日吉歯科診療所 熊谷 崇
いよいよ2014年のオーラルフィジシャン海外研修である、マルメ研修がスタートいたします。私はかねがね、定期的に海外における最新の歯科医療の現場を視察し、研修を受けることで、日々の現場に埋没することなくグローバルスタンダードの感性、視座を磨くことの重要性をお伝えしてきました。また、そのような場を提供するため、過去には米国(ボストン、ヒューストン、オマハ)、欧州(スウェーデン、ドイツ)における研修を企画してきました。
さて、2006年秋に亡くなられたダグラス・ブラッタール先生の強いサポートにより実現されたマルメ研修も今回で三回目となりました。ダン・エリクソン先生をはじめ、マルメ大学歯学部の皆様が、私どもの研修についての意図を良く理解していただき、今回の研修の成功のために力を尽くして下さると約束していただいております。
私がこのセミナーを企画したとき、まず始めにブラッタール先生にお願いをしたのは、スウェーデンの「歯科医療哲学」を理解できるようなセミナーにしてほしいと言うことでした。歯科医療システムを構築しようとするとき、多くの人は形からはいることが多いように思います。ちなみに、オーラルフィジシャンコースを受講された方は、日吉歯科診療所のシステムを参考にすることが多いかもしれません。しかし、システムを忠実に模倣したとしても、決して患者さんの真の利益につながる歯科診療所として機能することはできません。なぜならば、システムを動かすのは「哲学」だからです。どんな「哲学」をもって歯科医療に臨めばいいのか、皆さんにはこの研修セミナーを通してその答えを各々で考える機会にしていただきたいと願っています。
ある意味では、それぞれの参加者にとって、歯科医療者としての自分を考えるターニングポイントとなる研修になるかもしれません。そうであってほしいと願っています。ですから、参加の皆さんには、そうした心構えで参加していただくことを強く希望します。物見遊山的な安易な考え方ではなく、また単なる自己研鑽ではなく、これからの自身の歯科医療をどう構築すれば患者さんの真の利益に結びつく歯科医療を展開することができるかということを、しっかり学び、そして考える機会にしていただきたいと思います。
加藤 雄大
本研修は2007年オーラルフィジシャンスウェーデンマルメ研修の第3回目として2014年8月18日から22日までの5日間、スウェーデンマルメ大学歯学部にて行われました。カリオロジー科教授Dan Ericson先生をコースディレクターとして、同大歯学部の全面サポートのもと企画され、日本から61名の歯科医師、歯科衛生士が参加いたしました。
この5日間、歯科医療哲学、齲蝕および歯周病のリスク、深部齲蝕への対応方法、そして、今まさにスウェーデンで拡大している口腔健康と経済性をインセンティブとしたリスクベースの歯科医療システムに関する講義などが行われました。また、その他のアクティビティとして、マルメ市内の公立歯科医院や幼稚園および訪問歯科診療大手であるOral Care社を訪問し、スウェーデンの医療福祉の実情を見学することができました。
マルメ大学講師陣から参加者が受け取ることのできた情報は、エビデンスに基づいたデータから合理的に思考され、かつ誰のための医療であるのかという哲学をもって導きだされたものであり、私たちが医療者であるとの自覚を強く促すものでした。そのような熱意に満ちた講義に参加者は刺激され、講義終了後は質問が途切れることなく寄せられ、活発なディスカッションが起こりました。このような交流は最終日のバンケットディナーまで会場の使用時間を過ぎても続き、5日間のコースは有意義に無事幕を閉じました。
ここに本研修のプログラム、研修中の写真、および参加者の感想を掲載いたします。
町並み
ウェルカムパーティー
講義
課外授業
市長との懇親会
レセプションパーティー
その他
集合写真
当初の目的は予防先進国であるスウェーデンにおいてカリオロジー、ペリオドントロジーを学習することだったと思う。しかしながら研修を受けていくにつれて海外からみた日本を俯瞰的に考えるような気持になっていった。
スウェーデンの人々は歯科に対する知識や理解が深くすべて協力的である
スウェーデン人はみんなメインテナンスを受けている
スウェーデン人は80歳で28本残っている
そんな考えを持っていた。しかしそれらは私の思い込みであった。まるでヨーロッパから見た日本人は着物を着てちょんまげを結い、相撲とアニメと富士山の国であるかのように思われているのと似ているのかもしれない。
スウェーデンの人のなかにもメインテナンスを受けない人や、治療のキャンセルをする人もいる。19歳までは無料だから歯科医院に通っていたとしても、20歳から有料になったら普通に行かなくなる。治療に協力的な人もいればそうでない人もいる。ただ日本との違いはそういった非協力な人に合わせて歯科医療を発展させていないことにあるのではないだろうか。
様々なレクチャーのあと全体的にも個人的にも質問する機会に恵まれた(すばらしい通訳のかたがいらっしゃったので)。実際に質問してみると、講師の先生方は??? という表情をされた。その理由がだんだんわかってきた。私を含め日本人は知りたいことの答えを求める。しかし講師の先生方は総じて今、現時点でわかっていることとわかっていないことをきっちり区別して考えている。そのうえで自分の経験に基づく私見を示す。つまりわかっていないことをさもわかったように話すことを良しとしないのである。
学生時代にしても卒後研修にしても我々は基礎の理論と現場の方法論だけを学んできたので、考えることができなくなってしまっている。それに対してマルメ大学のPBLは、人間の思考欲求をフルにくすぐるものであると感じた。講師陣の穏やかな表情と豊かな知識、そして非常に情熱的なスタイルはこういう教育の土壌があってこそなのだと思い帰途についた。
今回私たちにこのような素晴しい機会を与えていただいた熊谷先生、マルメ大学の先生方に心から感謝いたします。
かねてより熱望していたマルメ大学研修に参加できた事を大変幸せに感じています。
今回5日間の講義を受け、実際の臨床の場を見学させていただいて、いくつかのキーワードが心に残った。
・歯科医療の目的と哲学
・歯科医師の仕事への達成感(どこを見て仕事をするか)
・リスクアセスメント
・歯科衛生士のプロ意識 生涯働く覚悟
「歯科医療の目的と哲学」を考える時、私たちは常にゼロベースに立って物事を見通す事が求められる。つまり、「現在◯◯が求められているから」とか「これに困っているから」といった改良型の視点ではなく、「もしすべてが理想通りに行えるとしたら」「本質的にはどのような医療が理想なのか」といった革新的な考え方に基づかなければ何も変わらない。スウェーデンの人口動態は日本と大差がないことも教えていただいた。過去の歯科疾患についても同様であろう。しかし、そこからの「哲学」が違ったのである。
How toを学んでも、そこに目的意識と哲学が無ければ何かを大きく変える事はできない。私たちはHow toを学びに来たわけではないと知らされた研修であった。
そして、カリエス治療の介入時期、介入方法についても多くの事を教えていただいたが、治療介入の目的の一つに、歯科医師の満足感、達成感を満たすという要素がある事には本当にはっとさせられた。つまり、短期的に(歯科医師の)満足感を満たそうと思えば、上手に削って上手に詰める、いわゆる治療技術に重きが置かれる。反対に、予防処置が功を奏し、カリエスの進行を抑え削らずにすみ、結果歯牙が長期に保存できたとする評価が出るのはなんて長い道のりなのであろうか。その価値が理解されていなければ歯科医師は評価の外に追いやられかねない。歯科医療が歯科医師の自己重要感を満たす道具になってはいけないのである。と同時に、歯牙を守ることの価値を伝え、国民の意識を変える事が私たちの大切な仕事なのである。
このような哲学のもと、歯牙歯列の保存を目的とした歯科医療を行うために、私たちに足りないのは「リスクアセスメント」である。
診査・診断からリスク評価する事無く治療へと進むことが一般的であるため、治療後(または治療が必要でない場合は特に)のメインテナンスが一律で、リスクが低い人にはオーバーメインテナンス、リスクの高い人にはアンダーメインテナンスとなって、結果メインテナンスが継続しなかったり、成功しない事も度々起こる。
オーラルフィジシャンとしては、歯科医師も歯科衛生士もリスクアセスメントに基づいた患者のマネジメントが重要であると心得ねばならない。
そして、これができるプロとしての歯科衛生士を育成する事が今後の日本の歯科界で求められる事である。
