリエスは進行しないということがわかった。 エリクソン先生はグラフを例にとって世界のほとんどの国は初期ウ蝕から歯を削ることが主体であるので、そうなると人の長い人生の中で早急に歯を喪失してしまう恐れがあるということを私達歯科医は深く心に留めておかなくてはいけないということを力説されていました。
スウェーデンでは人々が健康で幸せな生活の追及という時点で口腔内の歯のことだけでなく身体全体のことが、幼稚園や養護施設などにもそれが現れていました。研修の合間マルメ市の幼稚園と養護施設を視察に行き、幼稚園での校長先生の説明では児童はその小さい時期から歯のケアーに重点を置いているとのことでありました。また健康管理にも気を使っていて児童の昼寝など眠らせるときにはなるだけ外に出すよう心がけているとのことでした。それは室内のほこりや他人の息など感染につながるものをなるだけ排除するとのことでした。また養護施設での患者の歯のケアーは歯科専門の委託業者(Oral Care AB)と契約していてそこが定期的にケアーをやってくれているとのことでした。日本でよく行われている普通の開業医が患者宅や養護施設に出向くということはほとんどなく、そうすること自体システムを難しくするとのことでした。また施設におられる方はほとんど高齢者の方で入れ歯を装着している方はどのくらいかという質問に高齢者の方はほとんど入れ歯がなく、自分の歯が残っているとのことでありました。これもスウェーデンの行ってきた医療システムの国策の恩恵だと垣間見ることができました。
研修最終日に視察を行ったねたきりの患者さんに口腔内のケアーを行う専門の委託業者Oral Care ABを尋ねました。
そこでは一度訪問した患者情報を入力しておき、それをいつ、どこでも確認、認識できるよう情報システムが整っていることが説明紹介された。また人員や、設備ハードの面で十二分に整備されていることも紹介されとても感動しました。
今回の研修でスウェーデンの医療システムと医療管理の素晴らしさを体験できたことはこれからの私の臨床においてとても向上をもたらすものとなりました。私自身、医療の哲学を根本から変えるものとなり、実際の場を観察できたことはそれを増幅するものとなりました。
そこで私の今後の目標は小児から若い世代までの予防の徹底指導です。予防は高齢者のメインテナンスも重要ですが、小児から若年期まで十分行わないと意味がありません。とにかく小児歯科専門医院を立ち上げたいと思います。そして小児から大人まで患者にあったリスクマネジメントを行い、治療やメインテナンスを行うことにあります。とにかく自分の身の回りから早く行動を起こしたいと思います。
この研修で学んだ成果は、日本で行われる普通の研修で充填、修復処置、外科処置、インプラント処置など明日からすぐに使えるものではなく、時間がかかるものと思われますが、しかしこれはほんとうの歯科医学であり真に患者利益につながり、引いては多くの地域住民の口腔内の健康回復、健康維持に貢献できるものと信じます。歯医者になってマルメを視察研修できたことは「歯医者とは如何にあるべきか」を教えられるもので神様がくれた最高のプレゼントと思います。ほんとうにどうもありがとうございました。心より感謝いたします。
本研修に参加できたことに深く感謝いたします。
学生の頃より予防に興味を持っておりましたが、歯科医師になり4年。日々の臨床をしているなかでう蝕と歯周病との戦いは続き、依然として歯科疾患の罹患者が減らないと感じておりました。そこで、特にう蝕の予防・抑制について更に見識を深めたいと大学院に進学したこの時期に、マルメ研修に参加できたことは私にとって、かなり衝撃的で、とても良い経験となりました。
スウェーデンの歯科医療の一端を見せていただき、教科書や文献では学べない現地の様子を垣間見たことは、今後、私がどういう歯科医師になりたいのか、どういう歯科医師であるべきなのかを教えられたように感じます。
講師の先生方からは、う蝕に対して様々な角度から講義があり、メインテナンスや歯科衛生士教育についてなど、どの講義もとても興味深く聴かせていただきました。1週間の限られた時間でしたが、日本の実情にあわせてフッ化物をどう使用していくかなどの細かい疑問にも先生方がていねいにお答えくださり、帰国後もメールでのやりとりを快諾してくださいました。
今回の研修で特に印象的だったことは、Risk Assessmentの方法が確立されていることでした。R2 modelは、様々な情報がわかりやすく管理され、患者に明示でき、そのRiskに応じて対応できることや、地域間で共有できること、ひいては行政への働きかけのデータとして提示できること、そして、歯科医師の裁量も加味できるなど、Dental teamの有力なツールになっていると感じました。
また、スウェーデンでは、歯科医師や歯科衛生士の約半数が公務員であることや、女性の教授や講師が多いこと、保健・福祉制度の充実、歯科衛生士の業務範囲や、5週間の有給休暇、ひいては10時と15時のCoffee breakまでと、日本とは社会の仕組みや文化の違いにふれるとてもいい機会となりました。
現在の日本のシステムに、スウェーデンのシステムをそのまま組み込むことは混乱と失敗を招くだけだと思いますが、いつか、スウェーデンのいいところをいただいて、日本の歯科医療がより良い方向にむかうようにできればいいなぁと感じています。
そのために、今は、日々精進を重ねていきたいと思います。
歯科医師人生のあらゆるライフステージの中でも、卒後4年目で希望するPostgraduate Courseの進学先も未定の今、人生のこのタイミングでマルメ研修を受講する事ができた自分を研修終了後とても幸運に感じた。熊谷先生はこの研修が歯科医療従事者としてのターニングポイントになるかもしれないとおっしゃっていたが、その言葉通り、研修が終わった今、自分の歯科医療哲学が明確になったこと、そして新たな歯科医療像が見えたことに喜びを感じている。
私はマルメ研修の前から、スウェーデンの歯科医療を漠然と知っているつもりであった。スウェーデンの国民の歯や口腔の健康に対する意識や歯科医療従事者の口腔の健康を守る事への知識と意欲は日本のそれらとは比べ物にならないほど高い。そして、その取り組みを現実にさせるのが高い税金に基づく社会保障制度であって、それは日本には無いものであると。あたかも実現不可能な別の世界のことのように考えていた。しかし、Dan Ericson先生がスウェーデンはオーラルヘルスパラダイスではない、ただ他の国より口腔の健康を守る事を少し多く達成しているだけなのだ、と冒頭に話された事が研修中、スウェーデンの歯科医療が日本でも実現可能であるかを考える良い契機となった。
結論から言うと、もちろん多くの障害があるものの、スウェーデンの歯科医療は日本でも実現可能であるとこの研修を通して感じた。それはスウェーデンの歯科医療がスウェーデン人の国民性や風土により特別成立しているわけではなく、客観的なエビデンスに立脚した医療であり、合理的なシステム、かつ合理的に患者をモチベートすることができるシステムにより構築されているからである。キャピテーションシステムがその最たる例である。現在入手可能な限りのエビデンスに基づくリスクアセスメントにより、患者をリスク毎に分類し、リスク説明を丁寧に患者に行い、リコール期間と定額医療費を設定することで、患者の健康観と経済的利点に訴えかけるこのシステムは極めて合理的でかつ患者のセルフケアへのモチベーションを大きくあげることができる素晴らしいシステムであると思った。
このキャピテーションシステムが日本で導入されるか否かは日本人の口腔の健康に関する常識を私たちが大きく変えることができるかどうかにかかっていると思う。メインテナンスという単語は日本で一般的になってきているものの、その必要性、そこから得られる利益が知識として身に付いている日本人はどのくらいいるのだろうか。また、その知識が常識として体にしみ込んでいる人がどのくらいいるのだろうか、と考えると日本の歯科医療が予防から予測の医療へと進化していくスウェーデンのレベルに追いつくには時間がかかるのかもしれない。しかし、今後、日吉歯科のように地域住民の口腔の健康に関する常識を変え、真の患者利益を求める為に着実に努力を続けている歯科医院が少しずつでも増え、日本の様々な地域からリスクアセスメントとメインテナンスの価値を示すデータが発表されれば、口腔の健康に関する知識が日本人全体に浸透し、日本の歯科医療の現状は大きく変わるのではないだろうか。
マルメ研修中、スウェーデンの歯科医療について耳で聴き、目で視て、肌で触れ、思考し、ディスカッションがそこに加わることにより、毎日が新たな知識と新たな観点の発見で溢れ、そして日吉歯科診療所で行われている歯科医療がWorld Standardである事を再確認できた。現地で学ぶことの有益性、素晴らしさを存分に感じた一週間であった。留学等を終えて、次のライフステージに進む前に原点に立ち返るつもりでまたこの研修に参加したいと強く思った。
マルメ研修が終わりました。私にとって初めての海外研修でたいへん楽しみにしていました。成田空港で見覚えのある先生方、衛生士の方々の顔を見て、期待と緊張と興奮で胸が膨らんでおりました。熊谷先生のメッセージを聞いて、身の引き締まる思いがし、この研修はできるだけいつもどおり平常心で望もうと心がけました。
スウェーデン、マルメは院長から聞いていたとおりすばらしいところでした。ただ見ると聞くとでは大違いで、空港からマルメまでの牧歌的風景、草原、ホテルからマルメ大学への石畳の道々、その周りの植栽、マルメ大学歯学部の教室、市庁舎の天井、壁面の絵画、講師の先生方の笑顔、それらが目を閉じると鮮明に浮かんできます。一次情報に接するとはこのことかと実感できました。今、学んだことが頭のなかをぐるぐると渦巻いています。どうぞ抜けていかないでという思いです。その中で心に残ったことを述べてみたいと思います。
歯科医療哲学、私はこの言葉の意味は熊谷先生から、チームミーティングで、また院長から聞いて、自分なりに理解していると思っていました。しかし今回の研修ではもっと奥深いところの歯科医療哲学に触れたような気がしています。初日のダンエリクソン先生の、ユーモアを交えた講義は私達の心を捉えました。全人的治療という言葉は印象に残っていますし、講師陣の笑顔、振る舞いを含め、それからの全講義の中に医療哲学が貫かれていたことを感じました。誰のための歯科医療か? なぜ私たちは歯科医療をしているのか?オーラルフィジシャンとは何かを再確認できました。
PBLを体験できその効果を実感できました。日々の診療にはもちろん取り入れられますし、チューターになる人材を育てながら医院の教育に取り入れていきます。なぜ、なぜを繰り返す。攻撃的でない批評ができる医院の風土つくりを目指します。
MI(モチーベーショナル インタビュー)は患者さんと接する時に有効な手法であると感じました。
高リスクの小児患者のメインテナンス間隔はどうしているのかと質問され、1か月毎に来院してもらうと答えると、それを何年続けるのか、その後はどうするのか、その根拠は?と問われました。はっきりと答えられない自分に、私の中でのリスク評価の基準がないこと、あいまいなことを思い知りました。スウェーデンではリスク評価、基準 ガイドラインがしっかりしていました。また研究結果が国の政策にすぐに反映されることにも感心しました。
衛生士がいきいきと仕事をしていました。「将来も私たちは決してドリルすることはない。」といいきった、今の仕事に誇りを持って取り組んでいる姿はまぶしくみえました。日本でももっと衛生士(歯科医師も)が社会的に認められるようにしていかなければ、そのために今の診療スタイルを地域でやり続けなければと思いました。なぜ私達は歯科医療をしているのか。オーラルヘルスを維持し、オーラルヘルスを回復させ、しかも最少の侵襲で。それをしながら生活の糧とする。そのためには歯科医師と衛生師がパートナーとして仕事をし、また衛生士の力、コミュニケーションスキルによって患者さんの行動変容を起こすことが求められます。
オーラルケアーABの見学も興味深いものでした。
残念だったのは英語です。会話ができればもっともっと実りある研修になっていたでしょうに。語学の必要性を強く感じました。
帰って日常にもどり、患者さんに向かう時、治療介入を考える時、頭の中で一つ一つのリスクを並べて考えている自分がいます。以前にも同じことをしていたつもりでしたが、知識を確認し、新たな知識を得、新しいものの見方を得た今、以前よりより深く考えています。
マルメ研修に参加して私も二人のDHも何かが変わりました。
削ってつめたときに得られる瞬時の幸福感ではなく、今私が接している子供達をモチベートしながら成人するのを見届け、その後高齢になって旅立つその日まで(その時に私はいないでしょうが)自分の歯で生活できたであろうと信じた時に、満ち足りた幸福感が味わえると思います。それは歯科医師として、地域に貢献できた、社会貢献できたと思える深い幸福感であるに違いありません。これから患者さんのために、マルメで学んだことを生かして日々頑張っていきたいと思っています。
感想を書くために資料、ノートを読み返している今、なんと恵まれた研修であったかと再認識しています。2000年に大学の同窓会セミナーで話を聞いて以来、次々に進むべき方向を示唆してくださる熊谷先生に深く感謝いたします。一緒に参加したモチベーションの高い、気持ちの前向きな仲間達。この研修にかかわったすべての人たちに感謝いたします。ありがとうございました。
今回この研修に参加するにあたって、私自身、削って詰める・被せるだけが歯科医師の仕事では無いのはわかっていたのですが、「予防」ということに対して具体的に何をすればいいのかよくわかっていないままここまできてしまっていました。日本の歯科の教育現場では、齲蝕の成り立ちや治し方については十分に時間を割いて教えてくれるのだが、どうすれば齲蝕を予防できるかについてはあまり熱心に教えてはくれない気がしていました。「歯科治療における予防の大切さ」についての知識が圧倒的に不足していました。
そんな中、この研修で数々の事を学びました。まずレントゲンによる診断では、読影による不確実生があるということを、常に頭のどこかに入れておく必要があるということを教わりました。そして次に齲蝕にあったからといって、すぐには削ろうとしない。明らかな齲窩があったり、症状があれば話しは別だが、まずは齲蝕に対するリスク評価を行うことが重要であることを知りました。
リスク評価にはカリオグラムが有用なこと、それによって分類を行い、リスクが低い患者の齲蝕に関してはすぐには削らず、フッ素塗布やレントゲンを定期的に撮って齲蝕の進行と相談しながら治療のGoサインを出すほうが、患者にとっては有益なことだったのです。なぜなら、成人ではエナメル質齲蝕が象牙質に進行するまでは平均して8年かかるからです。齲蝕の進行は適切な管理下では想像以上にゆっくりだということを知りました。また、削った場合では隣接歯を傷つけてしまう可能性もあれば、二次カリエスになった時にはより大きく削る必要があるのです。