スウェーデンでは、女性も、結婚しても出産しても定年まで男女とも働くのが一般的なようだ。歯科衛生士もそこが前提となるからこそ患者を長期で見ていく覚悟ができるし、キャリアアップを真剣に考える事ができる。それは女性歯科医師にも同様に求められる事であり、歯科界のみならず日本全体の労働人口の確保にも直結する課題である。
マルメ研修は、私たちに知識以上に感覚としてたくさんの刺激をもたらした。
5日間、日常から遮断され、マルメフィロソフィーのシャワーの中に身を置く事で考え方が整理され、これから向かうべき道筋を自分自身と確認し合うかけがえの無い時間となった。
2011年、震災の年の5月にオーラルフィジシアンの研修に参加をして3年がたちました。今年の4月に予防棟を増築し、ハード面でようやくこれからスタートにたったところです。
今回は院長と一緒に参加させていただき、お互いの認識が同じであることを確認することもできました。
はじめは5日間という研修が、時差ぼけなどでだらけなければいいなあと少し心配していましたが、熊谷先生からのメッセージに心がひきしまり、また、休憩時間のもうけ方がとてもいい感じで、集中して講義を聴くことができました。なにより他に参加された方々の熱意に引っ張られました。
定期的にメインテナンスに来院されていても、カリエスになってしまうということは、日々の悩みの一つでした。今回参加してはっきりとした考えが自分の中に確立しました、まず診断にはばらつきがあり、難しいということ。なので、疑わしきは治療をせずに、フッ素を併用してメインテナンスが必要になること。これをはっきりと、患者さんに伝えることができると自信がつきました。
スウェーデンでは19歳までが無料で管理下におくことができることが予防の根底にあり、結果を出しています。日本では国がそのような方針ではないので、微力ながら一歯科医院としてやっていかなければいけないことだと、はっきりしました。
年に一度のマルメフェスティバルの時に受講できて、有意義でした。ありがとうございました。
熊谷先生のオーラルフィジシャンとしての考えを基に、診療体系の改変を進めてきました.予防棟の建設やユニットの増設、歯科衛生士の増員など将来への投資を行っているところです.現在の診療スタンスになるまでには、相当の覚悟が必要でした.幸いなことに、先輩である柴田先生(秋田・西馬音内)や勉強会の仲間である佐藤 奨先生(岩手・一関)からの数年にわたる情報提供と、実際の診療結果を目の当たりにすることで、自分もやってみたいという思いが強くなりました.しかし、私自身は、これまで総義歯やインプラント治療、歯周治療などの専門性を高くすることに重点をおいてきましたので、この分野は副院長とスタッフを中心に進めることにしました.最初は、物真似であった私自身も、徐々にオーラルフィジシャンの考えが、今後の歯科医療の揺るぎのない基盤であるということを理解できるようになりました.
マルメ研修は不定期に行われる中、今回参加できたことは最高の経験になりました.ダン・エリクソン先生の楽しい講義を中心に、充実した研修となりました.総論として「予防はビジネス」という観念があることは、自院のこれからの方向性を考える上で、最も大きな収穫となりました.
カリエスに関する公衆衛生統計では、フッ素の使用が最も大きな要因であること.実際の診療においてはフッ素の高濃度で長時間作用させることがポイントであること.隣接面カリエスにおいては、診断が重要であり、そのためにはデンタル咬翼法が基本であること、齲蝕の進行を判断するのは年齢やリスク環境などによって変化するため困難であり、治療に踏み切るには常に迷いが生じ、どの講師もケースバイケースと締めくくったこと、また、治療においては歯髄保存を第一に考え、ステップワイズ法が有効であること.治療された歯はその後再治療のリスクが付きまとうことなど、日々の診療で基本として押さえておくべき内容を明確に習得できたと思います.
また、歯周病、インプラント周囲炎の講義からは、日本の現状がさほどスウェーデンと差が無く、同じような状況が発生していることが理解できました.カリオロジー、歯周治療の進んだ国という認識がありましたが、保険制度とキャピテーションの違いがあるものの、実際には国民の意識にはおおきな差が無く、病態や抱える問題は共通するものであったと思います.
資格制度や教育方針においても、一つの事象に考察とディスカッションを加えて理解を深めていく方法は、今後の自院の人材育成においても大変に参考になるものでした.
一つの課題があったのではないだろうか?
19歳までの保険医療制度が終わった後、どのようにして国民の口腔の健康を守るべきか?
そこに、積み上げられたエビデンスベースの医療が直接、政府の保険政策に影響を持ち、患者が了解できると見込まれる10段階、3年間の契約額がリスクを基準として設定された。その契約数は上昇を続け、質・量ともに目標に達する見込みである。
このスウェーデンの公的歯科医療機関で行われているR2システムは成功している。
「ドリリングする段階が遅いほど良い。そして大事なのは最少侵襲性のアプローチで患者が健康を守れるようにすること。そしてそれで歯科医療者が生活できる事」
こうした結果に医療者、患者、政府の利害が一致するシステムが採用される医療のあり方。
それが進化を続けているスウェーデンの歯科医療を端的に表している。
カリエスはー生涯を通じた疾患である。充填のやり直しは50-70%。ある研究では1970―80年代に歯科医療がカリエスから歯を守ることに貢献しているパーセンテージは3%、それに対して歯磨剤のフッ素等が65%であった。また、ある論文では歯科医療は健康につながるものではなくお金につながると結論付けられている。G.V.Blackは言っている「カリエスを全体としてみなければならない」「充填物は治癒にはならない」Blackの予防拡大の提唱以外は正しい。
カリエスフリーであってもリスクは0ではない。また、病変数が多いほど早く進行するリスクが高くなる。デンマークの研究では、窩洞形成をすると隣在歯にダメージを与える可能性69%。7年間フォローするとダメージを受けていない隣接面では7%の修復率、受けたところはその4倍。
象牙質は生きている、作用させれば歯髄にも及ぶ。象牙質は歯髄との複合体として考えなければならない。ホワイトスポットであっても細菌の産出する化学物質は歯髄に到達している。ディープカリエスにはステップワイズエキスカベーションが勧められる。大切なことはシールされていること。シールされると栄養源を絶たれて活動性から非活動性のバクテリアに変えることができる。露髄しそうなときは、わからない、が正確だ。エビデンスによると歯の痛みと歯髄の状態はリンクしない。
これら講義のすべてはエビデンスベースで話される。不確実性や可能性話もエビデンスベースで話される。アップデートされ続けている知識の体系は圧倒される密度で、一貫したフィロソフィーがあった。
「SPTによって歯周炎のコントロールが行えることは疑いない」とSPTの重要性を強調する。更に直観的にSPTの間隔を決めるDrもいるが実際は個別化して決める。個別化が重要だ。個人の反応はそれぞれちがう。
カリエスの表現型(乳歯列)について、54~70%は遺伝的なファクターの関連があるのではないか。
多くの講師の話は患者への診療の実際に結び付けて話される。データの裏付けのあるこれだけのボリュームの講義を受けるのは初めての経験だった。
カリオロジー発祥の地でその理論から実践まで学ぶことが出来るこのツアーは、オーラルフィジシャンの先輩がたから、とても素晴らしいと聞かされていましたから、大変楽しみにしておりました。
実際参加して、何より素晴らしいと感じた事は、エリクソン先生はじめ、マルメ大学の先生方が大変親切だったこと、そして、学びやすい環境を整えてくださったことです。
沢山の質問にも丁寧に答えていただきました。
机上の知識だけでなく、社会の中でどう実践されているかも見せていただきました。大変貴重な経験をさせていただきましたことを、感謝しております。
エリクソン先生は、ユーモアと優しさにとんだ先生で、気配りも細かくしてくださいました。
講議は、随所に笑いが仕掛けてあり、厳しいながらも楽しく講議が受けられる様にして下さいました。我々は皆先生が大好きになりました。
研修の内容は、歴史、基礎、応用、そして未来へと組み立てられていました。学んだことを我々の臨床にどう取り入れるか、仲間の先生方と相談もできました。
帰国後は、学んだ事を皆に伝えて診療に取り入れていかなければいけません。バーのピンバッジを見てスウェーデンの美しい風景を思い出しながら、今の気持ちを持ち続けようと思っています。
素晴らしい講師陣の指導を受けることができ、とあっという間に終わってしまった研修会でした。参加された歯科医院の皆様の知性と熱気に巻き込まれた得難い体験でした。また、マルメに、スウェーデンに来てみたい。そうした思いが深まりました。そしてこの体験をどのように生かし、実践して行くのかが問われているのだ、と感じます。