「充填しても齲蝕傾向を取り除くことはできない」
「永久に持つ修復物は無い」
そして、「変えるべきなのは、修復物ではなく考え方である」と。
まさに目から鱗が落ちるとはこのことでした。そのことに気づいていない歯医者はこの日本にどれほど多いことでしょう。いや、気づくチャンスを与えられなかったのです。ならば今回このような機会に恵まれた私は歯科医師としてとても幸運であると同時に、このことを一人でも多くの歯科医師、歯科衛生士、そして患者さんに伝えていく必要があり、それが私の使命であると感じました。
今回、マルメ研修に参加できたことで、より強く、本当の利益とは何なのか、また歯科医療の重要性・必要性という医療の本質ともいえる部分である哲学を感じることができたのではないかと思います。
スウェーデンを訪れるのは初めてであり、また海外の歯学部を訪問したのも私は初めてでありました。日本と比べて、社会的、経済的、また教育的にも違いがあり、様々な観点からも勉強することができたと感じます。
熊谷先生の言葉で「生まれたての雛鳥」とあります。私は卒後2年目なのですが、今回のマルメ研修に参加できたことで、私の人生のターニングポイントともいえるほどの衝撃を受け、考え方が変わったと感じています。変わったこととは、患者さんの利益を真に考え、行動するという医療者としての自覚を持てたことです。
これは先進国に自ら足を運び、現地の先生のお話を直接聞くこと、会話すること、そして肌で感じるということが何よりもの経験となり、財産になったのだなと感じました。
現地では、20代の歯科医師が3〜4人来ていましたが、最終日には、これからの20〜30年後に確実に必要な哲学であり、今の気持ちを忘れずお互い頑張ろうと意識も高め合うことのできる仲間にも出会うことができました。何年かかるかは分かりませんが、始めは自分が挑戦すること、そして自分の地域に普及させることを目標に頑張りたいと思います。
こんなにも気持ちが高まり、考え方が変わった研修は初めてです。
今回マルメ研修に参加させていただき、誠にありがとうございました。
やっと念願のスウェーデン・マルメ大学での研修を受けることができ、多くの確信や刺激をうけることができました。
マルメ研修に参加させていただくにあたって、熊谷先生から『スウェーデンの歯科医療哲学を理解するように』というテーマをいただいていましたが、そのテーマと一緒に、自分の今までやってきたことの再確認もやっておきたいと思っていました。
講義の内容は、素晴らしいの一言に尽きます。6月13日~17日の5日間、講師の先生方すべてが知識・ユーモアを十二分にお持ちになっており、難解なところもわかりやすく教えていただき、時差による眠気が差す余裕もありませんでした。ダン・エリクソン先生をはじめ、講師陣の先生方には大変感謝しております。また、講義だけでなく多くの施設などを巡ることもでき、スウェーデン社会システムの成熟度の高さを感じさせられると同時に、それに憧れも感じてしまいました。
なぜ、スウェーデンの歯科医療に、ここまで心を揺さぶられるのか? それは、人間の一生を通しての患者利益を見つめているからに他ならないと思いました。そして、人々が最良の結果に向い、物凄い力とスピードで絶え間なく変化していっていることを、感じることができました。
この研修で、歯科医療の基本はやっぱりこれだと、直感的に確信することができました。研修で学び感じたことを、すべて消化するにはかなり時間がかかると思いますが、できるところから少しずつ時間をかけて消化し、日々の診療に繋げて行きたいと思っています。
また今回の研修会は、若いDrやDHの方が多数出席されているのも非常に好感がもてました。できればこのコースは、ずっと続けていただきたいです。もっと多くの次世代の人達にこの感性に、触れてもらいたいと感じました。
平成23年6月13日(月)から17日(金)まで、スウェーデン マルメ大学で開催された、オーラルフィジィシャン海外セミナー「Advancing Dental Health」に参加させていただきました。
出発前に熊谷先生からいただいたメッセージの中に先生がこのマルメ大学でのセミナーを企画された意図はスウェーデンの「歯科医療哲学」を理解できるセミナーにしてほしいということであり、参加者はこのセミナーを通してどんな「哲学」をもって歯科医療に臨めば良いのかその答えを考える機会にしてほしいとのコメントがありました。
セミナーは6月13日(月)から17日(金)まで綿密なカリキュラムが組まれており、セミナーを主催されたマルメ大学D.Ericson先生をはじめ、多くの講師の先生方のこのセミナーに対する熱意を感じました。また、15日(水)の夕方からはマルメ市のシティーホールにおいて、Kent Andersonマルメ市長の主催によるレセプションを開催していただきました。このシティーホールは熊谷先生がマルメ大学の名誉博士号を取得された授与式にも使用されたとのことで、あらためて熊谷先生のご努力と偉大さ、そしてこのオーラルフィジィシャンセミナーの重責について認識させていただきました。
セミナーの内容からは、Advance Dental Healthのために、最少の侵襲で口腔の健康を維持・回復し、長く維持させることを目的として、スウェーデンの歯科医療が行われているとことがよく理解できるものでした。
そしてそのためにはまずデータの収集からリスクアセスメントを行い1本のう蝕に対してもまた広くは市民の口腔健康の向上のためにもリスクに焦点をしぼった対応をすることが重要であるとこが示されていたのではないかと思います。
さらに私にとって最も大きな衝撃は歯学部における臨床研究と国の政策が直結していることでした。パブリックデンタルヘルスセンターを見学させていただいた際にも、また最終講義でも詳しく説明いただいたキャピテーション・モデルや歯科各分野におけるナショナルガイドライン、スコーネ県のパブリックデンタルヘルスサービスにおけるリスクアセスメントのためのクリニカルガイドラインなど歯学部やパブリックデンタルヘルスセンターで行われた臨床研究が国や県の政策に反映されている。逆に政策のために臨床研究が行われている。歯科研究者と行政の相互の良好な関係が築かれていると感じました。現在、パブリックデンタルヘルスセンターで行われているキャピテーション・モデルとは治療費の料金設定を「でき高払い」ではなく「Capitation頭割り」にするシステムで患者は3年契約で歯科診療を契約することになります。まず患者のリスクアセスメントを行いリスクの程度によって3グループに分類しそれぞれのリスクに応じて、メインテナンス間隔や料金を決定したうえで、メインテナンス中心の治療を受けることができるシステムであり高リスク患者に集中した対応ができることや、経済的な効果もあるとのことで、説明を受け大変理にかなった素晴らしいシステムであると感じました。
日本では導入できるか−とのEricson先生からの質問もありましたが、日本で導入するにはクリアしなければならない問題がかなり多くあると思いました。現在の保険制度の問題、大学における歯科医療者への教育の問題、大学や公的機関における臨床研究とそれをどのように政策に反映させるか、国民への予防医学教育等々、私の乏しい知識の中で考えても種々の問題があるように思えます。このセミナーを通じて、なぜスウェーデンにおいては大学の臨床研究が政策に反映することができるのか考えていましたが、明確な答えはみつかりませんでした。
私たちがオーラルフィジィシャン育成セミナーを受講してから取り組んできたメインテナンスを中心とする予防歯科医療を、今回のセミナーで学んだことを糧にさらに進化させていくとともに日本の歯科医療を少しでも変えられるような努力が必要なのではないかと強く感じたセミナーでした。
日本の歯科医師となり20年目に熊谷先生のご講演を聴講し感動して、2007年にオーラルフィジシャン育成セミナーに参加、自院の診療システムをMTMへと悪戦苦闘の末に変革し、昨年から形になってきた所でこの研修会に参加させていただき、自分の歯科医療哲学の総括することができました。
マルメ大学での講義、公立の歯科診療所、老人介護施設、託児施設、在宅訪問歯科診療専門の会社を訪問して率直に感じたことは、スウェーデン人の民度の高さでした。第2次世界大戦では中立国で戦災を受けておらず、戦後の経済も早期に改善し、社会福祉国家を世界に先駆けて構築できた歴史の重みを感じました。
カリオロジーという学問もその社会的背景の中で生まれ育ってきたものであるのではないでしょうか。
20年前にアメリカのUCLAで講義を受ける機会がありました。しかしながら、当時の最先端の医療技術を垣間見ることはできましたが、歯科医療哲学に触れることはありませんでした。卓越性は世界最高ですが歴史の重みがなかったように思います。
それと比較すると、スウェーデン人の方々からは日本人と共通する部分を感じ取ることができました。それは両国ともに王国で長い歴史があるからでしょう。
この共通の感性から、「真の患者利益」を追求する歯科医療を日本においても実行して行ける確信が持てました。
今後も、旅立つ前に熊谷先生から頂戴したメッセージを実現できるように努力していく所存でおります。
このマルメ研修は、最先端のカリオロジーを学ぶ場であり、2010年のPHIJのペリオ・インプラント研修のように、研修期間はカリオロジー漬けになるのではと思っていました。しかし、出発前の熊谷先生からのお言葉にあったように、カリオロジーだけでなく、すべての根底にある「歯科医療哲学」を体得する研修であることがすぐにわかりました。このような医療哲学を学ぶことのできる研修は、非常に少ないですし、それが世界最先端のスウェーデンで受講できるということは、大変恵まれた環境であると感じました。
初日のイントロダクションでエリクソン先生から提示されたコースのゴールは、予防を超えたデンタルヘルスの増進。そして、知っていることを確認し、新たな知識を加え、新しいものの見方を加えるということでした。
6日間の研修で、3日目、6日目は大学外の施設見学、残りの4日間はマルメ大学内での講義でした。講義内容は、カリオロジーを中心として、メインテナンス、ペリオ、歯科衛生士業務・教育、医療経済学と多岐にわたっていました。
カリオロジーに関しては、カリエス診断の不確実性、診断が不確実でもカリエスの進行は緩慢で病変の進行を止めるチャンスは多くあること、そして、リコール率90%のスウェーデンのメインテナンスシステムがそれを支えていることを学びました。カリオロジーを通して1本の健全歯を守る価値を再認識しました。
日々、オーラルフィジシャン診療所で仕事をしているため、歯科医療に対する考え方が180度転換するということはありませんでしたが、今回の研修は、今までの考え方をさらに強くさらに高いレベルへ推し進めてくれるようなものでした。
講義、施設見学で共通して感じることができたのは、すべての目的は患者をより健康にすることであり、スウェーデンの歯科医療のエッセンスは、オーラルヘルスを維持し、回復させることにあるということでした。そのために、どこでもリスクアセスメントが当たり前のように徹底されていて、予防の考え方が浸透してしました。国家全体が、同じ考えで、同じ目的のために、同じ方向へ向かっているという印象を受けました。また、患者主体のメインテナンスは、熱心なデンタルチームと、熱心な患者でなければ、成功しないことを再認識しました。
大学の講義の中で、「もし、マルメを見たならば、あなたは世界全部をみたのと同じことである」という諺が紹介されましたが、まさにその通りであったと振り返ります。現場の空気を吸って、体で感じることが非常に重要だということを今回も体感しました。
これから地域の歯科医療を通じて、健康の増進に寄与していこうという自分にとって、特に学ぶことが多く、考えるところの多い研修でした。
すばらしい環境で、すばらしい講師陣と仲間に囲まれ、1週間の楽しく有意義な研修を体験することができて本当に幸せでした。
スェ―デンは街や空気もきれいで、気候的に最も良い時期ということもあり、研修内容も相まって、また訪れたいという想いを強く抱きながら帰途につきました。
我々をお世話してくださり本研修会を実施していただいたエリクソン先生はじめマルメ大学の方々、本研修会をプロデュ―スしていただいた熊谷先生、加藤先生はじめ日吉歯科診療所の方々、そしてその回りをサポートしていただいた方々に、心より感謝申し上げます。
おそらくブラッタール先生の時代から培われてきたであろうマルメ大学の風土、エリクソン先生のお人柄、スウェーデンの空気、日本とはまた違う‘自由’と‘平等’、‘時間の流れ’、‘余裕’、‘合理性’、‘思考性’などを、直接肌で感じることができました。
日吉歯科がこれまでの診療スタイルを構築するに至ったおそらく原点が、ひょっとしたらここだったのかもしれないということを感じました。
各論的にはアメリカと対称的な部分もあり、日本での今の臨床をどう構築していくか、またこれから整理していく必要もありますが、少なくとも予防・メインテナンスをベースとしたMTMや、データを重視したリスクアセスメントという基本的な所では、スウェーデンの考え方を診療の中心にすべきであることは、全く疑いの余地がないことを確信しました。
今までの知識を再確認し、そしてさらに厚みを付け加える知見を吸収し、そして新たな発想やものの見方・考え方を学ぶことができたすばらしい1週間、本当にありがとうございました。
今回の研修を漢字一文字で表すと「先」。
まだ、歯科に対するエビデンスがあまりない時代から口腔内を健康にしようと国をあげて取り組んだ結果、予防歯科の先進国となりいくつものエビデンスを確立していったスウェーデン。今回研修に参加させて頂き、その背景にある、歯科医療従事者、研究者たちの並々ならぬ熱意と努力が伺えました。
予防歯科に熱心に取り組んだ先人たちのお陰で、現在のスウェーデンが存在し、我々も予知性を持ってリスクコントロールを行うことができます。
マルメ大学のダン・エリクソン先生をはじめ、講師の方々はみなヘルスケアという言葉を頻繁に使用しており健康に対する意識の高さが伝わりました。
スウェーデンにも介護の問題など未解決な部分もありますが、遺伝とう蝕との関係も少しずつ明らかになってきており、今後違う角度からリスクをコントロールする日が来るかも知れないという未来性を感じました。
今後、私たちができる事はオーラルケアに対する正しい知識を身に付け歯科医療従事者、地域住民に伝え続ける事だと思います。
今回の研修は、まだ歯科医師5年という未熟な私にとって歯科医療の揺るぎない基盤を与えるものであり、日本の歯科医療についても非常に考えさせられました。貴重な経験ができたと思っております。
初めての海外研修がマルメ研修で本当に良かった!