研修を終えて、最も感じていることは、日本とスウェーデンではかなりシステムが違うということです。キャピテーションシステムは魅力的なシステムだと思います。国民の健康と歯科医師の仕事のバランスがよく考えられていると思います。いろいろ問題はあるのかもしれませんが、日本でも参考にしていくべきモデルだと思いますし、個人の医院単位でも取り入れていくことができるかもしれません。また、健康に対する歯科医師の意識、国の取り組み方によって、カリエスは予防できるということも強く感じました。スウェーデンでも一般の人々は歯科医院は歯を削るところと思っているというお話があり、一般の人々の意識はあまり日本と変わらないのかもしれないと思いましたが、歯科医師の意識で、結果は大きく違うのだと思いました。カリエスについては、画期的な診断、治療法があるわけではないことがよくわかりましたので、しっかり勉強して知識を増やし、個々の人々、個々の歯についてよく考え対処していかなければならないと思いました。
海外研修では眠気との戦いになることがよくありますが、今回はそんなこともなくしっかり勉強できたと思います。なんといってもユーモアのあるエリクソン先生の講義は眠くなる暇などなく、もっともっと聞きたいという感じです。ぜひまたエリクソン先生の講義を聴く機会を与えていただければと思います。今後もできるだけオーラルフィジシャン研修に参加させていただき、日本の歯科医療が国民のために有益なものになるようがんばりたいと思います。
私は比較的早い時期(2005年)にオーラルフィジシャン育成セミナーを修了しましたが、過去2回のマルメ研修は参加を検討しているうちに満席となり、今回3回目でやっと念願の研修に参加することができました。
8月17日(日)朝9時に成田空港集合。添乗員からの簡単な説明と資料配付の後、結団式があると言うことで、貸し切りの待合室に移動。そこで熊谷先生からのメッセージを配られました。「個人として参加するのではなく、日本の歯科医療を変革しようと取り組んでいる歯科医師として参加するという気概を忘れずに、夜は深酒をせず早く就寝する等、自己管理を怠らないでいただきたい」という内容でした。今回の海外研修では熊谷先生と1週間をともに過ごせるものと楽しみにしていた私にとっては、熊谷先生が参加されないことはとても残念でしたが、このメッセージを胸に日本を出発しました。
8月18日(月)
オリエンテーション、歯科医学の本質、問題解決型学習法(PBL)
歯科衛生士教育プログラム、う蝕リスクの評価、う蝕の進行
8月19日(火)
う蝕の進行速度、深いう蝕に対する処置、いつ修復すべきか? (MI歯科医療)
8月20日(水)
学外の研修:幼稚園、公立歯科医院、訪問診療
8月21日(木)
メインテナンスとは何か? 歯周炎のリスク評価、病院見学
スウェーデンの歯科衛生士:力量・ガイドライン・日常業務、カリオグラム演習
8月22日(金)
インプラント周囲炎、う蝕・歯周病治療のガイドライン
スウェーデンの歯科医療、キャピテーションモデル、質疑応答
どの講義もとても念入りに準備されたもので、十分な資料が配付され、必要な事が過不足なく盛り込まれていました。何よりもスケジュール通りに進行し、休憩するときは休憩し、講義中は講義に集中するといったメリハリのある点が、日本の大学の授業と大違いでした。
今回の研修を通して、熊谷先生から日頃伺っていた「歯科医療のフィロソフィー」を実際に肌で感じ取ることができました。スウェーデンでは、まず何が問題で何が必要かを考え、確固たる理念を確立し、制度や仕組みを徹底的に検証し、むだのない運用をしている場面を至る所で目にすることができました。つまり「理念の確立」、「エビデンスの重視」、「費用対効果の検証」、「合理主義」が徹底しているのです。歯科医療そのものもそうですが(歯科治療のガイドライン、キャピテーションモデル、など)、歯科医師・歯科衛生士教育のシステムも素晴らしいものだと感じました(PBL、など)。スウェーデンでは歯科医師は5年、歯科衛生士は2年の修業年限だそうですが、日本よりも数段すぐれた職業人になっているようです。
特に、歯科衛生士が自信に満ちたお話しをし、きちんと業務をこなしているのにはとても感動しました。
日本では「すごい」と言われることがスウェーデンではごく当たり前に日常のこととして行われているのですが、かといって一般市民が「あれもダメ、これもダメ」「こうしなさい、ああしなさい」ばかりで窮屈に暮らしているわけではなく、みんなのんびりとしています。幼稚園の見学では、幼稚園では歯磨きをしないと聞いて驚きましたが、子どもの口の中の健康は親が責任を持つという考えたかたが徹底しているようです。日本のように、何でも学校に押しつける考え方とは180°違っていました。
今回の研修では参加者全員がオーラルフィジシャン(MTM)という共通認識を持っているため、ストレスがなく楽しいツアーでした。一生に一度のマルメ研修でしたので、今回の体験を今後にしっかりと生かしていきたいと思います。
3年前のマルメ大学の研修に当院の院長が参加し、帰国後院長のモチベーションが目に見えて上がり事あるごとに研修の内容を伝え聞いておりました。しかし、人づてではその感動は十分に伝わらずスウェーデンに何があるのだろうと思い参加を希望しました。
研修中に一番頻繁に思ったことは、日本とはこんなにも制度、仕組みが違うのかという事でした。キャピテーションシステム、R2、ナショナルガイドライン、公立の歯科医院・訪問歯科診療・幼稚園の在り方等とても合理的で納得させられるものでした。国、制度により国民の健康が守られ予防の意識が形成されてきたのだとも思いました。税金の使い道を国と教育、研究機関が口腔の健康を守るという価値観を共有し協力しむだな医療費を省き作り上げられたスウェーデンを参考に日本で何ができるかと考えさせられました。
そして、小児期から若年期までの予防・メインテナンスの重要性をあらためて感じました。この時期に徹底的に予防に対する教育を行い、大人・高齢者になっても健康を保てる環境作りがこの時期から始まっているのだと実感いたしました。日本の法律、保険制度が大幅に変わるはずもないため我々は地道にやれることをやるしかないと思いました。
今回スウェーデン マルメ大学にて参加したAdvancing oral health研修は、明日から使える知識・テクニックを学ぶためだけではなく、予防歯科で目覚ましい実績をあげている、スウェーデンの歯科医療の「哲学・考え方」をダン・エリクソン教授をはじめマルメ大学歯学部の錚々たる先生方から学ぶ素晴らしい研修でした。
その哲学・考え方は、「科学的根拠に基づいたリスク評価を行い、科学的根拠に基づいた最小侵襲の治療を行う」というものでした。
講義の内容はカリエスのリスク評価、カリエスの進行速度、深いカリエスに対する処置、MI歯科医療、薬剤と疾患のパターン、歯周炎のリスク評価、ナショナルガイドライン、サリバテストの分析、遺伝とカリエス発生の関係、インプラント周囲炎、キャピテーションシステム等など非常にバラエティーに富んだ分野を学びましたが、根底には常にその哲学・考え方があり、その哲学・考え方をさまざまな角度から学ぶことができました。
日々の予防歯科を実践する中で生まれたいくつかの疑問に対しても、直接ディスカッションするチャンスが多くありました。たとえばフッ素を口腔内に停滞させるために、歯磨き後の洗口を0~1回を推奨していますが、歯磨剤の味をなくしたいので4~5回ゆすぎたいという方が多く定着しない場合がありました。
スウェーデンでの状況を質問したところ、現在は0~1回で定着しているが、以前はスウェーデンの方も多くゆすいでいたという回答をいただきました。
スウェーデンでも初めは同じで、日本人だけの問題ではない事を知り、さらに工夫をして粘り強く取り組もうと決意できました。
また、国全体で取り組み、日常の習慣を変えるスウェーデンの予防歯科のすごさを体感することができました。
また、見学させていただいた保育園、活気のあるマルメ・フェスティバル、ホテル近くの湖の公園、ルンドの図書館や植物園を散策してその素晴らしさを堪能し、また、女性の講師の先生方や街で見かけた生き生きと働く女性の姿をみて、スウェーデンという国・システムにあらためて興味を持ちました。
今回の研修には、山下スマイル歯科から私以外に歯科医師の山本茜と、歯科衛生士の矢下幸恵子が一緒に参加させていただきました。
今回学んだ事を歯科医院内で実践し、医院をよりレベルの高いものにするためには、私一人よりも、同じ事メンバーと一緒に実践し、他のメンバーに伝えていくことの方が効果的な事を、今までに何度も経験しています。
今回、研修に行く前にスウェーデンに対して抱いていたイメージがあった。それはスウェーデンとは予防先進国であり、国民全員が口腔に対する価値観が非常に高いというイメージである。しかし、研修を経て分かったことは、国民の口腔健康に対する価値が自発的に自然と芽生えてきたわけではなく、スウェーデンの歯科医師、そして国が協力して国民の歯を守る制度、習慣を作りあげているということだ。
1歳の頃から歯科医院への定期的な通院が当たり前となり(1〜19歳までは定期健診を含めた一般歯科診療が無料になっている)、そして負担額が発生してくる20歳以降も、健康に対する価値観が低くならないように、キャピテーションシステム(リスクに応じた保険料金)というものを導入し始めている。これらの保険制度だけでなく、現在はスウェーデン中のカルテデータを、オンライン上で共有するという計画が進んでいるそうだ。そのことで、国民の健康状態などが分析でき、さらに国民の健康に寄与することができるのである。
スウェーデンの口腔衛生の政策は常に進化している。現在は訪問歯科の需要が増えてきているそうだが、それもおそらく、将来の高齢化を見据えて分析した上での歯科全体の流れなのであろう。
また、口腔衛生指導に関して気づいたことは、常に最高レベルを要求する指導をするのではなく、個人のリスクに応じて、個人の決断や生活習慣を尊重してアドバイスがなされているということだ。決して無理強いをしないスタイルなのだと感じた。例えばフッ素洗口剤であれば、若者達がコスメティック目的で用いることができるように、息がさわやかになるようなミント味の洗口剤が医薬部外品として売られているし、市販の炭酸水にもフッ素が含まれている。ダン・エリクソン教授はポケットに入れて持ち歩けるように糸ようじ(指巻きフロスではなく)をすすめているようだ。国民が無理せずにいかに自分の生活習慣に簡単に取り入れられるのかを考えているのだと思う。国民はそう強くは意識していなくても(これは悪い面もあると思うが)、結果として自然と口腔の健康が守られているのではないだろうか。
そして治療の面では、保存修復、補綴などすべての手技に関して、エビデンスに基づき、有効性をランク付けしたガイドラインが作製されているようだ。このことにより、むだが無くより効果的な治療を選択することができる。予防が根底に根付いているだけでなく、治療もまたしっかりとした基準の上で行われている。予防・治療の両輪がうまく機能していることにより、スウェーデンの口腔健康は守られているのだと思う。
僕たち日本の歯科医師が、スウェーデンから学べることは何だろうか。国の歯科医療に対するスタンスは全く違うように感じる。僕は一番の違いは制度であるように感じたので、日本で歯科医療を行う以上、学べることは少ないように感じた。しかし、よく考えると、国は一人一人の国民により成り立っている。僕ら一人一人の歯科医師が、真剣に患者さんの健康を考え、うわべだけでない予防、エビデンスに基づいた治療を行っていくことにより、だんだんと日本の歯科医療も変わっていくのではないかと思う。日本での歯科医療を当たり前と思うのではなく、海外の優れた部分に目を向け、それを意識しながら日々の診療に取り組んでいきたい。
申し込み前から非常に大きな期待をしていたスウェーデン・マルメ大学研修が実現し、1週間に渡る充実した熱い研修を体感してきた。
その中でも、特にカリエスに焦点があてられており、ダン・エリクソン教授をはじめとする講師陣の誠実かつ知性、ユーモアあふれる人柄がとても印象的で、非常に中身の濃い研修であった。
どの講義も非常に興味深く、質問が多すぎてホワイトボードに書ききれないくらいであり、最終日の1時間半の質疑応答の時間も足りないほどであった。
現在私は、深在性のカリエスのマネージメント、いわゆるステップワイズエキスカベーションについて院内治療プロトコールの作成中であったので、アンダーソン先生によるステップワイズエキスカベーションの講義はとても興味深く、日々疑問に感じていたところ全てにおいて明快な回答をいただけたこともあり、非常に充実したものとなった。
スウェーデンでは400近くに及ぶ歯科治療全体におけるガイドラインがエビデンスベースで作製されており、1つ1つの手技の推奨度とその理由とその根拠が記されていることに驚き、日本でも実現したいと強く感じた。この素晴らしいガイドラインを早速、当院勤務医の先生と協力して翻訳し、当院の治療ガイドラインの作製におおいに参考にさせていただきたいと考えている。
また、加えて感じたことは、行政と歯科の協力関係と信頼関係が非常に強く、疫学データと今ある根拠を元にどんどん進化していることである。R2を用いたキャピテーションシステムと呼ばれるでき高払いではなく、リスクに応じた支払制度も国民の健康観の向上に大きく貢献しているのではないかと感じた。スウェーデン国民の歯科に対する信頼度も非常に高く、リスクアセスメントが何らかの形で全ての患者に行われており、歯科医院に定期的に来院しメディカルチェックを受けること、メインテナンスをリスクに応じた間隔で受けることが国民全体に定着していることも予防先進国と呼ばれる所以だと実感し、リスクアセスメントなくしての予防はあり得ないと言うことを強く再認識した。
1週間という短い期間だったが、実際に自分の目で見て、感じ、質問できたことの重要性をこんなに感じた経験はなかった。このような機会があればぜひまた参加したいと思っている。
これから、院内勉強会でのプレゼンテーション作成、そしてその後は院内での診断と治療のプロトコール作成で忙しくなりそうである。
今回、到着したら雨風が強く、寒かった。マルメは風の強い街であり、晴れていても時折雨や風が強いウィンディシティであった。しかし天候は一週間の研修期間で晴れ間の多いものとなって行った。
その前に成田空港で、熊谷先生からの出発にあたっての文をいただき、あらためて気を引き締めての出発であった。
そこには定期的に海外における最新の歯科医療の現場を視察し、研修を受けることで、日々の現場に埋没することなくグローバルスタンダードの感性、視座を磨くことの重要性を伝えてこられた旨がまず書かれてあった。日吉歯科から遠く離れた地で開業するものとして、その志しを忘れぬよう、そのまま書く。
言われていることは、私がこの所海外へ行く機会が増えて、ずっと感じていた事であった。今回行って、さらに強く思った。実際に直接人に会い、触れ、感じる事がどれほど大きな事であったか。
行く前にさっとみた諸先輩の感想文を帰国してからあらためて読んだ。講義内容を細かく書いてある文、感想、衝撃を受けた感動の文などなど、それぞれの先生の書いた思いと背景が何十倍も感じ取る事ができた。
細かくシステムを理解する事も、行かないと無理と思う。それにも増して、その基礎となった考え、歴史、そしてそれら現象の起こる大元である哲学を感じる事は、行かない事に比べ何倍も違うと思う。
私は日吉歯科に勤務した経験もなく、接点も少ないはるか遠い所で開業している者である。今回参加しない事にはこれから先、臨床をして行く事はできなかったであろうと思う。
受講生の皆さんは海外まで研修に来られる方々で、それぞれ大きな志や技術を持たれていた。講義の受講態度は極めて積極的で、講師の先生も圧倒されるほど質問が出続けた。最後のフェアウエルパーティでダンエリクソン先生から称賛をいただいた。
そのフェアウエルでのダン先生の最後の言葉は、セルシアス、続いてパッションと言われた。熱心、情熱という事。セルシアスと私には聞こえた。すなわちセルシアス氏(摂氏)、通訳の岩上さんは同義語のパッションが続いたので上記のように熱心と訳された。最後の言葉としてずっと心にとどめておこう。後で調べるとセルシアス氏はスウェーデン人であるとの事、そこから絡めて情熱を表現していかれたと思った。エリクソン先生はウィトに富み、ユーモアあふれる方。その表現も独特であったり、なぞかけがあったりであった。
続いて、最後の最後は、「みんなイワシの缶詰」であった。これはさすがにそのまま直訳!なぞかけで終わった。
今回、多くの疑問が解けた事が誠に大きかった。システムが直に見られたことも大きかった。さらに上記の事から、私の診療のターニングポイントになる事はまちがいない。
カリキュラムの組み立ては完璧であった。そこにあるべき時にあるべき物があるべき順番で構成されていた。週の中日は見学で外を廻り、体を動かすようになっており、ずっと座学でないよう考えられていた。
ダン教授は講義の途中、ウィットに飛んだ描写をされ、飽きさせず、引付け、そして真実を巧妙に語って行かれた。巧妙で緻密、冗談ぎみに数秒単位で開始、終了を指定されていた。オスカーワイルドの言葉もお好きなようで、数回出された。印象深い言葉として、“If you tell people the truth, make them laugh. – Otherwise they will kill you.”