この研修に参加させてくださった皆様に感謝の言葉しか見つかりません。
緊張でいっぱいの中、成田空港に集合して、はじめに熊谷先生からの手紙を配布されました。その中には、居眠りや受講態度についての注意の他、この研修はスウェーデンの歯科医療の哲学を学ぶ場であること、歯科医療従事者として、人生のターニングポイントになるかもしれない、と書いてありました。帰国して2週間たち、まさにその通りだったと実感しています。
マルメ大学の先生方の講義は、日本の大学の講義とは全く違いました。興味をひかれ、理解したいと自然に思える授業は衝撃的でした。自ら学びとる姿勢を育てるPBLの手法は、スタッフ教育はもちろん、患者教育にも活用したいです。
マルメの講義や各施設の見学、市長の表敬訪問において、根底に流れている「国民の健康を維持するための歯科医療」という考え方、哲学に触れられたことは、今後、自分が患者さんに対して、口腔の健康に興味を持たせ、理解したいと思わせるように教育していくための大きな核となりました。
また、参加者の歯科医師・歯科衛生士の皆さんとお話する中で、高い志に刺激を受けたり、同じような悩みを持っていたり、診療のヒントをいただいたりと、たくさんの学びがありました。
今でも日々の臨床の中で、患者さんからの「一度で終わらせてほしい」「削ってほしい、抜いてほしい」という表面的な要望に流されそうになることもありますが、マルメで得た歯科医療と全身の健康に関する知識と哲学に基づいて、患者さんの本当の要望「健康でいたい」ということを引き出し、一人一人を健康へ導いていけるように向き合っていきたいです。
また、この経験を医院で共有し、日本でオーラルフィジシャン診療所として地域に貢献できる幸せをスタッフが誇りに思い、実感できるようにしなければならないと痛感しました。
今回の研修では、自分の勉強不足もよくわかりました。
日本とスウェーデンでは、高齢化社会であることは同じでも、保険制度が違い、健康観も違い、ライフスタイル(特に女性の)も違うので、歯科のリスクコントロールが同じレベルでできるまでは同じ診断基準というわけにはいきませんが、正しい知識とデータに基づいた診断を的確にできるよう、研鑽を積んでいきたいとおもいます。
最後に貴重な機会を与えてくださった皆様にあらためて感謝します。
本当にありがとうございました。
待ちに待った念願のマルメ大研修。院長と二人で参加させていただきました。
いろんな講義や研修を通じて学んだことをまとめてみます。
一つにはスウェーデンで行われている歯科医療は、人間に対する尊厳の精神がベースにあることをさまざまな講義や施設の見学などで感じました。
人が一生を通じて尊厳を持って暮らすために、口から物を食べ、会話することがどれだけ大切なことであるか。
そして、全身の健康を考えるうえで、口腔の健康を守ることがどれほど重要な医療であるのか。
講義をしてくださったみなさんがそのことに誇りと自覚を持ち取り組んでおられることに感動しました。
スウェーデンでは歯科医療の公益性が広く理解され医療従事者もそのことに大変誇りを持っているのを感じました。
二つ目には健康な歯を沢山残すことの価値感を行政とも共有し、研究成果を市民への教育や医療制度に生かすしくみがあることに感動しました。
全ての患者にリスクアセスメントをし、口腔の健康を取り戻し、将来の予測のもとに必要最低限、最小侵襲の医療を施すことは、私たちオーラルフィジシャンの医院でもベースに考えていることですが、
国全体の共通言語になっていることに驚くとともに感動しました。
三つ目には自分達が支払った税金をどのように使うかを真剣に考えていることを感じました。
効果的な予防システムの構築に真剣であり、むだな医療費を省き、必要な人に必要な医療が施されるように、また充実した福祉が受けられるように研究や話し合いをかさねて来られたのだと思います。
とても成熟した民主主義の国だと思いました。
日本の政治の現状や、医療費の問題、歯科の保険点数のしくみや国民の歯科医療に対する理解の低さなどの現状を目の当たりにすると絶望感にとらわれそうになります。
でも、マルメ大で研修を受けられた先生方が全国各地で予防をベースにした医療を展開することで、少しでも国民の口腔の健康に対する価値観を育てていくしかないと思いました。
マルメで学んだことをどのように自分達の医院にいかしたらよいのでしょうか。
自院のリスクアセスメントの基準をみなおし、患者さん一人ひとりを尊敬し、口腔の健康の大切さを教育しながら、健康な歯を沢山残せるように毎日取り組むこと、そして、今から育っていく子ども達には、制度の違いこそあれ、むし歯のない健康な口腔を育てる医療活動を続けて行くことが今私にできることかと思いました。
今回の研修は熱心な講師陣のもと、とても充実した講義内容でした。
マルメ大歯学部をあげて協力してくださっていることを随所に感じました。
また岩上さんや西先生のおかげで言葉の壁に劣等感を抱くことなく、講義内容も理解できました。
休み時間にもかかわらず質問にも快く付き合っていただき大変ありがたかったです。
本当に恵まれた研修だったと思います。
熊谷先生、そして大竹さん、このような研修を受けられたことを心より感謝いたします。
また、研修をサポートしてくださったトップツアーの添乗員さんや株)シロナさまお世話になりました。
最後に加藤先生はじめ日吉歯科の皆さん、研修でご一緒だった皆様方、本当にありがとうございました。
スウェーデンの「歯科医療哲学」を学んでくるように、これは成田空港で出発前に熊谷先生から頂いた書類に明記してあった言葉です。今回のマルメ研修は、時差による疲労感を上回る緊張感で受講し、その歯科医療哲学に触れ、学ぶことができたとても貴重な経験だったと思います。
5日間の講義は、エリクソン先生の講義に象徴されるように(各講師の先生方に共通して)わかりやすく、時にはユーモアのセンス抜群のスライドがあり、飽きさせない内容で素晴らしかったと思います。カリオロジー、ペリオドントロジー、リスクアセスメント、MI、PBL、メインテナンス等、英語に不安を抱えていた私ですが、通訳してくださった西先生、岩上さんのおかげで、しっかり学ぶことができました。また、時差から来る疲労を考慮して休憩も多くとっていただきました。
日本と福祉大国のスウェーデンとは、歴史的背景、文化的背景、政治的背景の違い、それによる、教育制度、医療制度等の違いはありますが、しかし、誰のための、何のための歯科医療なのかという「哲学」の部分は、国が違っても変わることが無いと思います。いま、自分たちが進めている予防をベースとした、生涯にわたり患者さんの口腔の健康を守り育てていく歯科医療は歯科医療従事者にとって当たり前の事です。スウェーデンでは、当たり前のことが当たり前に行われている、その姿が印象的でした。そして、自分たちが目指している歯科医療の方向性が正しかったことを確認することができました。
公的医療機関で行われている成人の保険制度:キャピテーションシステムはリスクアセスメントに基づいた合理的な制度で、患者さんの健康観が否が応でも高まるとても興味深い制度でした。また、何より驚かされたのは、歯科医師が医師より尊敬される立場にあることで、うらやましく思いました。我々も、口腔から始まる全身の健康に貢献し、公衆に認識してもらえるよう努力していかねばならないことをあらためて感じとりました。
このマルメ研修の経験が私の歯科医師としての生き様を完結できうるものになるよう今後とも頑張って行きます。
メインテナンスとリスクアセスメントの重要性。これが今回マルメ研修で学んだことの中で一番心に残ったことです。リスクアセスメントに基づくメインテナンスの結果、多くのスウェーデン国民の口腔内は数十年前に比べると格段に良好な状態になっています。リスクアセスメントで患者さんはリスクに応じてハイリスク、ミドルリスク、ローリスクの3群に分類され、それぞれの患者さんに応じたケアが決められ、実行されます。ローリスク群は患者さん自身で口腔ケアができるということでリコール間隔も長く設定されるのですが、反対にハイリスク群はリコール間隔も短く、口腔衛生に関わる教育に割かれる時間も長くなります。必要なところに必要なだけ労力や時間が配分される仕組みです。このリスクアセスメントに基づいた「キャピテーションモデル」というシステムがとてもよくできているなと感心しました。これは日本にないシステムで持続的かつ全体として効率よくメインテナンスを行うにはとても良いシステムではないかと思いました。またデータをきちんと管理することで患者さん自身に利益をもたらすうえ、そのデータがそのまま疫学的なデータにも応用・研究され、常にフィードバックがなされることでシステムの改良が日々加えられていることにも合理性を感じました。こうしたことの積み重ねが高いメインテナンス率、低いDMF歯数につながっていることが実感できました。
またこの研修に参加する以前から、う蝕を見つけたときの治療開始時期の決定に関して予防先進国のスウェーデンではどのような基準で行っているのかということも個人的に大変興味がありました。う蝕の進行は思ったよりも遅いこと、レントゲンによるう蝕の判定に関して判定者によってかなりのばらつきがあること、リスクも加味して考えなければならないことなどを学び、本当のところはう蝕の治療開始時期に関する真の答えはないということを学びました。ただ、だからといって適当に診断をしていいというわけではなく、常に勉強をし、エビデンスをもとに自分なりに考え診断していく姿勢を持続することは大切だと思いました。
今回研修の講義や見学の内容はすべて素晴らしく、一週間という時間も非常に密度が濃い、あっという間の価値ある一週間でした。研修に参加させていただいたことで今までスウェーデンに対して持っていた想像とは異なる部分を発見できたり、見聞が広がったり、まさに百聞は一見に如かずという気持ちでした。患者さんにとっていい歯科医療を行っていきたいという医療人としての覚悟を再認識できるいい機会となりました。また参加されていた多くの先生方や皆さんとの出会いも私にとっては大変意義深いものとなりました。患者さんにとって真に利益のある歯科医療をめざしている方々とお話やディスカッションができ、とても勉強になり刺激を受けました。今回学んだことを是非今後に生かしていきたい、生かなければならないと感じました。
4年前の2007年、スウェーデン マルメ大学研修に残念ながら参加できなかったので、今回、ようやくあこがれの予防の聖地で学ぶことができました。
1999年に熊谷先生の講演を聴き、衝撃を受け、その後ひたすら予防中心の歯科医療を追及してきましたが、12年後の今、やっとスタートラインにつく事ができた気がします。
少々長い準備期間でしたが、メディカルトリートメントモデルを理解し、実際に行い、失敗し、再び学びなおすために 一次情報に接することで ようやく自分のものとして身につくまで必要な時間でした。
「一次情報を大切にしなさい」と熊谷先生から教わったのは、2004年のオーラルフィジション育成コースでの事でした。
それまでは 勉強とは、とりあえずに身近にあるテキストで十分と思っていた私には新鮮な驚きでしたが、当時はまさか自分に海外で素晴らしい先生方の講義を聴く機会ができるとは思ってもみませんでした。
しかし、2006年にボストン大学研修、2008年ヒューストン研修に参加し、熊谷先生がいつもおっしゃっているワールドスタンダードの歯科医療を実際に見る事ができ、少しずつ自分の臨床に自信を持つことができました。
そして今回 長年の夢であったマルメ大学研修に参加することによって 私の臨床システムの中心となるメディカルトリートメントモデルの真の意味を理解することができました。
今回の研修目的は予防をベースとした歯科医療をあらゆる角度から再確認することでした。
国民と医療者が作り上げたシステムは背景に相互の信頼関係があり、医療者の真摯な姿勢には本当に心が動かされました。
そしてPBLの手法、リスクアセスメントを用いたシステマチックな予防プログラムなど新たな知識も得ることができました。
初めてスウェーデンに来たにもかかわらず、研修以外 全く観光もせず8日間過ごしました。
しかし、素晴らしい講師の先生方のおかげで本当に充実したかけがえのない時間となりました。
ダン・エリクソン先生、そしてマルメ大学のスタッフの皆さん、大竹さん、岩上さん、西先生、栗城さん、8日間いっしょに研修会に参加した方々、全てに感謝いたします。
スタートラインに立ちました。
明日からまた1歩ずつ前進します。
今回の研修での私の目標は、自分の目指すべき歯科医療の本質について再確認する事。自分自身の考えと自分の歯科医院が目指すべき道筋から逸脱していないかを客観的に評価すること。研修終了後にアップデートされた知識や理念をもとに、具体的な行動を起こすというものでした。
研修ではたくさんの先生方との出会いや再会があり、とても充実した毎日が過ごせました。天候にもほぼ恵まれ、早朝は散歩をしたり、夕食を食べながら歯科界の事や今後の展望について語りあったりと、日頃の忙しさから開放され楽しいばかりの研修でした。
客観的に自分自身や医院について考える事もでき、良い意味で一度リセットができた気がします。エリクソン先生をはじめとした講師陣の講義は、私の心に染み渡り、自分自身の歯科医療に対する考え方や信念は、決して間違ってはいない事を再確認できました。全ての講義が論文に基づいて構成されており、当たり前の事かもしれませんが、私には見えていなかった世界がそこには存在し、モーゼの十戒のように進むべき道筋が見えた研修でした。今後は、論文をベースとした学習をしていかなければならないと強く思いました。講義以外の時間でも、一緒に参加した先生方と意見交換ができ、充実した7日間でした。
課外授業としてパブリックな歯科診療所や幼稚園、高齢者施設なども見学する事ができました。虫歯や歯周病のリスクアセスメントをして、リスクを判定し定額料金で患者さんを管理して行くというキャビテーションシステムには衝撃を受けました。日本でも応用できたらすばらしいシステムだと思いました。訪問診療の会社であるオーラルケアABにも見学に行きました。訪問診療に対してもいろいろと考えるきっかけとなりました。
スウェーデンは、間違いなく予防が浸透しており、国民にも口腔内のセルフケアが浸透しています。臨床と研究はしっかりリンクしており、行った事に対しては追跡と分析をして更なるモディファイドを繰り返すという構造が確立されているように感じました。今後はEBDに基づいて論文ベースの勉強を継続し、地域の方々の口腔内の健康をより向上できるように明確なビジョンをもって計画的にがんばって行こうと思います。
Keep it simple stupid !!