これも大変腑に落ちた。
スウェーデンで歯科の現在のシステムを政府に導入させていく図では、過去の国の偉人の銅像を出され、それをマリオネット人形のように操っている自分の手の図を出されて皆にうけていた。
知識と情熱を正しい方向へ使い、しかも真実を語り、行う時は、上記の言葉のようにふるまう、抜け目のなさ。
政府をマリオネットのように動かす。賢く。しかしそこには膨大な量のデータを蓄積するシステムを考えだしている。WHOに準じた公衆衛生のデータ収集が瞬時に積み重なっていくコンピュータシステムが構築されている。キャピテーションモデルしかりで、診査、診断して行けば、オートマティックに蓄積されていく。それを決めるassessment systemはエビデンスを元にして極めて真面目に作られている。しかもそれを作成する過程に膨大な労力を費やしている。システムの中心はダンエリクソン教授である。何と聡明な事か。
全ての物にこれから私のお手本となるものがちりばめられていた。
現地に住む知り合いから、スウェーデン人は研究づき、そして実証好きと聞いていた。その風土が強く感じられた。旅行に際し、歴史も知る良い機会になった。講義でも述べられていたが隣国とは、日本と隣国の例を挙げ、似たような関係とユーモアを交えて語られていた。歴史を調べると、併合したり、大戦の時わざと中立の立場をとったりと、人の良いだけでなくクレバーな戦略もとられていた。
知識を持って深い戦略のもと、知識を技術を、良い面へ使っていく。その根本となる哲学に基づく理念。志は高く、洞察は深く、戦略は深い深い底から。すべての知を良い方面へ使う。
最後に、今回人と人とのつながりを大切に思い、沢山の立派な先生、受講生の皆さんと知り合いになれたことは大変良かった。
歯科医師の免許を手にしたものの知識や技術を得てきれいと言われているようなな治療をしても、従来型の歯科治療に対し違和感を覚えながらそこから脱却できずにいました。しかし偶然、熊谷先生の講演を拝聴し「真の患者利益の追求」という言葉に魂が震えました。そして、患者にとって本当に価値のある正しい歯科医療の世界とその奥深さを知り、驚きと共に挑戦してみたいと思い、開業と同時の2011年にオーラルフィジシャンセミナーを受講しました。そしていつかは行ってみたいと思っていたスウェーデンをオーラルフィジシャン研修という最高の形で訪れる事ができた事に感謝しております。
今回の研修に対しての目標としては
・真のカリオロジーを学び不足している知識を補い臨床に反映させる
・実際にスウェーデンという国、人間が何を考え大切にしているのかを感じ取る
・歯科医療の本質とその考え方を知り自分の本当に求めている歯科医療を探すキッカケを見つける
以上をあわせ今後の自分の歯科人生に影響を与えるような研修にしたいと思っています。
結果として今回のマルメ研修は予想を遥かに超え、大変有意義な海外研修となりました。
北欧はスウェーデンのマルメ大学で同じ志を持った仲間とインテリジェンスとユーモアに溢れた講師陣に囲まれ最高の雰囲気で講義を受け、良く聴き、考え、質問し、知識を深めながらさらに学んでゆく。こんなにも学習することが純粋に楽しく思えた事はありません。そのため不足していた知識や解消された疑問は身体の一部となり次々と吸収されるような感じでした。それも研修での目的が明確で、緻密に組まれたプログラムをダン・エリクソン先生をはじめとする講師の方々がリードし研修生とそれをサポートしてくださる方々も一緒に研修の目標に向け迷わず進めたからだと思います。
そして治療方法、リスク評価、メインテナンス、学習・教育方法、ナショナルガイドライン、キャピテーションモデル、保険制度など講師は違えど講義を受け共通して感じられたのが全ての内容が誰のために、何のために行われているという目的が明確なことです。
マルメでは街中を見渡しても多くの事が合理的かつどこか人としての温かみを感じられました。また国全体で人が人として生きるために当たり前の事が当たり前に行われている。どこでも何でも目的や優先事項が明確でむだを感じさせないつくりと仕組み。夕方になれば18時に店を閉め、プライベートで家族や友人との時間を大切にする。大学の方々も、ホテルや街で出逢う人々も皆さん優しく穏やかで温かみが感じられました。
全体像として捉えるとすべての歯科医療は患者のためにという根本にたどり着きます。当たり前の事ですが医療は人と人の間に在るものでした。それが日々の診療や、学習においても疾患やデータなどに集中するあまり治療を受ける患者に気持ちが行き届かなくなることがあるかもしれません。
今回の研修において、全てのプログラムを受けながら自分は歯科医として何をするべきか? 何がしたいのか? ということを終止問いかけられている感じがありました。
帰国後に振り返り何か変わった事は? と考えると、根本的な何かが変わってしまう様な事はありませんでした。同じく正しい歯科医療を行いたいと思っています。
ただ以前は気づかなかった気持ちが少しずつ大きくなって行くのを感じます。
それは歯科医療に対しての自分の心の在り方ではないかと思います。
それは人と人の間にある純粋な温かい医療を行いたいという気持ちです。
私たち歯科医療従事者は何を思い、何のために何をするべきか?
凝集すると「真の患者利益追求」という言葉でまとめることができるかもしれません。
今回の研修ではその源泉に触れ心に大きく温かいものが宿った感じを得ることができました。
今回のオーラルフィジシャン育成セミナー海外研修は、私にとって4回目となりました。過去3回は院長と一緒に参加させていただきましたが、院長は2007年にスウェーデン研修を受講しているため参加資格がなく、今回は私一人での参加となりました。沢山の不安と希望を抱えての旅立ちとなりましたが、本当に決断して良かったと思います。
2007年に院長がスウェーデン研修帰国後、私たちひるま矯正歯科はメインテナンス型の歯科医療を提供する歯科医院に変わりました。当時何も解らなかったスタッフ全員は、院長のとにかくやらなければならないという強い信念のもと大改革を行いました。本当に大変なことではありましたが、個室を増設しすべての患者さんに唾液検査を行い、MTMを始め定着することができたのもスウェーデン研修の成果だと思いました。
MTMが定着してきて最近の私は「歯を削らないこと」「歯を治療しないで経過を診ること」を患者さんに伝える難しさを感じていました。今回の講義を受けて私自身治療しないこと(手を加えない事)に対する達成感を脳がまだ感じきれていない事が解りました。充填すれば、報酬が得られる。きれいに形成できたことが手にとって解る。削らない事での健康維持では結果が解るのが遅い。このような考えはスウェーデンの歯科医師も同じように考え、もう一歩深く考えることをしなければいけないということを知りました。
衛生士教育では、ルバーブを例にとりPBLの学習方法を伺いました。私はPBLが初めての体験でマルメ大学の教育水準の高さを実感しました。これは是非当院でも参考にしたいと思います。
隣接面Ⅹ線読影では、治療すべきか? 経過を診るべきか? 沢山の先生方と一緒に考える時間が持てたことはとてもいい勉強になりました。また隣接面のカリエスにおいては、フロスが有効か? 否か? の議論ではオーラルフィジシャン達の底力を見ることができました。マルメ大学の先生方を相手に一歩も引かず、フロスの有効性を逆に伝えようとするなど今まで勉強してきたことの大事さ、同じ考えを持った仲間が沢山いることを嬉しく思います。
研修期間中は毎日大学の教室に通い、自分の机があり学生に戻ったような気持ちでした。私の机は教室の一番後ろでしたが、参加者全員居眠りしていませんでした。(もちろん私もです。)修了証と卒業バッチは私の一生の宝物です。
スウェーデンは、予防先進国で、日本より修復の数が少なく、国民皆が自分の口の中の意識が高いイメージが勝手にあったのですが、国民性が勤勉ということがあるものの、歯の関心が日本と比較して異様に高いわけでなく、日本同様だと感じました。しかし、その国民の口腔の健康向上にむけて、ダン先生がた皆さんが常に考えておられ、それを国民にむけて実行されておられる結果がこれなのかと思っております。
スウェーデンのガイドラインや予防を料金体系に反映したCapitation modelsなど世界に先駆けて行っていくことは、すごく大変な作業とおもいますが、良いことをより良くするために実践していく仕組みができ、実践できている事に日本との違いを感じました。
フッ素の使用、カリオグラムについて、また、PBLという教育システムや禁煙をはじめとする生活習慣の改善に対する行動変容の重要さ、高齢化に対する問題等、ダン先生が研修の目的に挙げられた、知識の確立、新たな知識の獲得、新たな世界観をえることは、幾ばくかは自分の中でできたという達成感、加えて意識レベルの高い先生方、衛生士さんとの交流もさらに広げることができ、本当に実りの多い研修会だったと感激しております。マルメ大学の皆さんや日本の関係者の方々の協力のもとに今後もこんような研修を通じ、他の多くの先生も感激される機会を得ることを希望します。個人的にもこの良い研修の受講を通して得たことを、患者さん、スタッフ達、そして日本の歯科医療に 還元していこうと思っております。
今回のマルメ大学での研修は、2007年9月の第1回、2011年の6月の第2回のマルメ研修についでの、第3回目の研修でした。
私が、オーラルフィジシャンセミナー受講時から、いつかは参加したいと思い続けてきた研修です。
出発前の成田空港での結団式では、熊谷崇先生から
「今回の研修には一個人として参加しているのではなく、日本の歯科医療が本当の意味で国民にとって有益なものになるために変革しようと取り組んでいる歯科医師、歯科衛生士の代表として参加しなさい。」とのメッセージを頂き、熱い気持ちを持ってマルメに向かいました。
初日の「Introduction and focus of course」でD. Ericson先生より本コースのゴールを示して頂き、それは
To confirm knowledge
To add knowledge
To get new perspectives
でした。
また「The essence of dentistry」では
「知性の高くない人間は即時報酬を求めているため、健康の維持(変化が起こらないこと)には、達成感や楽しさを感じない」
「そのため、予防をエキサイティングでない考える人が多い」
予防先進国のスウェーデン以外の、日本を含めた多くの国の歯科の現状であろうと思いました。
2日目の、Ingegerd Mejare先生の講演は「Caries progressin rates」
名誉教授で80歳を超えたご高齢にも関わらず、エビデンスに基づいた分かりやすい講演でした。
私が、普段臨床で疑問に思っていたカリエスに進行速度、それに関係する要因、どの時点で修復治療を行うのかなど、これからの臨床に非常に役立つ内容でした。
3日目には、公立の歯科医院、幼稚園を見学し、高齢者の訪問診療を行っているOral Careの話しを伺い、実際の器材も見ることができました。
予防が進んでいるスウェーデンでは、高齢者でも残存歯が増えており、高齢者への歯科治療の需要が増しています。おそらく日本でも小児からの予防が進むと高齢者の問題、根面カリエスであったり、咬耗、破折などの問題が増えてくることが予想されます。
4日目には、スウェーデンの歯科衛生士の力量やナショナルガイドラインに基づいて日常業務が行われていることも知りました。また、「Work stations」では、A Hedenbjork-Lager先生に「Stepwise excavation」の勘所や疑問点を直接伺う事ができました。
また、学生実習室や病院内も見学させて頂きました。
最終日の、ナショナルガイドラインやキャピテーションモデルの話しも非常に興味深い内容でした。D. Ericson先生のスライドの中に、政府を操っている絵がありました。ボー・クラッセ先生、ダブラス・ブラッタール先生、アクセルソン先生、そしてダン先生など多くの先生方の長年の努力の結果が、現在のスウェーデンの制度であり、それが国民の口腔の健康、全身の健康に反映されています。
ダン先生に「日本の保険制度では、私たちはどのようにしたら良いでしょうか? 」と質問した所、「15年寿司を食べて頑張る」とのジョーク混じりのご返事を頂きました。
最後の懇親会でも、ダン先生から「passio&intensity」と言う熱いメッセージを頂きました。
改革は一朝一夕にはできませんが、日本国民に真の歯科医療を提供するオーラルフィジシャン診療所が全国に増え、スウェーデンに追いつき追い越す日を夢見て、私は、浜松で頑張ります。
今回の、マルメ研修では、全国の多くの歯科医師、歯科衛生士の方々とも知り合えました。全国に沢山の同志がいることを実感しました。
この研修では多くの著明な教授陣のレクチャーを受けることができ本当に有意義な時間を過ごすことができたと思います。
その中でも一番興味深かったのが、名誉教授でいらっしゃるI Mejare先生の講義でした。臨床において、カリエス病変に対していつ介入するのかは、頭を悩ませる問題です。日本ではカリエスが進行する時間軸を考慮することがまだ一般的ではないように思います。病変がどのようなスピードで進むのか、どのようになったら、介入していくのかをわかりやすく教授していただきました。
先生はおそらく一番ご高齢かと思いましたが、日本ではあまり語られていないところの話を聞くことができました。もし可能であるならばぜひ来日していただきご講演をしていただければと思いました。
このセミナーのもう一つの目的はスウェーデンの歯科診療、歯科事情を肌で感じるということだったと思います。地域住民の口腔に対する健康感はどうなのであろうか。
町を歩いていて思ったことは、歯列不正の人が極端に少ないこと。
矯正治療が必要と思った人は滞在中にわずかに1人だけでした。(セントラル駅のコンビニのレジ係)それから、口呼吸をしている人が1人もいなかったこと。日本では大人でも“口ぽか”の人がいますものね。これは環境のためでしょうか? 歯列不正のせいでしょうか?
とても残念だったのは、喫煙者が多く目についたこと。街には吸い殻が散乱していました。日本ではこれはありえない。ホテルでは室内で喫煙することができないので外で吸うように指示がありましたが、公共施設でも屋内で吸うことはできないので屋外で吸っているのでしょうか?