マルメ研修は、私にとって期待以上のものであり、残りの歯科医師人生をどう過ごしていくべきかを教えてくれました。
2005年にオーラルフィジシャン育成セミナーを受講してから、できる範囲で日吉歯科診療所のシステムを参考にし、模倣してきました。今でもゴールに向かい、亀の歩みのささやかな診療所ではあります。しかし今があるのは、治療中心から予防中心に考えをあらためる機会をくださった熊谷先生との出会いであったと確信しております。
スウェーデンは、時間が静かに流れていくところでした。ホテルの大きな窓から眺める景色は、まるで生きている絵画を見ているようで、久々に心が休まりました。しかし、講義はきちっとしたデーターを説明しながら、ユーモアも交え、時差ボケを感じる暇もありませんでした。その中に患者さんに真の利益を提供するためのエッセンスが沢山ありました。
自分が行ってきた感染歯質の除去、充填、欠損補綴… 医療の行為として大切なことではあるが、修復することが治癒ではなかった。新たな問題として材料の破折や二次カリエスの問題が起こる。永久にもつ修復物は存在しない。齲蝕病変の進行は思っているよりずっと遅い。早期の修復介入は、何もしない事より有害である。
隣接面齲蝕の診断にレントゲンが用いられるが、その読影には個人差があり、齲蝕病変の過少評価や過大評価があるということを自覚しなければいけない。また窩洞形成時に隣接面にダメージを与えることも多く(64〜69%)、損傷を受けた歯面はよりカリエスになりやすい。
齲蝕と診断することが大切なのではなく、疑わしきは観察し、進行を抑制する姿勢をとるべきである。しかしこれには、リスクアセスメントをきちんと行うことが必須である。
リスクアセスメントがきちんと実行できれば、必要な人に適切な情報を与えることができる。
CHXはMS菌や歯周病菌を減少させるのに最も効果的である。しかし、日本ではこの濃度のものは使用許可されていない。これはドイツの研修でも同様の講義がありました。
3か月研修に参加していた日本のDHの方のお話も興味深いものでした。ひとつのケーキを分ける時の日本人とスウェーデン人の違いも、まさに教育の違いを感じました。
問題解決型学習(PBL)は、自ら情報を収集して自分で解決する素晴らしいシステムです。多くの時間や手間をかけ、自ら考えることで自分の本当の知識になり、優秀な人材が育つのだと思いました。
最後は、残存歯がある高齢者が増えていくことでの問題。私も、来院できなくなった患者さんの訪問をしていますが、口腔ケアは困難です。介護保険上の制限もありますが、何もできない自分が腹立たしく思います。しかし、もっと積極的にリスク検査を行えば、関わっていけることがあるように思いました。フッ素ももっと活用すべきでした。
記憶に強く残ったことを書きましたが、ある自覚のない患者さんを例にして、実践的な講義もありました。
Whose teeth is it- 医療では患者さん自身が主役であり、私たち専門職の適切な援助を加えることが大切なことである。すべてはシンプルに。何をしたらよいのか患者さんが質問するように、もっていかなければいけない。すべての事をいっぺんにしたがり、要求が多すぎては実践不可能。患者さんの口腔健康を維持することにお金を支払ってもらうべきである。そのためには個々の患者さんのリスク評価をし、それに対して適切な情報を与えることです。
自分のモチベーションが高いまま、日々の診療に戻りました。当医院の自覚のない患者さんが2年ぶりに来院されました。このレポートを書いていることもあり、自分なりに一生懸命説明しました。「前に来た時も説明してもらったけど、なぜ痛くもない歯を調べられたり、掃除されたりするのかよくわからなかった。虫歯になったら、削ってつめればいいと思っていたけど、自分の歯を守れるなら今度はきちんと来院します。先生、ありがとう。」患者さん、次回は唾液検査の予約をして帰られました。何だかうれしくなりました。患者さんに気づかせることもなく、受け入れられることもなく、齲窩を修復して来院が途絶えたのは、自分のせいだとよくわかりました。
慢性疾患の内科受診と同様に、定期的な受診で自分の歯を守ることに代価を支払う価値があることを理解してもらえてこそ、医療である。これは、熊谷先生がいつもおっしゃっていることでした。
「時に治し、しばしば和らげ、常に癒し、望むべくは予防する」16世紀フランスの外科医のアンブローズ・パレの言葉です。そんな事をふと思い出しました。
「最も質の高い治療は予防歯科です。歯を削ったりつめたりするような歯科医療ではなく、良い口腔衛生状態を維持する予防に力を注ぐべきです。私たちはすでに齲蝕や歯周病がなぜ起こるのか、どうしたらそれらの口腔疾患を予防できるか、さらにどのようにしてそれらの疾患を予測するかもわかっています。」何度聞いても心に響きます。日本の現在の歯科医療体制では、難しいこともありますが、行動を起こさなければ意味がありません。マルメ研修で、アクセルソン博士がおっしゃった言葉の意味を再確認できたと思います。技術的なことを教えていただく研修も大切だと思いますが、何かもっと大切なことを教えていただいたと思います。本当に参加できたことを感謝いたします。許されるなら、その時の自分を再評価するためにもう一度DHと行きたいです。
マルメ研修から帰って1週間となるが、いまだ興奮した気持ちがおさまっていない。予想以上に収穫の得られた研修であった。しかしながら、出発前は、自分が現在栄養学科に属しているという立場で、研修がどのような意義をもつのか。自問自答しながらの参加であった。
研修を通して、強く印象に残ったプログラムは、1.高齢者施設見学、2.オーラルAB社セミナー、3.キャピテーションシステムであった。
まず、高齢者施設見学である。講義においても、高齢者に対する諸問題が多く取り上げられた。これは日本が抱える問題でもある。高齢者の割合が増加している今日では避けてはとおれない問題であろう。高齢者が経口摂取できなくなった場合、それ以外の方法(非経口摂取)は行わず、安らかな看取りを行うとのことであった。この事実は、スウェーデンにおける「義歯装着者の少なさ」と講義でも紹介されたが、近年における「高齢者の残存歯の増加」と関連しているのではないかと考えた。栄養摂取方法の変化は国としての方針でもあり、非経口摂取の効果は明らかでないことがその理由であるとの説明であった。しかしながら、口腔状況の改善が、多くの高齢者が経口摂取可能であることへの寄与は大きいと考えた。これにも関連して、オーラルAB社が実施している高齢者の口腔ケアを中心とした事業にも驚いた。その特徴は、企業が県内ほとんどの高齢者のケアを担っていること、その確立されたシステムおよび口腔ケアに特化した内容などである。徹底的にむだを省き、より多くの人のケアが行われていた。
最後は歯科診療費におけるキャピテーションシステムであり、これは出来高払いに対する、一種の包括払い方式である。この特徴の素晴らしさはリスク診断システム「R2」の活用と患者が選択をできる点である。生活習慣病の10%は不適切な保健医療システムであるという報告があるが、患者のインセンティブを利用した経済的手法の導入は、非常に画期的なものであった。
さらに、講義全体をとおして、「答えはない」「曖昧なものである」との講師の言葉が心に残った。こう書くと誤解をまねくかもしれないが、例えば、隣接面齲蝕の進行に対しX線を用いて診断を行う実習を実際に行った結論は、「答えはない」であった。我々が学ぶべきことはそれほど診断は難しく、診断は人によって異なるということであったのだが、その言葉からは医学に対する謙虚さや畏れを強く感じた。歯科が国民から最も尊敬される仕事のひとつである理由の1つではないかと思う。しかしながら、スウェーデンにはその一方で多くのエビデンスより構築された「歯科治療のガイドライン」が存在することも忘れてはならない。
スウェーデンで行われている歯科医療システムは、国の規模や歴史の違いから日本への導入は難しいという意見を多く聞く。しかし、周知のごとく30年以上前までは、スウェーデンは日本と同様齲蝕の洪水の時代であった。今回、非経口摂取に対する対応の変遷についても知ることができたが、それについてもここ30年ほどの変化であることには驚かされた。全ては患者のためという目的が明確にされているからこその変革と考えた。ということは、日本でも無理ではないはずだ。
様々な研究結果が医療政策、学生教育そして患者の利益へと反映されていることに、自国と比較して圧倒される気持ちも多かったが、大学に属する者としての責務を果たしていきたいという気持ちを強くした1週間であった。最後に、熊谷先生、マルメ大学の講師陣の先生、スタッフの皆様、そして快く送り出してくれた同僚と家族に感謝したい。ありがとうございました。
平成23年度の海外研修であるマルメ研修に参加させていただきました。
6月12日の朝9時に成田空港に集合し研修がスタートいたしました。
各自チェックイン後、待合室に案内されそこで日吉歯科診療所の加藤大明先生から、熊谷先生からのメッセージが手渡されさらに朗読されました。其の文中「単なる自己研鑚ではなく、これからの自身の歯科診療をどう構築すれば患者さんの真の利益に結び付く歯科診療を展開することができるかということを、しっかり学び、そして考える機会にしていただきたい」と読み上げられた時、身の引き締まる思いがいたしました。
11時間余りのフライトの後、実際に訪問したスウェーデンのマルメ市は緑があふれ重厚な建物が立ち並ぶ美しい都市でした。
講義と見学でスウェーデンの歯科事情がよくわかるように考えられていました。
理論的背景から政治的な情勢まで現在のスウェーデンにおける歯科のシステムを理解しさらには実際の診療所の見学から保育所、老人ホームまで身をもって体験をさせていただくことができました。
知れば知るほどスウェーデンの歯科の現状と日本の歯科の現状では差がありすぎます。
しかし数十年前まではスウェーデンも日本よりDMFTが高い時代があったのです。残念ながらスウェーデンの制度と高濃度のフッ素は手元にありませんが、我々にはすでに効果のある手法がわかっています。
最新の知識を生かし、スタッフや患者さんにも口腔の健康のための知識を与えていけば、必ず多くの健康な住民を育てることができると確信します。すべての患者さんにMTMを行いメインテナンスを行うことで真の利益に結び付く歯科診療をまずは目の前の患者さん1人1人に提供することができるようにこれからも日々精進していきたいと思います。
出発前の成田空港の一室にて、熊谷先生のお言葉を加藤先生の代読にて頂戴致しました。
その冒頭に、この研修が『歯科医療従事者としての自分を考えるターニングポイントになる研修になるかもしれない』とのフレーズがありました。熊谷先生は婉曲的な表現をしてくださいましたが、私はそれを断定的に受け止めました。
この研修では何が待ち構えているのだろうという期待と、もし帰国後私が何も変わることができなければ、熊谷先生が研修にかける期待に背いてしまうのではないかという不安から、現地での5日間はその答えを必死に探して参りました。
結果、往路で抱いていた身に引き締まる思い、緊張感は、帰路ではその何倍も大きな物となって戻ってくることとなりました。
それは、まさしく今回の研修が私のターニングポイントになったからに他なりません。以下では、その理由についてお伝え致します。
これまで熊谷先生のお話を伺う中に、幾度となく『歯科界を変える』という言葉をお聞き致しました。しかしながら、その本質を理解できていなかった私には、その言葉が私には本当に響いていなかったと気が付くこととなりました。
医療現場の英知が集約されたスウェーデンの歯科医療システムに比べると日本のそれは大きくかけ離れており、愕然とするばかりであります。今後も、この日本のシステムで医療を行わねばならないことに嫌気も覚えております。
熊谷先生の『患者さん利益になる歯科医療』とはこのようなことであったのかと痛感し、この理解をきっかけに数々のことが見えて参りました。
オーラルフィジシャン育成セミナー受講後、MTM実践に勤しんで参りました。そして、MTMが徐々に当院のシステムとして定着するにつれて満足感も抱いておりました。しかしながら、MTMは理想的な医療の実現のために、多くの歯科医師が集うことができるわかり易い方法の1つに過ぎず、真のゴールではないこと。真のゴールは、その実践から生み出される医療結果であること。に気が付いたのであります。従来の私は、単にMTMの実践にて『日吉歯科ブランドの服』を纏って、自己満足に浸っていただけであったと分かったのです。まさしく『井の中の蛙』に他なりませんでした。
幕末に800年の武士を中心とした封建社会を切り崩し、民主主義の社会の扉をひらいた坂本龍馬を中心とした幕末の志士達がおりました。
今からこの国の医療を変える取り組みは、まさしくその志士たちの仕事に匹敵する大仕事です。熊谷先生は先頭に立たれてこの大仕事に取り組んでこられたのです。この度の非常に貴重なマルメ研修の機会を頂戴した以上は、この幕末の志士になることは義務であり、またこの大仕事に参加させていただくことが使命でもあると痛感致しました。
明日からは自らの医院の質を高めることに留まらず、よりいっそう広く高い視野を持って、医療に取り組んで参ります。この様な貴重な経験を頂き、本当に感謝致します。
「ボストン研修」、昨年の「東京 ヒューストン オマハ研修」に続いて、2011年6月12日から6月19日の間の「マルメ研修」大変有意義な日々を過ごさせていただきました。
D.Ericson先生のウイットに富んだ、ユーモアも兼ね備えた、感動する講演、Ingegerd Mejar先生ほか多くの先生方の貴重な講演、マルメにいる間中、すべて丸ごと貴重な体験をさせていただきました。そしてそれら全ての先生方の根底には、「スウェーデン国家は予防歯科医療の成功をなしとげた」という成功体験からくる自信がベースにあるように感じました。これらは、私にとってあこがれに近づくことができ、そして触れるよろこびを感じ、そして「次はわれわれが成し遂げるぞと」強く心に誓い、マルメを訪れている間、興奮の日々でした。そして、To confirm knowledge To add knowledge To get new perspectivesを頭に思い描きつつ、講演を聴かせていただき、見学をさせていただきました。
成功のためには、理想論を掲げるのではなく「現実的に可能な事から始めよう!」という考えをとても大切にしていました。
「治療しても齲蝕はなくならない」「虫歯にならない事、虫歯にならないための予防、定期健診に歯科医院に行くという小さい頃からの自然な習慣を持つ事、定期的なメインテナンスが大切」という考えのもと、国家が自然に流れるようなシステムを作り上げている事に感動しました。
大学の研究においては、研究の成果、研究のデータを基に良い結果がでたら、それがすぐにスウェーデン国民の歯科医療に直結していることに驚き感心しました。
PBL(Problem based learning)によるマルメ大学の教育手法が良い実績を伴っている事を私も実践していきたいと思います。
診断においては、観察、確認、判断、再評価の大切さ。治療への介入の時期については、Caries progression rates–consequencesからの様々な考察の必要性。隣接面の治療においては、隣在歯を考慮する重要性。などなど、まだまだ多くありすぎて、語り尽くせません。
そしてこれらの多くのスウェーデンMalmöで学んだ歯科医療哲学、スウェーデンの成功体験を、われわれ歯科医院の歯科医師、歯科衛生士、CC、全てのスタッフとともに学び(もちろんPBLの手法を駆使して)、共有し、哲学として行動できるようになり、このすばらしい予防歯科医療に磨きをかけ、われわれの歯科医院に来院してくださるすべての患者様に、そして地域の方々に、願わくば全ての日本の人々に体感していただいて元気な「日本を!」と願っております。
スウェーデンMalmöをベースに、ドリルフリーのピンバッチを胸に歯科医院スタッフともに「改革と緩やかな進化」を行い続けて行きます。
いっしょに参加の先生方、衛生士のみなさま、多くの語らいをありがとうございました。西真紀子先生 岩上早苗様、芸術的な通訳ありがとうございました。
私にとってマルメは、知識や哲学を得る場になったのみならず、特別な意義のある場となりました。それは主人と同時に高次元の研修を受けることにより、これからの夫婦の夢である新しい地での新規開業に関する、共通認識が得られたからです。
主人は今年3月まで、大学口腔外科に籍を置き多忙を極めておりました。定年退職後は、もともとの家がある東京で開業すると決めた後も、診療所のコンセプト・システム作り等、じっくり考える余裕がありませんでした。