正直なところ、スウェーデン人はとても健康観が高く多くの人がメインテナンスに通い、むし歯は少なく、高齢者においては残存歯が多く口腔機能は十分に働いている。子どもたちもむし歯が少なくみんな歯並びも素晴らしいと考えていました。ギリシャのナイスガイもそう思っていたようです。(ギリシャのナイスガイとはStavropoulos先生のことで、教授陣の中でお一人だけスウェーデン人ではありませんでした。ですから、理想郷としているスウェーデンに対して私達と同じように期待をしてみられていたかもしれません)
実際のところ、中高年以降のスウェーデン人の口腔内は理想どおりではなさそうです。もちろん無歯顎率は5%以下でこれは世界的に見ても素晴らしい数字だと思います。スウェーデンでも高齢化が進み、治療を受けられない人々が増加しています。このことがいまの課題となっているようで往診システムの構築がなされて、今回もオーラル・ケアという往診専門の会社システムの紹介がありました。
今の中高年の人達は子供の頃に無料の歯科サービスを受けられていないわけでその方たちが高齢化していろいろ問題が出てきていると思われます。
19歳までの子どもたちは無料でメインテナンス、治療を受けることができますので恵まれています。無料の歯科サービスの年齢を上げようという動きがあったり、キャピテーションシステムで若い世代の歯科受診率を上げようとする目論みは、歯科治療(ドリリング)の介入時期を遅らせることにつながると思われます。自然と歯が残る。健康が維持できる。
歯科関係者以外の話が聞けたのは保育園の先生だけでした。
保護者の子供の歯に対する意識は高いように思われました。おやつへの親の希望は、甘いものはやめて欲しいということでした。これは日本でもそうだろうと思われます。しかし昼食後の歯磨きはされておらず、日本のほうがシビアでしょうか。
ダン先生も一日2回、2cmの歯磨剤を使用し2分間磨くことを推奨されていますので、昼食後の歯磨きは必要無いのかもしれません。
スウェーデンの一般の人たちは日頃からさほど歯のことに関して気に掛けていないのではないかと思えました。しかし口腔の健康が保たれているのは、成人になるまでの歯科サービスが充実していること、市販の歯磨剤に1450ppmのFが配合されているため知らず知らずのうちに健康が保たれているのはないかと思われました。もちろんメインテナンスに通われている方も多いのでしょう。
最後に日本の将来について、日本の保険制度が崩壊するのは
おそらく現実的なのでしょう。その中でどのように日本人の口腔の健康を守っていくのか。ダン先生のスライドに政治家を操り人形のように操るものがありました。そうできると良いですが、困難です。
多くの小さな声を永く上げ続けることが大切でしょうか? まずはひとつの診療所から地域の人達の健康を守っていく。これに尽きるのでしょうか?
今回のセミナーには多くの若い歯科医師の方、衛生士さんが参加されていました。とても心強く思いました。私達も負けずに頑張りたいと思います。
1987年に医科歯科大学で熊谷先生のコースを受講して以来、個室診療室を作ったり、歯科衛生士の雇用に柔軟性を持たせるなど、予防メインテナンスをコースで学んだことを実践してきました。
また、今まで1997年、1998年にフィンランドのTuruk 大学で、2000年代には、スウェーデンのイエテボリ大学の先生によるカリオロジーのコースを受講してきました。
しかし、今回は、それらのコースをはるかに上回るものでした。
カリオロジーについて、こんなにわかりやすく教えてくれるコースは初めてで、質問にも親切で的確に答えてくれて、とてもためになりました。
通訳の方やスタッフの方が親身に仕事をしてくださり、とても感謝しております。
また、参加している方がとてもまじめな方ばかりで、食事のときにとてもためになるシェアをすることができました。
それから成田空港での結団式で熊谷先生からのメッセージが読み上げられたのは、強烈でしたが、続けて発表された 「日吉歯科の勤務医の外部研修での決まり」は、早速 原田歯科でも取り入れることにしました。
今回のマルメ研修は、3回目の開催であり、ようやく参加が実現した。今回は、本院の歯科衛生士を帯同することができ医院の今後の戦略にも大きい効果を期待している。本院も早いもので開業して14年を迎える。その旅路は、けして順風満帆なものではなかったし、本年4月よりメインテナンスを自費に移行するという、ビジネスモデルの変更を余儀なくされたこともあり、今後も経過を慎重にみていく必要を感じている。
熊谷先生との出会いは今から19年前に遡る。当時は、東京によく来られ様々なセミナーを開催されておられた。私は、勤務医をしていたが、将来自身が開業するときは、経済合理性と公共への貢献を両立したかたちで歯科医療を展開していきたいと考えていた。そうした中、熊谷先生は、私のイメージしている方向性をすでに実現されており、そして止まることなく前進されておられた。
私は、人として全うに生きるためには、人様のお役にたって初めて、生まれてきた意味を感じることができると思う。そうした医療をできる制度改革がなぜ日本ではできないのであろう。スウェーデンにおいては、なぜ改革がおこりそして歯科業界ならびに国民のコンセンサスを得られるのか。私は、千代田区永田町で開業しており与野党共に患者として多くの政治家が来院している。勿論、メインテナンスもしている。
彼らに、予防の重要性を幾度となく説明しているが、民主主義国家において制度改革は多数決であり、歯科医の過半数が予防医療への取り組みを信任し、マスコミも含め国民にとってそれが最善であると認められなければ改革の実現は難かしいと告げられた。
つまり、まず「隗より始めよ」という訳である。熊谷先生のご尽力も、もう30年位になるのであろう。その間、この錦の御旗に賛同された歯科医はどれぐらいになったのであろう。まったく、頭の下がる思いである。10万の歯科医の半分の5万人以上が予防に取り組む前におそらく国民皆保険は崩壊するであろう。
私も含め今回参加された方々も「トップダウンでどうにか変わらないものだろうか。」と思っているのではないでしょうか。
現実は、そんなに簡単にいかないのでありましょう。
私は学校教育の段階で、予防が進めばほとんど不必要になる頓珍漢な治療技術を教えるのではなく、未来を見据えた新たなビジョンの教育が前面になされなければならないと切実に思う。
私は、47才である。子供が3人いる。彼らや孫達の時代に健全な制度のもと歯科医療が行われていなければ不幸である。
熊谷先生ならびにダン・エリクソン先生そして多くの良き指導者に導いて頂き今日臨床に携わっている。これからも、同志と共に、業界のよき先導役となり、後輩達にそれを継承し、またイノベーションしつつ前に進んで行こうと考えている。皆さん一緒に頑張って参りましょう。
スウェーデンと日本の社会構造の違いが印象的でした。
”持続可能な社会”を目指すスウェーデンでは、商業アーケードでも比較的早い時間に閉店する店舗が多く、日本人にとっては”不便”と感じる、本来は常識的な 社会通念が存在することに、今日の日本の生活を再考させられました。スウェーデンは基本的に夫婦共働きの社会のため、育児に対する行政のサポートが充実しており、子供を預ける施設を母親が自分で探す必要はないようです。見学に伺った幼稚園の生活環境は素晴らしく、おやつも安易にお菓子や飴を配るようなことはなく、施設内で調理したホットドックなどを、決められた時間に与えるとのこと。
常識的な時間に終業、帰宅ができて、就業中も安 心して子供達を預けられる社会の恩恵により、親は子供達と良好に関わり、子供達が健やかに育つ環境が整っているスウェーデンに対し、日本ではどうでしょう。働く母親が子供を預けることができる施設が不足していることで、祖父母に預けておやつ食べ放題の状況にある家庭が少なくありません。
スウェーデンの子供達には、幼少期に健全な生活習慣(食生活やブラッシング、口腔ケアの習慣)を享受できる環境があります。そうして得られた健全な生活習 慣と歯磨材に添加された十分な濃度のフッ化物が、スウェーデンのOral Healthの基盤ではないでしょうか。その基盤がある前提で、歯科医師はMinimal Intervension(MI)のコンセプトを実行できるのであり、ただ、”削るのを控える”だけではないと理解しました。
私はマルメ研修で、齲蝕をはじめとする口腔疾患の予防の本質は、健全な生活習慣の確立であることを再確認しました。これは、子供達を数か月ごとに歯科受診 させてフッ化物を塗布する、”いわゆる予防”とは全く異質のものであると思います。我々が診療所で行っている歯に良い生活習慣の指導を、社会を通して自然 に学べる環境を整えたことが、スウェーデンで歯の保全が成功した本当の理由ではないでしょうか。