ところが6月12日に出国してからは、二人揃ってすべての雑事から解放され「予防歯科」に特化した、上質のルツボともいうべき教育環境に身を置くことができました。その中で二人の思考が近づき、混沌としていた計画が、より明確な形をもったものになっていきました。
メインになる授業内容は、カリオロジー・ペリオドントロジーの世界的権威、新進気鋭の研究者、経験豊富なハイジニスト等の多彩な先生方の、人間性にあふれた最新の講義でした。予防歯科医学の基礎であるリスク診断、メインテナンスの重要性についても豊富な資料をもとに、詳しい解説がありました。
できるだけMIを心掛けている者として、エビデンスをベースにした力強い講演は、背中を押して頂いている気がしました。予防歯科のシンボルである「ねじれたドリル」は、ユーモラスかつ真髄をついた鋭い現状批判です。
福祉施設の見学も大変興味深く、スウェーデンの目をみはるばかりの徹底的な予防の取り組みに、深く考えさせられました。Capitation system も、その根源は経済的効果を考えた、国家的プロジェクトであると知り、日本のメタボリックシンドロームの取り組みとも通じるものがあるように思いました。高額の税負担のあるスウェーデンに比しても、医療費の面ではより多くの資金を投じている日本政府にとって、非常に示唆に富んだシステムであると思われます。
さらに今回の大きな成果は、高い志を持った62人の新しい友人に恵まれたということです。それぞれの得難い体験をお話して頂き、自分の疑問が解消され新しい着想が湧いてきました。
今後の私の目標は、予防歯科を考慮に入れた診療所を11月に立ち上げ、真の患者利益を追求していくことです。そのためには自分を含めたスタッフ全員が、元気で幸せであることも必要になります。これから約20年を目途に健康に診療が続けられるよう、主人とともに抗加齢医学に則った生活習慣を維持することを考えます。その上で、自分の能力が及ばないことは、他の人の力をお借りしながら、今まで培ってきたことや、マルメで学んだことを、少しでも社会に還元できたらと思っています。
これからの第二の歯科人生において、この「オーラルフィジシャン マルメ研修」は、すべての思考の核となる極めて貴重な経験でした。
1.特例的参加事情:マルメ市のホテルにチェックインした第1日の夕方に2回目のmeetingがあり、名代引率の加藤先生から参加者全員の紹介がありました。私は大学同級生の妻に続いて「前・金沢大学教授」と紹介されましたが、今回の参加理由は、妻が昨年、日吉歯科で講習を受けた際の最終日に、熊谷先生から“海外研修に一緒に参加するように”と強く薦めていただいたためでした。そこで本研修での私の立ち位置として、(1)参加される方々のオーラルフィジシャンとしての熱い思いを最優先に尊重すること、(2)転地・再開院する妻と知識を共有すること、の2点でした。
2.全体を通じての感想:大学卒業後、本年3月の定年まで、その大半を大学医学部の口腔外科に奉職してきた私にとって、今回の研修は歯学の原点に立ち返り、純粋に歯科医師としての使命と誇りを再喚起していただいた有意義なものとなりました。熊谷先生やEricson教授を始め、関係する全ての方々の御厚意に深謝致します。
3.日々の研修内容で印象的だったもの(抜粋)
第1日(月):歯科教育におけるマルメ・モデルと高く評価されているProblem based learning(PBL)が紹介された。旧来型の蓄積学習から自己推進型で、知識を反復・活性化して自分のものとしていくもので、OSCE、EBMと相通じるものと理解した。
第2日(火):終日Cariologyに関する講義であったが、Ericson教授はlife workとしてのMinimally invasive dentistryの講義でその哲学を開示された。「cariesに対して、歯髄が温存される範囲内で、できるだけ急がず、かつstep-wiseに介入することの有用性」を立証科学的かつ医療経済学的に示され、感慨深かった。
第3日(水):公立の歯科健康管理センターを訪問し、Capitation modelの実際を学んだ。これは10段階のcaries risk assessment(R2)に基づく年間の個人負担金体系であり、19歳までの無償治療の延長として、motivationを維持していくことが主眼との説明を受けた。後日、本モデルに関する講義のあとで、「日本では基本的に個人負担金が少ないので、本モデルは導入しにくい」との参加者からのコメントがあった。
第4日(木):終日講義の間の休憩時間を利用して、口腔外科外来を視察させていただいた。私の意向を取り次いでいただいたOral Careの大竹社長、通訳の西先生および案内していただいたGunnnel先生に感謝します。皆さん、本当にfriendlyで親切でした。
第5日(金):歯周炎とインプラント周囲炎のrisk factorについて述べられ、基本的に同様であるとのことであった。また最後のQ&A ALLでは白のボードに書き出された参加者からの質問事項に対し、全ての講師陣が参加してdiscussionがなされ、これも有益であった。
本研修全体を通じ、講師陣と参加者双方の熱い思いが融合して、濃密で質のかなり高い研修が作り上げられたものと評価される。蛇足ながら、講義中の参加者の睡眠は全くの杞憂であった。
4.まとめ(至近未来に向けて):講義は元より、休憩時間等で我々夫婦よりかなり若い参加者の方々と、大学の医局では不可能な「平等の立場」で交流・意見交換ができ、大いに刺激を受けた。これは秋からの再・開院に役立てられるものと確信している。
念願だったSwedenの訪問だった。
これまで、様々な情報を通じて学びながら北欧の歯科医療をめざしてきたことの検証をどうしてもしたかったが、素晴らしい内容のプログラムに沿って講義を受け、感銘と確信を得た思いである。
このような研修のコースを提案企画した熊谷崇先生に心から感謝をしたい。
またそれを受け入れてくれて、全くむだのないプログラムを組んでいただいたDan Ericson先生はじめマルメ大学のスタッフの方々の思いやりに敬服したい。
想像していたSwedenの歯科医療にたいして、それ以上に進化していたように思われた。
数多くの研究と検証と議論の積み重ねた上でのpolicyであり、医療福祉社会の形成であり、すべての国民がhealthy lifeになっていることが理解できた。
求めるのは、最高のDentistryではなく、幸せなOral healthであると。
そのためには、医療モデルを様々なリスクファクターから分析をして、アセスメントしながら長期のメインテナンスが定着してきた様子があった。
様々な立場や多方面からのPBLという問題解決方法。
施行されたことへの再評価を繰り返しながらむだな医療費の見直し。
新たな研究や成果を取り入れた改変の柔軟性など。
誰もが受け入れるのに十分な合理性のあるpolicyであると感心させられた。
検証のつもりが、内容や企画が充実していて、襟を正して真面目に参加することに。
最年長の立場であり、異物のような存在だったかもしれないのであるが、熱心な若者たちからエネルギーを分けていただいて、充実したあっという間の一週間だった。
これからの自分の臨床に是非活かせられるように、assessmentとinnovationを強く感じた。
日本の歯科医療のinnovationを考えたいところであるが、より現実的な自分の診療室でできることを求めていこうと思う。
マルメ研修に参加させていただきありがとうございました。私は、『どうしたらより多くの患者さんに日常的に予防処置ができるのか?』を考えて参加しました。
マルメ大学の先生は、メインテナンスについてすでに約30年前から臨床研究されており、メインテナンスの有用性についてエビデンスを講義されました。さらに、永年のデータを集め分析し、メインテナンスプログラムに反映され実施されている。そして、プログラムは、国レベルで統一されていました。その、メインテナンスプログラムも度々見直され、国の対応の早さ、オーラル ケアへの認識の高さに驚きました。メインテナンスの際には、患者さんの評価、個々の治療計画、再評価(一定間隔)が重要である。その為には、歯科衛生士の役割、予防を行うのに適した設備が必要である。
さらに、同行された大竹社長のスピーチと本気の眼がとても印象に残りました。人生のどのステージでどんな人と出会うかで人生が決まる、
チャレンジしないと何も変わらないというお話に共感しました。
今回のセミナーでは、多くの方々から本気の取り組みを見せていただきました。さらに、通訳さんはじめバックアップスタッフさんの気配りで充実した満足のセミナーでした。明日からも日常的に予防治療に取り組みます。ありがとうございました。
私は本研修を終え、他では得られない様々な体験ができたと感じています。
研修を通じて一番衝撃を受けたのは、スウェーデンでは公的な機関である大学が中心となって日々の診療、研究の中にシステム化された予防プログラムを取り入れていることです。各分野の専門医がエビデンスに基づいたリスクアセスメントプログラムを作成し、システム化された予防プログラムを実践していることは本当にすばらしい事だと思いました。現在日本でも侵襲範囲を必要最小限にする(MI)については強く推奨されていますが、それ以前のさらに重要なリスクアセスメントについて大学レベルで同様の取り組みをしている大学を私は知りません。実際、私は学生時代の講義を含めリスクアセスメントについてしっかりと学んだ記憶はありませんでしたし、卒後に通っている大学院でも同様でした。
スウェーデンのように、全ての患者さんについてリスクアセスメントを行うシステムは現在の日本にも当然必要であると思います。既に日吉歯科診療所を中心として実践されている歯科医院も多くあります。しかし、このことは個人の開業医だけではなく、公的な機関である大学病院でも実践するべきだと強く感じました。日本には独自の保険制度があり、スウェーデンのシステムをそのまま取り入れることは難しいかもしれません。しかし、日本と比較してカリエスフリー率が高いレベルで維持されている国のシステムを理解し取り入れようと試みることが、今後の日本の歯科医療の質を高めるためには必要であると思います。
私は参加者の中で、勤務医および大学院生という二つの立場で参加しました。このような貴重な体験をさせて頂いたことに感謝し、「治療にする前にできること」を今まで以上に考えて、日々の診療に望みたいと思います。また、大学に在籍する歯科医師として、今回の研修で得た知識や感じたことを少しでも多くの同僚や学生に伝え、そして一つでも多く実践していくことで日本の歯科医療の進歩に貢献していきたいと思います。
今回のスウェーデン、マルメ大学研修はかなり前から楽しみにしていて、行く前からワクワクしていた。第1回目の時も参加を申し込んだが応募者多数だったためキャンセル待ちとなってしまい参加できなかったからだ。参加してみて予想通り今回の研修は素晴らしいものであった。研修の内容は以前酒田で聞いた内容も含まれていたが、同じ内容でも現地で聞くことに意義があると思う。これは熊谷先生の話を酒田で聞くということにも通じていると思った。
<4日間にわたる講義について>
最初に今回の研修の目標について明確に提示されたが、まさに理にかなっておりとても共感できた。今までマルメ大学ではPBLを導入して教育を行っていると聞いていたが、今回PBLのディスカッションを体験することができて、聞いていたことだけではなく実体験として新たな視点が私の中に追加されることとなった。これは非常に大きい経験であり、他の歯科医院の方とこのような時間を共有できたことが良い経験になった。
スウェーデン(マルメ大学?)では教える側と教わる側の距離が適正であるというか、妙な権威意識が少ないような印象で学びやすい雰囲気が上手く形成されていると想像した。
授業全般的に長すぎず、短すぎず時間配分もちょうど良くペースがとりやすかった。ブレイクの時に先生に質問している方が多く講師陣、受講者共にレベルの高いコースだったと思う。
内容的にもカリオロジーの内容が非常に濃く興味深いものであった。そして教育内容が良いのは当然だが、どちらかというとHow toよりも理念・考え方というか、深いところをとてもわかりやすく納得できる形にしてプレゼンテーションしているのが印象に残った。
診療費やスタッフの給料などのコストに関わる部分のデータも多く出てきて良いさらに現実的で良いと思った。現地で何人かの方とは話していたが、エリクソン先生達の授業を大学5年、6年もしくは卒後教育の初期に聞きたかった。
どの講義も教え方が上手でデータで根拠を示していたため説得力に優れているチームだと実感した。そしてそのために非常に力を入れていると思われたのが、「教育」だと思った。
教育のコンセプトがある程度標準化できていて歯科医師、行政、住民の関係が安定していると思われた。
<見学ツアーについて>
行政が運営している歯科医院を見学したときはとても驚かされた。コンピュータソフトを使用してリスクアセスメントを行いリスクに基づき分類して保険料を算定するというまさに見えない予防を形にして臨床に取り入れて、シンプルかつ明確に運用しているモデルをみることができて感動した。そして、それを国がやっていることがとにかく凄い。
ただ、日本でも介護保険制度があるので物理的には十分にできるはずである。全体的なハードやソフトは日本でも全く劣っていない。むしろ日本の方が優れている面もあると考えられる。しかし、根本的な考え方(根の部分)が誤っていれば結果はほど遠いものになってしまうし、日本では基本的には難しいと私は感じた。
幼稚園と高齢者施設の見学もなんとなくスウェーデンの人の生活感を感じる事ができて良かったと思う。基本的に国全体がゆったりした流れで回っており、ギスギスしていないことをこのような社会的な施設の見学を通じて感じることができた。
一つ要望を出すとすれば、やはりスウェーデンの歯科衛生士学校を見学したかった。どのように歯科衛生士の教育が行われているかがとても興味がある。そして日本の歯科衛生士の人にその形を見てもらいたいと思った。
見学ツアーの日のシティホールでのパーティーは最高でした。熊谷先生の今までの努力や色々なつながりがあってこその場だったことを感じました。そして、あんなに良い場所に入れてラッキーでした。もう一生あんなところには入れないかもしれません・・・
最終日はサティフィケート受領後だったこともあり少し気が抜けていたが、オーラルケアAB社という訪問歯科の会社を見ることもできて大変参考になった。スウェーデンは日本と同じくらい高齢化が進んでいる国の一つであり、今回のデータでもはっきりしたが自分の天然歯を保有する高齢者が多いことも今後の日本に対して良い材料になると思った。
そしてこの会社では規模も大きくシステム化され、訪問歯科の分野でもプロフェッショナルな雰囲気を感じた。
私は熊谷先生がおっしゃっていたワールドスタンダードを強く意識して研修を繰り返して行こうと思っているが、その結果歯科先進国であるアメリカやスウェーデンを当然意識することになる。今回の研修で強く感じたのは日本人は総論的にはスウェーデンの感覚の方が受け入れやすいと思う。実際にはかなりアメリカの色が入ってきているが、全般的にはスウェーデンを受け入れ、要所でアメリカというハイブリッド方で歯科を改革していく必要を感じた。西先生からお伺いしたのだが、スウェーデンの人はオン、オフの切り替えが非常に上手く、とても効率的とのこと。この良い意味での効率性は学ぶべき点が多いと感じた。
診療室も個室化され徹底した滅菌消毒システムがあり、まさに理想の歯科医院の環境であった。スタッフの意識も高いように感じたが、歯科医師、デンタルアシスタント、デンタルハイジニストというようにチームで動く仕組みが上手く回っているように思えた。
ただ、今回の研修で多くのデータが出てきていたが、国の大きさや社会制度、政治などなど多くのファクターが絡むので改革が並大抵のことでは難しく、変化には時間がかかるとより強く思うのと同時に、日本の歯科医療の将来がどうなるのか不安を感じながら逆に楽しんでいこうという意識をもつ良い機会となった。
コーヒーブレイクの時にスウェーデンの先生と会話をしたが、スウェーデンの企業(IKEAやH&Mなど)は日本や中国で最近とても元気だが何か理由があるのか質問した。すると先生は「スウェーデンは国が小さいから外に出ていかなければならない」と言っていた。私にとってはとても興味深い発言だった。
今回の研修に参加させて頂き、自分自身および診療室において何かしらの転機になったことは間違いない。まずは自分の歯科医院内のスタッフに内容を正確に伝えることから始めてみようと思っている。そこから少しでも将来の日本の歯科医療が良くなるよう動いていければと思う。
今回のマルメ研修に参加するにあたり、大きな思いを持って臨みました。
この研修に申し込んだのは歯科専門学校2年生の時でした。その時私は、歯科衛生士としてどのように患者さんと関わっていけばよいのか、どのような衛生士になりたいのかなど、これからの道を模索している最中でした。それらが少しでも分かるきっかけになればと考えていました。そして、この研修に参加する頃、自分の中に答えが見えてきました。しかし、それが本当に正しいのか、本当に患者さんの利益に結びつくのか不安でした。
今回の研修では、自分の考えている道が正しいのか確認するとともに、これから自分がすべきことや歯科医療哲学を明確にしたいという思いで参加しました。
マルメ大学の講義や各施設の見学は、私の想像以上に刺激的でした。その中でも、講義をして下さったすべての先生方が専門分野は違えど、国民の口腔の健康を守り育成する目標を持って行う姿勢を肌で感じることができたのがよかったです。それを感じとることができたことがこの研修に参加できてよかったと思えました。
私は、今回の研修の中で3つの言葉が心に残りました。
一つ目は、「エビデンス」です。カリエスの進行やインプラント周囲炎などの講義があり、そのすべてがエビデンスに基づいた内容でした。どうして正しいのかを様々なエビデンスにて裏付けされた論文を用いて、色々な角度から説明して下さいました。確かな知識を得る、より深く知識を再確認するとともに、エビデンスの重要性やその知識に沿った診療の大切さに気づくことができました。
二つ目は、「リスクアセスメント」です。スウェーデンの診療では、すべての患者さんにリスクアセスメントにて精査し、治療やメインテナンスを行います。患者さんの情報を細かく収集し様々な方向からリスクを考えます。そして、患者さんに必要な処置は何か、何を注意すべきかが明確になり、リスクアセスメントを行う事で初めて患者さんのデンタルヘルスを高めるメインテナンス計画が立案されるのです。このようにリスクアセスメント無くしての歯科医療はないと強く感じました。
三つ目は「シンプル」です。講義中でも施設見学でも度々聞いた言葉です。“患者さんには必要な処置だけを行う”、“訪問診療では必要な人が必要なものだけ持っていく”などむだなことは一切行わない。必要性がある場合のみ対応することを「シンプル」という言葉で表現していました。この言葉を初めて聞いた時とても衝撃を受けました。それは今まで私はオーバートリートメントに判断し対応していたのではないだろうかと感じました。患者さんにとって最善の医療とは必要な時に必要な対応を行うことだと強く感じました。そのため処置の時期や状態を見極めるだけの知識や経験が必要にであり、口腔内の状況に合ったピンポイントな対応を行えることが大切だと感じました。
この6日間の研修を通じ歯科医療に対する考え方が大きく変化し影響を受け、自分自身のこれからの進むべき道が明確になりました。エビデンス、リスクアセスメント、シンプルを忘れずに歯科衛生士としてできる最高レベルの仕事ができるよう日々努力したいと思います。
今回マルメ大学の研修に参加させていただけたことに大変感謝いたします。私にとってこれから歯科医療に携わる上での大切な1週間となりました。
研修に参加する前に私自身、研修目的について考えました。
スウェーデンは今では予防歯科の国と知られていますが、30年前は虫歯の多い国だったときいています。それがなぜ今ではカリエスフリー率が増加し高齢になっても健全な歯を守れているのか、そこには歯科医療哲学というものがありそれこそがスウェーデンの歯科医療を変えていったのですがその本物を学んでこようということが一番にありました。また、ワールドスタンダードを再認識する、そして患者さんに本当の歯科医療とはどのようなものなのか整理し情報提供をして口腔の健康に務めたいと思いました。そしてこのような意識を最初から持ち患者さんに接することのできる歯科衛生士を教育し育てることができるようになりたいと目的を定めました。
研修は非常に内容が濃く、5日間朝から夕方までと長時間に及ぶ講義でした。未来の歯科医療界を動かす偉大な講師の先生たちの講義を聴くことができ恵まれていることを感じました。どんな質問にも答えていただき、先生方の人柄にも感激しました。
スウェーデンでは歯科衛生士が歯科医師とわからなくなるぐらい堂々とし、どの衛生士にきいても人々の口腔内の健康を守ることができることに喜びを感じるという答えが返ってきました。それにとても感動し本当に患者さんのために使命感を持って仕事をしているのだと感じました。
講義の中でいくつも研究データが出てきましたが、データ収集の重要性を再確認しました。患者さんの口腔内をメインテナンスでモニタリングし足跡をのこすことに良い結果をだすことができます。また、リスクアセスメントを適切にすることによりニーズにあったメインテンスを提供することができます。患者さんのモチベーションアップにつながり健康な方が増える仕組みができていることに驚きました。
貴重な講義で学んできたことを残してきたスタッフに伝え同じ意識を共有するために早速チーム内で勉強会を開く予定です。このようにまた院内に新しい風を吹かせ真の患者利益を追求したいと考えています。
1週間の研修を終え、私はこの研修を「学」という漢字一文字に表しました。
スウェーデンの文化、日本との違いを学びました。
今まで知り得ていた知識の再確認、新しい知識を学びました。そして学んだからにはこれをどう患者利益に生かしていったらよいのか。チーム内でよく検討しこれからにつなげます。
今回研修を受け、一番やらなければいけないことは、啓蒙活動だということを学びました。見たこと、感じたことを患者さんへ啓蒙しその家族、一緒に意識を共有するスタッフ、地域を盛り上げていくために地域歯科医院、歯科医師、衛生士・・・とたくさんいますが啓蒙しなければいけません。
また、日本各地から研修に参加された歯科医院のみなさんとは同じ目標をもっています、こんなに大勢集まり一緒に研修でき築けたつながりを大切にしたいです。
そして今回一緒に参加したスタッフの歯科医療に関するお互いの考えを共有できたことを素晴らしく感じました。一日一日の研修が終了しホテルに戻る途中にこれからの診療の中での意気込みについて話しお互いを刺激しモチベーションアップにつながったように強く思いました。
まだこの研修ですべてが分かったわけではないですし、衛生士としても人間としても未熟です。今後ももっと学び続けなくてはいけません。ただ、この研修を通して生涯現役の歯科衛生士であり続け人々の口腔健康の維持に努めたいと強く決心できた、ある意味人生でのターニングポイントであったかと思います。
素晴らしい研修をありがとうございました。ぜひ今後もスウェーデンへの研修や留学など機会があれば行きたいと思いました。
今回私は初めて海外研修に参加したのですが、セミナーに参加できて本当に幸せだと感じました。
実は申し込む前に参加することを躊躇した時期もありました。しかし研修を終えて今は、マルメ研修はとても価値があるものだったと感じもっとマルメに行きたいと思いました。
今回このような研修を開催してくれた熊谷先生、ブラッタール先生、エリクソン先生、研修に関わる全ての方々に感謝したいと思います。
スウェーデンという国は、国の政策・DrやDHの考え方、国民の意識が完全に予防中心だということがよくわかりました。そして日本も早くスウェーデンのようにしたいと思いました。
私は今回2つの課題を解決したいと思い参加しました。
1つはより多くの患者さんに予防を理解していただくにはどうしたらいいのか、ということです。日本で予防やメインテナンスという考え方は少しずつ広がりつつありますが、まだスウェーデンのようではありません。
先生方を見ていると、常に口腔内を健康に保つことを軸にそれぞれの歯科の分野を向上させていると感じました。また、口腔内一ヶ所だけを見るのではなく全人的にみるということ、患者さんの行動変容を促すということをよく話されていました。
私は患者さんと話すときに先生方のように話せていないと感じました。全人的に患者さんを診て、予防を当たり前のように話す、そして何をするのか話すのではなく、患者さん自身が「自分は何をしたらいいのか?」と聞いてくるような気づきを与え行動変容してもらえるようにすることで、今より予防が広がるのではないかと思いました。
2つ目は患者さんの口腔内を守る為に、知識を増やしたいということです。
全ての講義はエビデンスに基づいていて納得できるものでした。講義の中には予防するための知識がぎっしりつめこまれていました。
私自身は、熊谷先生のおっしゃっていた「歯科医療哲学」を学ぶことができたと思っています。
今後もこのマルメ研修を生かし診療し患者さんの口腔内を守っていきたいと強く思います。
今回の研修は歯科衛生士2年目の私にとって新しい体験ばかりで、充実した時間になりました。初めての海外で予防先進国のスウェーデンへの研修ということで不安もありましたが、それ以上に期待が大きかったです。
実際にスウェーデンの空気を感じ、志の高い先輩方と共に研修に参加でき、とても嬉しい気持ちでした。マルメ大学でスペシャリストの講師の方の講義を受け、歯科衛生士として成長できるのではないかと強く思いました。
今回の研修を漢字一文字で表すと「確」であると思います。今の自分が持っている知識を再確認し、今行っている予防型の診療体制は間違っていないと確信しました。また、今後予防型の診療体制を地域に広げ、確立したいという想いもあります。このように思えただけでも少し成長したのではないかと思います。
研修の中で特に印象に残っているのは、充実したスウェーデンの教育です。講師の先生も歯科衛生士の方も「本人もしくは保護者が十分な知識を持っている」と言っていました。メインテナンスは十二カ月から十八カ月と間隔がかなり長い印象を受けましたが、その分家庭で十分なケアができているのだと思いました。日本の現状として困った時に歯科にかかり、歯を削ると言うのが一般的です。もっと健康を保つために歯科にかかるという概念を患者さんに知っていただく必要があると感じました。現在治療の中で行っている情報提供だけでは不十分な部分があると感じ、早急に改善を図りたいと思いました。
今回の研修は私にとってターニングポイントになったと思います。もっと患者さんのために、もっと地域の為に何かしたいと思えるようになりました。今までも自分は未熟であると感じてはいましたが、それを再認識しもっと成長したいという気持ちが強くなりました。まだ研修が終わったばかりで頭の中はやりたいことでいっぱいですがまずはそれを整理して、今後どのように活かしていくかを考えていきたいと思います。
今回の経験を糧に今後の診療や啓蒙活動が地域貢献につながり、患者さんの利益となるように考えていきたいと思います。まだまだ未熟な私ですので皆様と一緒に経験を重ね、患者さんの口腔内を健康に保つことができる歯科衛生士になりたいと思います。今後もよろしくお願いします。今回は、本当にありがとうございました。
2007年に行われたスウェーデン研修がとても良かったと聞き、次回のスウェーデン研修は絶対参加したいと思い、4年間開催されるのをずっと待っていました。
なぜならスウェーデンの予防システムが歯を残しているという事実。日本と何が違うのか? スウェーデンの予防歯科に近づくにはどうしたらよいのか? その違いを自分の目で確かめたかったからです。
結果は一目瞭然でした。私が感じた事は3つあります。
1つ目は、国の政策からして違うということです。歯科衛生士は社会的地位が高く、やりがいをもって日々の診療に臨み、学んでいくシステム、医療システムも違う。国が主体となって口腔と全身の健康を守ろうとしている。乳歯が萌え始めたときからリスクアセスメントを行い個々の状態を把握しながらニーズに合わせたメインテナンスを行う。スウェーデンのシステムや考え方を聴き、歯を確実に残していけるシステムだと確信しました。
2つ目は歯科衛生士学校の勉強法「PBL(問題解決学習)」についてです。この手法はただ聞いて学ぶだけでなく学んだ知識を駆使して症例に取り組み、点と点を線にすることが可能です。今回の研修において同じようにPBLを取り入れた講義を受け、勉強する事が楽しくなると感じました。疑問に思ったことを自分やグループで解決していく、学習した事がそのまま臨床に活かせるシステムであると感じました。学んだ事をすぐさま臨床の現場に活かせない日本との差を感じました。PBLを自医院でも取り組んでいけたらと思いました。
3つ目はリスクに基づくメインテナンスの内容のほとんどがチェックアップとコミュニケーションだということ。なぜか? 患者教育がなされていてホームケアがきちんとなされているため、必要以上に行わなくてよいとの事。また歯周病の重症の方も少ない。また、リスクアセスメントによって負担金が変わるシステムにより、患者のやる気も変わり一人一人が自分の歯が誰のものなのか理解できている。移民の人々が増えてきたとの事でしたが、スウェーデンの歯科医療なら患者のモチベーションを上げ口腔内を守っていく事は可能であると感じました。
研修に参加させて頂き、スウェーデンのシステムや研究の取り組み、患者への向き合い方が素晴らしいと実感できました。日本では国の政策はまだまだこれからですが患者の口腔と体の健康を守っていこうとする気持は同じで、スウェーデンのシステムにいつか追いつき真の患者利益にもっと近づいていきたいと思います。
今回のセミナーを漢字一文字で表すと「感」です。この1週間多くの方に出会い、共に学べたこと、このセミナーに参加できたことすべてに感謝したいと思います。麻生歯科に入社して恵まれた環境のなかで日々学び、このような研修に参加させていただき、私はとても幸せ者だと感じました。また、いろいろな講義を受けるなかで衛生士として、また人として心に感じるものがありました。
日々多くのことを学び、人としても衛生士としても成長段階である私にとってマルメ大学での日々はとても刺激的で、自分を見つめ直すよい機会であり、衛生士としてするべきことはなにか再確認できたように感じます。
形や技術ではなく考え方が非常に大切であり、それを理解し実行に移すことができればスウェーデンであっても日本であっても患者に与える影響は同様であり、結果として真の患者利益につながるのではないかと考えます。
スウェーデンと日本では、環境等さまざまなことが異なりますが、日本で取り入れられることを院内で検討し、学んだことを日々の診療で活かせていけたらと思います。
今回のセミナーに参加できたこと、素晴らしい講師の方々に出会えたこと、高い向上心を持った方々に出会い、共に学ぶことができたことに感謝したいと思います。ありがとうございました。
患者さんにとっての真の利益とは何か・・日々の業務を行う上で、常に考えさせられる事です。マルメ研修では、スウェーデンの歯科哲学について、歯科衛生士の役割、日本との違い、患者さんにとっての真の利益について学びました。
研修の目標・・「デンタルヘルスの増進」
研修の目的・・「今、知っている事の確認、新たな知識を増やす、新しい物の見方ができるようにする」
“いつ修復介入に入るか”については、う蝕病変が、どのくらいの速度で進行するのか、う蝕病変の進行はどんなリスクファクターが関わってくるのか、またどういう影響をもたらすのかを理解する必要がある。修復処置に入った場合、カリエスでない健全な部分を多く切削してしまう事、隣在歯を傷つけてしてしまう危険性は64~69%、そして3倍カリエスになりやすいという事を理解しました。そしてエナメル質から象牙質にう蝕が進行する速度は、比較的遅いというデータにより、できるだけ修復を遅らせる事が歯の健康を守る事、歯を救う事につながる事を理解しました。
スウェーデンではPBL(問題解決学習)を行い、グループ内で問題に対して各学部から知識を出し、学び、結論を出していく。一つの症状についての結論をあらゆる角度から分析し、結論を出す。教わるのではなく、「自分から学ぶ」事で知識を増やし、学習する能力を養い、知識、意識を高めている。他の人の意見を聞く事、確認する事、学ぶ事は、とても重要なことであり、知識を深め、患者さんをより理解するにためにも必要な事だと思いました。
施設見学では、デンタルヘルスセンター、保育所、学校、高齢者施設に行きました。この中で高齢者施設についてとても興味深く見学させて頂きました。私の中で、高齢者に対するケアが大きな課題だったからです。ここの施設では、担当者が全てを把握していて、口腔内に関しては、最終日に見学をさせて頂いた、オーラルケアが管理をしている。このオーラルケアでは、DHが施設へ行き、口腔内の検査をし、データをとる。その情報を施設の介護士と共有し、日々必要とする口腔ケアを理解してもらえるように介護士に対し教育をする。必要があれば、歯科医師を派遣し治療を行う。高齢者は細菌を多く嚥下してしまう。補綴が多く入っている事で、口腔だけでなく、全身の健康を失うリスクも高くなる。口腔ケアを定着させるには、こちらから出向く必要性があり、会社を設立させたという事でした。介護者が入所者のブラッシングをしない理由として、時間の問題ではなく、口腔衛生に対する姿勢ができていなっかたという事が調査の結果として出ている。日本でも明らかに同じ結果が出ると思いました。健常者の口腔ケアに対する意識もまだ低い中、介護者の理解を得られるのか?とても大きな課題だと思いました。
メインテナンスについては、患者さん自身が現状に問題がある事に気づいているか、その事を受け入れられるか、動機付けができるか・・が重要である。内在的モチベーションを高めて、患者さん中心で行う。何をするか、何をすべきかを言うのではなく、何をしたらいいのか・・を聞いてくるような状態にする。誰の歯が大切なのか・・を理解させる。サリバテスト、カリオグラムでリスクを評価し、予防処置を行う。患者さんが現状に気づき、動機付けるのに必要な物だと再認識しました。ニーズにあったメインテナンスを行う事、そのためには、データを確実に取る事、患者さんを理解し患者さんにも理解して頂く。患者さんとのコミュ二ケーションをとりモチベーションを高め、維持する事ができるようにして行きたいと思います。インプラントの患者さんに対してのメインテナンスの重要性も理解しました。
マルメ大学に3カ月間研修に来ていた絹村綾子さんのお話を聞く事ができました。実際に日本の病院に勤務していて、スウェーデンの歯科医療を学んでいる。日本とスウェーデンの違いは色々あるが、それぞれの良い所を生かしたシステムが構築できる事、社会的価値観が少しでもスウェーデンに近付ける事が必要である。現状今の日本にとってはとても難しい事ですが、私にできる事は、口腔の健康を守り育てる事、予防の重要性を伝えて行く事だと再認識しました。
多くの事を学べた5日間でした。学んだ事を確実に自分の中に取り入れ、医院のスタッフにも伝えて行きたいと思います。マルメ大学の研修に参加させて頂き、D Ericson先生をはじめ、諸先生方の熱意のある講義を受けられた事、参加された各医院の方々に色々なお話を聞く事ができた事、絹村さんにお会いできた事、全てが大変貴重な物となりました。緊張と期待の中、多くの方にサポートして頂き充実したマルメ研修を終えることができました。心より感謝いたします。
セミナー初日Dan Ericson先生より歯科医療の本質について歯科医療従事者としてすべきこと、そして知っている事の確認をし、そこに知識を加え、新しい見方をする事とお話がありました。歯科衛生士として今後、私達のすべき役割に可能性を感じ背筋が伸びる思いで受講をスタートしました。
実際、スウェーデンの国を挙げての予防の取り組みをこの目で見ることができ、そこには医療哲学に基づいたとても的確な診断、従事者の姿勢、真の患者利益を考えた行動がありました。現地でスウェーデン人と話をしましたが、“口の健康は体の健康です。私を含め家族全員が歯を削った治療はしたことが無い”と仰っており、気持ちが良いくらい患者にも伝達されている事を知りました。
先生方の数々の言葉が刺激的でした。特にPBL問題解決型学習法は、現在当院で行われているスタッフ間での勉強を行う上でも、私自身の教育にも、患者教育にも今後実践していきたいと思いました。実際起きていることから解る目標を見出し、知識を増やし繋ぎ合せ洗練し、仕上げること学習能力を高めること。聞いただけだと忘れる、感性を高めて聞いてみると記憶が確かになる、やってみると自分のものになるとDan Ericson先生は仰っていました。まさにこの数年思考錯誤し、カリオロジーの勉強をスタートし今日に至った私にとっては心に響く言葉となりました。そして現状を見つめ直す良い機会となりました。
今後、私自身にできること、これは歯科医療者として多くの人に得た知識情報を伝達する事。つまり啓蒙活動し、地域、社会に貢献することだと考えました。まずは同じモチベーションを持つ医院スタッフ、患者、医療従事者間、地域、社会と輪が広がるよう努力していきたいと考えました。すべては患者のために。
今回の経験は私達の財産となり、今後の診療に大きな影響を与えてくれると思います。
同じ意識を持つ多くの先生方、衛生士さんとディスカッションしモチベーションの上がるとても良い機会となりました。研修を一文字に例えると私は“輝”と答えました。これはスウェーデンの仕組みづくりが本当にすばらしかったこと、今後日本で生きていくことの希望将来性、またマルメ大学の先生方、衛生士がとても生き生きとし本分をまっとうしていることの自信に満ちた輝きを感じたためです。
来年以降も今回参加することのできなかった方々にこのような素晴らしい歯科医師、衛生士と供に学ぶ機会を頂ければ幸いです。
貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。
この研修に参加できた事を心から幸せだと思いました。やはり人から聞く事と自分の目で見て、自分の耳で聴いて、肌で感じる事には大きな違いがありました。この機会を与えて下さった全ての方々にお礼申し上げます。
マルメ研修ではお会いした誰もが健康に対する意識が高く、メインテナンスを常識とする患者さん、倫理観の高い歯科医師や衛生士、メインテナンスを軸とした医療を実現するため、日々努力する研究者達、その全ての方々の医療に対する姿勢に感動しました。スウェーデンの街並みに癒され、時間の使い方に羨望しました。エリクソン先生のユーモア溢れる講義をいつまでも聴いていたい気持ちでした。
問題解決型学習(PBL)は、こんな風に学習ができればその後の学ぶ姿勢も変わり人間性も変わるのではと感じました。問題の特定、解決方法を模索する事や情報の収集法、情報交換の方法など、学ぶ手段や姿勢を獲得するのにこのような良い方法があると私は知りませんでした。PBLの手法を用いて私自身も成長できると感じました。ぜひ日本にも浸透してほしいと思います。また患者さんの誘導法に心理学、行動変容療法が用いられている事など、自分の臨床に取り入れたいと感じました。
健康をサポートする国の制度やガイドラインの違いはあります。しかし今まで行ってきたメディカルトリートメントモデルに間違いはないのだと確信し、リスク評価の方法やその活用法は今後改善していきたいと思います。エビデンスに基づいて情報を共有する事は重要であると思います。
この研修で出会った、たくさんの方々に感謝しております。これを機にこれからもたくさんの事を学んでいければと思います。
去年7月にマルメ大学研修に参加させていただくことが決定してから、約1年間研修で何を学ぶためにマルメに行くのか考えながら過ごしてきましたが、今回研修に参加させていただいて大変勉強になりました。
第1回目のチームミーティングに参加させていただいたことから始まり、オーラルフィジシャンの考えや目標について、熊谷先生のお話やさまざまな方のお話を伺って、私の歯科衛生士としての在り方が大きく変化しました。
少しでも早く日吉歯科や海外の歯科衛生士の方々のようになりたいと思うようになってから日々の診療や研修などを通して学び、一人の歯科衛生士としてなんとか業務をこなすことはできるようになりましたが、これからの課題は自分自身の歯科衛生士としてどのようにあるべきか追求することとオーラルフィジシャンの歯科衛生士を医院で教育していくことと思っています。自分自身が学習するのと違い、同じ思いを共有できる歯科衛生士に教育することは難しいことだと日々感じています。
しかし今回参加させていただいたことで、少しその点が解決できるような気がします。
この一週間さまざまなことを学ばせていただきましたが、その中でもスウェーデンの歯科医師や歯科衛生士などさまざまな方とお会いして、一人ひとりの患者さんや地域全体をどうしていきたいのか伝わってくるものがあり、歯科医療に対する姿勢や生き方について影響を受けるものがありました。
院長から「絶対スウェーデンに行く価値がある」とお話を伺っていましたが、院長の話していた意味が解りました。
正しいことをやっていれば患者さんは口腔内の健康について興味を示して、そのことが地域を変えていくということを強く感じました。
患者さんにセルフケアへの関心をもっていただくには情報を与えるだけではなく、患者さん自身にセルフケアの必要性を感じていただくが重要で、データは術者と患者さんが共にリスクを把握するためのツールであり、それは日本もスウェーデンも同じで継続して努力していけば当院のある地域も近い将来変えられるかもしれないと思いました。
今まではスウェーデンは特別な存在でしたが、この一週間の講義を通してスウェーデンでも継続して努力してきて今があるということ、どの国でも努力し続けなければいけないと感じました。
これから自分自身の歯科衛生士としての生き方を追求していきたいと思います。担当患者さんのなかには、私がマルメ研修に参加させていただいたことをご存じの方もいらっしゃるので、私が感じたことを早速伝えたいと思います。
貴重な体験をさせていただいてありがとうございました。
3.11東日本大震災が発生した。幸い酒田は2日間の停電のみであったが、震源地近くに住む親族とは連絡がとれず、連日流れる非現実的な映像にただただ不安を覚えた。津波に襲われ、必死に逃げた人々に思いを馳せる。80歳以上の日本人の半分以上は総義歯を装着している。残存歯も10本に満たない(もちろん、動揺し噛めない歯もカウントされる)。義歯が流されても「命さえあれば…」と思い、辛抱された方も多くいたことだろう。しかし、長引く避難所生活、その緊張感が解けたとき、まさに食=命といえるのではないだろうか。「歯周病も虫歯も、そのほとんどが予防できる」その仕事を担う私たち歯科医療従事者がすべきことはやはり、「削る・詰めるだけ」「痛くなるまで放っておくだけ」ではなく、「痛くならないように」「悪くならないように」健康に導くことなのだと、あらためて思いを強くした。
このような使命を再確認する中、それを実現しているスウェーデンの地へ、研修に行く機会に恵まれた。
全体を通じた率直な感想は、「診療している内容や医療哲学、軸となるものは、日吉歯科診療所のそれと全く同じだ」ということ。異なるのは、社会全体での認識があるか否か。スウェーデンでは国(もしくは制度やプログラムを考えるトップ)が、その軸を持ち、考え方を共有しているように感じた。それゆえ、制度やシステムに反映されるのだろう。日本では実現が難しいことが、ここでは実行されている理由は、そこにあるのではないだろうか。
例えばMinimum Interventionという軸。日本でMIといえば、いかに小さく切削し充填するかというところのみを指す色合いが強いが、健康な口腔を育成することもMI、それを維持するメインテナンスもMI、初期カリエスへの対応もMI(カリエスの進行速度を研究しどの時点で介入すべきか等)、進行してしまった深部カリエスにもMI(step wiseを適応するなど長期的な歯の保存を考える等)… どのセクターも、どの分野も、どの教授陣も、向いている方向は一緒、「いかに食や会話を楽しめる能力を保ったまま寿命を全うできるか。そのためにSpecialistsである私たちができることは何か」を考えながら、臨床、研究、教育、システム作りが行われていく。
それらは、DHに対する認識にも関連してくる。スウェーデンと日本における歯科衛生士の権限の違いは周知の事実である。私は意地悪ながら、最後にこのように質問してみた。「スウェーデンの歯科衛生士は、今の権限に満足しているのか? 今以上に様々なことができたら良いと思うか? 逆に今よりもできることは少なくても良いと思うか?」それに対する答えはこうだった。「多くの歯科衛生士を代表して答えるのは難しいが、これだけは言える。私たちはDrill, Fillはしたくはない。私たちは予防のProfessional teamの一員である。そのために、もっと深く学んでいきたい。」それは、私の思った通りの答えであった。そしてそれ以上の感動を覚えた。日本の歯科衛生士は、より専門的に働き、日本国民の健康に寄与できるポテンシャルは持っていると思う。しかし、歯科衛生士自身がチームの一員として信頼され得るために、自ら変わり、示すべきことは多い。歯科医師の仕事を奪う存在ではない。お互いがより専門的な仕事に集中し、専念できるということなのだから。
スウェーデンと日本は、制度や道徳、環境、国民性、価値観… 全てが異なる。「生きる」ということ「自由」に対する捉え方さえ違う。しかし共有できることは「哲学」、「人生をよりよく生きたい」ということ。それは、多くの人にとって「うん、うん、そうだよね、その通りだよね」と思えること。
私たちは、それを学び、持ち帰って、日本人らしく“よりよく生きる”ために活動し続けよう。方法は様々あると思う。この国に生まれたのだから、そして、歯科に関わったのだから。それを共有できることをとても幸せに思う。歯科衛生士であることを誇りに思う。
今回マルメ研修に参加させて頂くにあたり、前回のマルメ研修に参加させて頂いた母から言われたのは、「マルメに溢れている医療の哲学を感じ取ってきてほしい」ということでした。そして、出発日に成田空港で渡された熊谷先生からのメッセージにも同じことが書かれていました。その言葉の意味を考えながら、今回のマルメ研修が心で学ぶ研修になればいいなと思っていました。
今回の研修は私にとって初めての海外研修だったのですが、スウェーデンに行ってみて、一次情報に触れることの大切さが分かりました。自分の足でその地を歩き、自分の目で見て耳で聞いて、直接話して質問して、感じ取る。歯科医療だけでなく、その国のことを知り、そこに生きる人々を知る。そうして初めて、見えてくるものがあるということを知りました。
スウェーデンは、一人ひとりが大切にされ尊重される社会、生涯安心して暮らせる社会、誰もが平等で対等な社会、理性的で論理的な思考をする人々、きれいな街並み、無理・むだがない環境、そんな風に私は感じました。そうした背景があって、一人ひとりの健康が重んじられる歯科医療、臨床データと科学的根拠に基づいた合理的で持続可能な歯科医療が機能しているのだと思いました。
スウェーデンと日本の歯科医療の大きく異なる点は、まずデータであると思います。スウェーデンでは、常にデータをとり、分析評価し、それを基に制度等の修正を繰り返しています。そうした修正は歯科医院単位でなく市や国単位で行われており、そのことがシステムの確立や変更を非常にスピーディーにしているのだと思いました。日本にはデータを集積するシステムがほとんどなく、そのためデータ分析がされず、政策に反映されることもありません。そもそもデータが重んじられていないのかもしれません。日本の歯科医療は、個々の短期的な利益を追求してしまっているように思います。歯科医師が飽和状態で、短期的な利益を追求せざるを得ないということもあるのかもしれません。
また、スウェーデンと日本では歯科衛生士の役割にも大きな差があると思いました。スウェーデンでは、デンタルハイジニストとデンタルナースの役割がはっきりと分かれていて、デンタルハイジニストは患者さんの健康を管理することに専念しています。現在日本で働いている多くの歯科衛生士はスウェーデンのデンタルナースに近い仕事をしているのだと思いました。スウェーデンの歯科衛生士は開業することも、麻酔を打つことも、レントゲン写真も撮ることもでき、社会的認知度も高いそうです。スウェーデンのデンタルハイジニストの職業領域が、日本ではほとんど空白の状態であると感じました。それは、リスクアセスメントを軽視し、データを軽視し、患者の口腔の健康維持に目を向けずただ治療に焦点を当ててきた日本の歯科医療において、歯科衛生士は歯科衛生業務をする機会が与えられてこなかったからだと思います。今後、日本でも歯科衛生士が「口腔の健康を守ることのできる唯一の専門職」として認識されるように、変わっていかなくてはいけないと思いました。
今回の研修で一番印象に残った言葉は、見学先の衛生士さんが言った「ここは持続可能な都市であり、ここでは持続可能な歯科医療が行われている」という言葉です。例えば環境問題への取り組みや、エネルギー開発、教育や福祉、医療などすべてにおいて、合理的で持続可能な方法が選択されています。持続可能な歯科医療を考えるうえで、妥当な報酬が得られているということも欠かせない要素だと思います。スウェーデンでは、「口腔の健康を獲得することで報酬を得る」という理想的な歯科医療が成立していました。う蝕を科学的に捉え、データ分析し、医療哲学に基づいて患者の口腔の健康を守る医療を追求してきたからこそ、スウェーデンの歯科医療は発展してきたのだと感じました。いろいろな面で日本の歯科医療とは比べ物にならないくらい進んだスウェーデンの歯科医療ですが、それがあまりにも普通に、当たり前に、どの医療施設でも行われているということが驚きでした。
「歯科医療の哲学」というものすごく抽象的な課題を与えられて参加した今回の研修でしたが、一週間の研修が終わった今、熊谷先生が私たちに感じ取ってほしかったものが分かったような気がします。2年間の日吉歯科での研修を終え、新たなスタートをきろうとしているこの時期に、このような素晴らしい研修に参加させて頂けたことに感謝しています。自分たちの立場を守るための歯科医療でもなく、自分たちの利益を追求する歯科医療でもなく、患者さんにとって本当に価値のある歯科医療を提供し続けていきたいとあらためて思いました。
まず、今回第2回目のマルメ研修に参加させていただいたことに深く感謝いたします。
多くの方々がこの研修をサポートしてくださり、そのおかげで私は大変有意義に研修期間を過ごすことができました。「来てよかった!」「行ってよかった!」と思えた1週間でした。
前回のマルメ研修に参加した院長から絶対に自分が行って実際に見て、聞いて、感じてきたほうがいい!と言われていました。まさにその通り。
スウェーデンの歯科医学の実態を大いに五感で感じてきました。
歯科衛生士教育やスウェーデンで行われているリスク評価の方法、DHの役割など日本との違いが多くあることに気づきました。またその違いが歯科医療に多きな差を生んでいるのではないかと思います。
また、カリエスの進行について、ぺリオ、薬剤や遺伝についてなど今までの知識の確認と新しい情報を研究の結果やエビデンスを交えながら学ぶこともできました。講義をしてくださった先生方はみなさんユーモア溢れる方たちばかり、しかも通訳もとてもわかりやすく、講義の内容もよく理解ができました。とても楽しい講義でした。
そして多くの歯を残した高齢者の口腔ケアの取り組みもみることができました。そのようなことからも日本との差を感じました。
マルメ研修に参加したからこそ得ることのできたことがたくさんあります。現在私たちが目指し、実践している歯科医療や方法は決して間違ってはいない、このまま積み重ねていくことがとても大切なのだと確信しました。
歯科医療の「哲学」を学ぶことができ、今回の研修は私の歯科衛生士人生のターニングポイントになったと思っています。
日本の歯科医療がよりよくなるために、いっそう頑張る意欲がわきました。
麻生歯科では今までにいろいろなセミナーに参加しています。私達が日々目指している北欧スタイルの勉強をしてきました。今回このお話をいただき、これまで学んできたことすべてをリアルで体験できることに強い期待を抱き参加させていただきたいと申し出ました。
私は、麻生歯科に入ったばかりで日が浅いため少し不安もありましたが、それよりも強い好奇心と期待に胸を踊らせていました。
研修に参加してみて、先生方の優しさに驚きました。疑問に思ったことを授業後に質問をすると快く答えていただき、自分で理解できるまで何度も質問させていただきました。とてもいい刺激を与えていただきました。
スウェーデンも何もないところから始め、今では国全体で予防をしていくのが当たり前という意識を自然と持つことができています。スウェーデンにできて日本にできないということはないと思います。患者さんのために私たちが今できること、それは患者さんに知識を与えていくということではないかと思いました。
まずは自分の患者さんからその家族へそして、周りの人たちから地域へとその活動を広げていき、知識の輪を広げていきたいと思います。
Malmo研修に参加しての感想を一字で表すと、『新』でした。
・新天地での研修 ・同じ意識の歯科医院の方々との新たな出会い ・新鮮な気持ち
・新しい知識 ・新たな課題 ・D.Ericson先生はじめ多くの講師の先生との新しい触れ合い
などなど新しい事がたくさんありました。
スウェーデンと日本ではやはり文化が違うため今回の研修で学んだことすべてを実行することは不可能です。しかし、取り入れられることも十分にあります。患者さんのためにという目的を掲げ、自分たちにできることを探求し続けたいと思います。
マルメ大学での研修に参加して、たくさんのことを学びました。中でも印象に残っているのは、マルメ大学で取り入れている教育システム、PBLについてです。PBLを自分自身に、取り入れてみたいと思いました。
私は疑問点などがあると、人に聞いて、その答えを知ることが多いように思います。それは、自分で考え、調べるよりも早いからです。しかし、それではすぐに忘れてしまって、自分のものにはなっていないように思います。まず、日々の診療のなかでの疑問点、問題点に対して、自分で考え、自分で調べるということを習慣づけたいと思います。そして、いつかは、自分だけでなく、当院のスタッフ教育のなかにも、PBLを取り入れられたらと思っています。
教育、保険制度、国民性など、日本とスウェーデンには、いろいろな違いがあるのだと今回の研修を通して感じましたが、自分に取り入れられるものも見つけることができました。
将来、日本もスウェーデンのように、メインテナンスを受けることがあたり前になる日が来るよう、自分にできることを精一杯していきたいです。
マルメ大学での研修は私にとって初めての海外研修でした。
今回は一緒にいくはずの院長が残念ながら参加できなかった不安と戸惑いの中、参加させていただきました。
出発前のミーティングで、この研修に参加できなかった方々がたくさんいらっしゃることを聞き、幸いなことに機会に恵まれたからにはいろいろ学ぼうと思い、気持ちが奮い立ちました。
スウェーデンの歯科事情は、国民の予防歯科に対する理解、学校教育のカリュキラムやその教育方法、対齲蝕に対する歴史的政策の違いなどが日本と大きく違っていることを目の当たりにしました。
印象に残ったのは問題提議型の「考えさせる教育」・・・教えるだけではなく、問題を考えて自分達で調べる。
「なぜ?」を考えることでいろいろなことに取り組み、見て学んで実行していく様子が印象的でした。
歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士がチームワーク作業を学生時に学ぶのも興味深く、日本の歯科教育が縦割りなのと比較し、チーム医療をスムーズに受け入れられる土壌がこういうところにもあるのだなと感じました。
当地の歯科衛生士学校では2年間学び、その後任意で学士号は1年、また修士号は1年で取得することができる。日本の歯科衛生士と違い齲蝕と歯周病の診断ができること、麻酔を行なうことができ、また独立開業ができることは驚きを隠しきれませんでした。
当然リスクアセスメントを参考にケアプランを歯科衛生士が決めていくわけです。
法律上の問題もありお国柄ということもありますがユニークでうらやましい環境です。
施設見学ではデンタルヘルスセンター、老人健康センター、保育所の見学をしました。
デンタルヘルスセンターでは1歳からはチェックで3歳から予防をしていく拠点施設で、小児からの予防が大切という教育を受けていて素直に国民の中に予防という文化が受け入れられているのを感じました。
社会保障制度が日本と違いリスクによる負担金の違いなども予防に対する関心の追い風になっているようです。
またスウェーデンのカリエス予防は患者さんが行なうのが主体で、歯科医師や歯科衛生士がアドバイスをしてサポートしていくシステムになっており、アドバイザーである歯科衛生士は、常にブラッシュアップし、最新の知識や情報を取得している必要があります。
オーラルケアAB社の見学では訪問診療時に持って行く機材やシステムについて教えていただき、参考にしてクリニックにも取り入れていきたいと思います。
ケアグッズに関しては、日本での歯磨剤の濃度はモノフルオロフォスフェイト1000ppm以下ですが、スウェーデンでは5000ppmの歯磨剤があるとのことで、お土産に購入しました。
今回のセミナーで学んだことを参考にして、今までできていなかったことを改善していきたいと思います。
今回の研修は私にとって“知識の再確認”よりも“新しい物の見方を考える”ことの方が多い研修になったように思います。今まで何度か予防についての講義を受講したこともあり、スウェーデンという国が予防先進国として有名なことは理解しているつもりでした。今回の研修も予防歯科の本場で多くのことが学べる機会が近々あるという話を昨年のチームミーティングの前に院長先生の方から伺っていたので、もしも行けるのだとしたら、なるべく早いうちから色んなことを見たり聞いたりして多くの知識を得たいと考えました。実際行けることが決まってからは、逆に言葉がわからなくても大丈夫だろうかとか、知識の乏しい私でもきちんと理解できるかとても不安に思いました。でも講義を受けている時や見学の時もいろんな先生方にとてもていねいな通訳をしていただいたり、スウェーデンの講師の方がとても自然に笑顔であいさつしてくださったり… たくさんの方の優しさにこれほど感謝したことはなかったように思います。
他の施設へ行った時も思いました。特に、一般歯科に行った時は歯科医師さんや衛生士さんに会うと皆さん笑顔で迎えてくださるので凄くうれしくなりました。とくに向こうの方はしっかり相手の目をしっかり見て自然に笑ってくれるのでとてもほっとした気分になりました。日本ではどうしても作り笑いをしている人を見かける事が多く、安心感を得た記憶が正直多くありませんでした。でもスウェーデンに来てからは、こちらが笑顔を返したくなるような笑顔をする方が多いのでそのことにとても驚きました。ただ考えてみると、私も笑顔を自然にできていないように思います。スウェーデンの衛生士の方は説明している時も自信に満ち溢れていて目標に向かってまっすぐ進もうという意思がこちらにも伝わってくるようでした。私も相手をほっとさせることができるような、そして自分自身に自信が持てるような、そんな衛生士になりたいと思いました。
講義の内容も初めて知ることが多く楽しく聞くことができました。カリエスに関しては「早期発見・早期治療」が一番良いことだと思っていたので「カリエスを削ることで健全な歯を削ることになる」と言われた時はとても驚きました。ほかにも、「一度カリエスを治療するとまた再修復また再修復になる」と言われた時は確かにそうだなと思いました。
アメリカの方ではコンタクトのカリエスを治療する時の症例で反対側も削るのが良いとされているようだが、これではカリエスで無いところも削ることになるのでさらにカリエスリスクが高くなるとスウェーデンでは思われているのだと聞いたとき、同じ海外でも考え方が全く違うことがよくわかりました。ただ、予防の方から考えていくと、確かにアメリカの考え方には素直に賛成できないなと思いました。それに、カリエスも初期に治療するという考えがアメリカにはあるそうで、どちらかというと、こちらに来るまではそういう早くに発見すればカリエスが大きくならずに済むと思っていました。これも予防から考えると、少し違うようで、治療の時期を遅らせることによってその歯の寿命が延びるのだと聞かされた時は、確かに治療して再修復になってしまうより長くは持つのだということがわかりました。
ただ、カリエスができたとしても、ほっておくのではなく、家庭でのフッ素でカリエスの進行止めができる、というのにも少し驚きました。向こうではフッ素洗口はあたりまえのようで、0.2%の洗口剤を使うと効果があるそうです。確かこちらではフッ素はあまりなじみがないですが、向こうだと濃度の高い歯磨き粉が当たり前のように売られているのでホームケアでも虫歯は向こうなら抑えることができるのだなと思いました。
ほかにもスウェーデンの保険制度や衛生士さんの講師の方のお話をたくさん聞くことができました。特に感じたことが、Ericson先生のお話の中にもありましたが、「患者さんが本当に望んでいることをしなくてはいけない」ということです。私は、これが必要だからとか、この治療は早くやるのが患者さんのためなのだと、患者さんをみんな同じように考えて、あまり変化のない対応をしていたように思います。人はみんな違うし望んでいることはいろいろある。だからこそリスク評価をして患者さんになにが必要かデータを取ることが大切なのだとわかりました。スウェーデンではリスクアセスメントが3ステップあり、だいたい2ステップでデータはそろうそうです。データがそろわない人に初めてサリバテスト行うと聞いたときはとても驚きました。でもそれだけスウェーデンではほかのデータをしっかり取り、問診をていねいにやるのだと知ることができたので良かったです。
私の年でスウェーデンの地を踏みこのような貴重な体験をできる人はそういないと思います。多くのことを学ぶことができ、それを将来の糧にすることができる。これはとても幸せなことだと思いますし、スウェーデン行きに許可を下さった院長先生には感謝してもしきれないくらいです。院長先生の期待に応えるために、そして何より自分のために、この素晴らしい体験を日々の診療に生かしていけたらいいなと思いました。
ダン・エリクソン先生はじめ全ての先生方にお逢いできましたことを心より感謝申し上げます。また、素晴らしい企画をご提供くださいました熊谷先生、日吉歯科の皆様方にも感謝いたします。
「眠っちゃいけない、がんばらなくっちゃ、他の人に迷惑かけないように」とドキドキしながら講義に参加した私にとって、エリクソン先生のユーモア溢れる、おちゃめなコミュニケーションは、講義に集中するきっかけを作ってくださいました。エリクソン先生のお話を拝聴しながら、ふっと声に出して笑った瞬間、とてもとてもリラックスしたのです。
何よりもまず「チーム医療する」ことが、大学での教育のスタイルそのものから取り組まれていることに感激し、講義に引き込まれました。わたし達オーラルフィジシャンとしての診療では、歯科ドクターと歯科衛生士、他全てのスタッフが自己研鑽し、惜しみない協力をし合い、症例一つ一つ、患者さま一人一人と向き合うこと、そして最善の結果を出すことを求められていると思います。予防というウェルネスサービスである歯科医療においては、尚更、歯科ドクターと歯科衛生士の症例に対するキャリブレーションが求められていることでしょう。症例に対する意見は、正直に平らかに声に出しながらも、それぞれのプロとしての資格と人間性を尊重し、学ぶ姿勢が育っている環境を羨ましいと思いました。「ドクターは、ハイジニストを育てることも資格のうちである」という言葉は、強く心に残っています。
当院でミーティングの際、「ぼくの最近気になってること」のレジメの中で、症例に対して「○○さん、どんな感じだったか話してみて」「どう思ったん?」「△△さんならどうする?」「どうしたら良かった?」「次回どうしたらいいと思う?」「何ができる?」と、院長が問いかけている様子を目にしながら、問いかけられる頻度の多いスタッフが、どんどん成長する様子を興味深く眺めておりました。Problem based learning (PBL)という問題解決学習法を学びながら、共通する何かヒントをみつけたような気がしています。チームの一人一人全員が、お互いに症例を提供し、お互いに問いかけ合えるミーティングに進化させたいと強く願っています。
研修に参加した全員でのサリバテストの体験も結果も、カリエス治療の介入時期のグラフも研究とエビデンスに対する信頼も印象的でしたし、カリエスと遺伝子の関係性という視点での研究も、今後追い続けてみたい課題でした。苦みへの感受性とカリエスリスクの関係では、小児治療時の子供さんの様子を思い出したり、唾液腺マッサージをした後のビールが格段に甘く美味しく感じた体験を思い出したりしました。
マルメの街の中のショップでは、それはそれはたくさんのお菓子が並べられており、たくさんの若者が買い求めている姿が印象的でした。マルメのお菓子は、全部キシリトールなの?フッ素でも入ってるの?・・聞いてみたかったな、と帰国してから思い出しました。
国は研究にも医療にも補助と言う形でお金を出す、大学は研究し結果を出し、国民の健康、生活に反映する取り組みをする、国民はそれを活かし健康に取り組む。あたりまえのことだけれど、それがしっかりと動いている様子から「大人も国も成熟したスウェーデン」を体感しました。
市庁舎でのパーティーも、修了式でのパーティーも、スウェーデンで学ぶことを歓迎してお迎えくださったことに深いホスピタリティーを感じています。もてなすことの大切さ、素晴らしさを、あらためて教わったように思っています。
西先生、岩上さま、わかりやすい通訳ありがとうございました。
ご一緒させていただいた先生方、歯科衛生士さん達、皆様方との温かくひたむきで真摯な交流は、勉強になり励みになりました。ほんとうにありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
スウェーデンの訪問歯科最大手オーラルケアAB社を訪問した模様がSwedenの歯科衛生士向けジャーナルに掲載されました。