国民に信頼されている職業である歯科医師、一方では診療内容やそれを取り巻く衛生状況にまで疑いをかけられる職業である歯科医師という立場。治療を受ける立場である患者からの視線が全く異なること。ここに現在における日本の歯科とスウェーデンの歯科との間にある差異を一番感じた。
もちろん日本においても尊敬される先生方は多数おられるが、患者の立場から見たとき信頼できる歯科医院がどれくらいあるのか。あちこちの歯科医院を転々とする患者、前の歯科医院の批判をする患者等と対峙した時歯科医師の立場の低さを感じずにはいられない。もはやサービス業と変わらない患者優位の状況。医療がサービス、患者をおもてなしする。もちろんていねい、親身な対応は必要であるが、おもてなしする医療これが日本の現状と感じている。理想論だけでは経営は成り立たないのでサービスの追求をもせざる得なくなるのも本来の歯科医療に対するモチベーションの低下も招いている気がする。
根底には国民に対する口腔衛生環境の啓蒙活動や予防に重点をおいた歯科治療におけるデータの収集が国家的に行われている事が国家間の違いとして一番大きいとは思ったが、それを言い訳にして諦めていては現状は変わらない。自分にできること、自分が今後歯科医師として何をしていかなくてはならないかを考えさせられた。日本とスウェーデンでは保険制度の違い、経営モデル、国家的な歯科医療に対する相違で一概にスウェーデンモデルを模倣する事は日本では困難であると思われるが、日々新しいEBDを実践することにより少しでも理想のモデルに近づくことが必要であると感じた。
スウェーデンに比べ溢れるほど存在する日本の歯科医院の中で生き残っていくためには経営も考えていかなければならない現状ではあるが、医院利益追求だけではなく真の患者利益の追求を考える歯科医師が増えることが国を変えていく(変わるかは分からない・・・)パワーになるのではないかと思った。
何をしていけばよいか、簡単に答えがでる事ではないが地域の口腔衛生環境の向上、歯科医師の信頼の向上に向けて必要なことは自己研鑽。
帰国してみると、あっという間の研修期間でしたが、人生の半分位を過ごした感覚に陥る
程マルメで長く過ごしたように思えます。
私自身、いろいろなことを考えながらこの研修に参加しました。そして、1日目、2日目が終わるにつれて、更に深く考え(深刻化し?)、しかし実際に公立の歯科医院、幼稚園等の見学をさせていただき、その後の講義を受け少しずつまとまっていきました。
私たち歯科医師は、というか、人間はひとりひとり考えも、思想も、性格も、行動様式もまったく同じという人はいません。それは歯科医療従事者だけでなく患者さんも含めすべての人においてです。患者さんが歯科医院で受ける処置内容はほぼその医院の院長の判断にゆだねられると思います。どんな診査を受けどんな診断を受けそして予防的な処置も含めどんな処置を施されるのか。受ける側の患者さんの背景や行動様式もそれぞれ違います。
あるところでカリエスと診断され治療を受けても、あるところでは予防的な処置でふみとどめられるかもしれません。
大切なのは、私たち歯科医療従事者は、エビデンスに基づいた診査、診断を行い、常に最新の知見と技術を持って、人間の良心に基づき、思いやりを持って患者さん一人一人に対して人として、医療者として向き合う、そういったことをあらためて感じ取った次第です。
それは、スウェーデンも日本も世界のどこにでも同じようにできるはずですし、なされるべきことです。
そして、ひとりでも多くの歯科医師、歯科衛生士、すべての歯科医療従事者が、日本の歯科医療をもっともっと発展できるよう必要なことに気づき、動き、変わっていくことを心の底から願い、私自身も歯科医師としてひとりの人間として、今回マルメ研修で得た知識、感じたものを忘れないように、今一度初心に立ち返り明日からの診療に生かしてゆきたいと思います。
今回の研修に参加させていただいたことは幸運でした。
初めてのスウェーデンでした。
スウェーデンは今まで雲の上の存在というイメージでした。
ブラッタール先生、リンデ先生、ブローネマルク先生など歯科医療のすべてはスウェーデンが発祥ではないかというくらいイメージ先行でした。
5日間の研修を終えて感じたこと
まずはスウェーデンの街並みのきれいさ。スカンジナビアンデザインとはこういうことかと感心しました。そしてスウェーデン人のデカさ!女性で普通に185㎝くらいあります。街に出ると結構ジャンクフードが目につきます。スーパーマーケットでは日本でもあまり目にしないような毒々しい色のお菓子が量り売りで売っており、大量に買っている人をよく見かけました。歯ブラシコーナーに行っても大した歯ブラシは売っていません。スウェーデン人はこの程度なのか? というのが最初の印象でした。
ところが大学と政府とクリニックは違いました。
カリオロジーの講義とクリニック視察と医療システムの講義を通して、スウェーデンがスウェーデンたる理由がわかりました。
日程的には、プログラムが非常に綿密に練られているのを感じました。
詰め込みすぎず、考える時間を与え、休憩を長く取り、ディスカッションの時間が多い。
日本で受ける研修と全く異なるものでした。
2日目が終わって次の日に市内の視察に出たのも後から考えると絶妙なタイミングでした。
あのまま時差ボケと緊張の中で3日目に突入したら講義中寝る人が続出したかもしれません。
講義内容では、初期齲蝕に対する考え方が研修前と研修後で大きく変わりました。
カリエスの内部構造、進行の過程、修復治療をしてもカリエスに罹患しているということ、発症は発見のはるか以前であること、根面カリエスについて・・・。
こんなに「むし歯」について深く考えたことはありませんでした。
帰った次の日から診療だったのですが、今までとカリエスを見る目が違い、“削る”基準が変わったのを実感しました。
また、ここ数年いわゆるフッ素否定派の人たちの過激な投稿をネットで目にしており、自分の中でもフッ素に対して自信が持てずにおりました。
しかし、今回スウェーデンに行き、フッ素に対する曖昧な不安、不信感? が払拭されました。自信を持ってこれからもフッ素を日常臨床に取り入れていきたいと思います。
講義を飽きずに聴けたのは内容の濃さと素晴らしさだけではなく、エリクソン教授の人柄によるところも大きかったと思います。
非常に面白い方でした。
講義のはしばしにスウェディッシュジョーク? (ノルウェー、デンマーク、ドイツを揶揄したものが特に面白かったです)が出てきて楽しく受講できました。
人に何かを伝えるにはこんなに工夫が必要なんだと、自分のミーティングやプレゼンの仕方を反省しました。
また、カリオロジーの医局員の方々の仲のよさそうな所が印象的でした。
エリクソン教授とカールソン先生がおどけているところなど日本では見られない光景です。(教授と講師が・・・)
全体を通して、スウェーデンという国の素晴らしさを満喫できたとともに、日本との違いや問題点も自分の中で浮き彫りになりました。
最大の違いは政府(保険局)の国民の健康に対するスタンスだと思います。
スウェーデンの保険局は、国民の健康のことを真剣に考え、その対策に真摯に取り組み、結果を出していると思います。
それはもちろん優秀な歯科医師の支えがあってのことだと思います。
ウェルカムパーティーで同席したエリクソン教授がおっしゃっていた“スウェーデンで一番信頼されている職業は歯科医師だ”という言葉が忘れられません。
日本の厚生労働省は・・・・・・・・・。言わずもがなです。
制度だけでなく我々歯科医師にも問題があります。
近年の商業化した医院経営、分院展開、即時修復やデンタルエステ等は医療であるということをすっかり忘れてしまっているようです。
日本の歯科医師の、儲かる、外車に乗っている、高い、遊んでいる、自費を薦められる、というイメージはまるで悪徳金融業者のようです。
インプラントの見積書を出した時、「もうちょっとまけてくれない? 」なんて言われるのは日本くらいではないでしょうか?
この2点が日本とスウェーデンの決定的な違いだと思いました。
その中で、勇気づけられる面もありました。
日本の意識の高い歯科医師は決してスウェーデンの歯科医師に引けを取らないこと。
スウェーデンの国民も実は甘いものが大好きで、もともとそんなに意識が高くないのではないか???ということ。
決して雲の上の存在ではなく、頑張れば手が届くところにいるのではないか? ということ(差はどんどん広がっている気がするが)。
あこがれの国、スウェーデン。
決して遠い存在ではなく、やるべきことに真剣に取り組んでいる国。
政府が国民のために真摯に動いている国。
広い国土ときれいな景色とおしゃれなデザイン。
とても素晴らしい国でした。
あ、食べ物は日本の方が上ですね(笑)。
自分にとって初めての海外での歯科研修となった今回のスウェーデン・マルメ研修。自分にとって印象に残ることが多くありました。まず講義ですが、歯科医師として興味がある分野を、過去の論文を基にわかりやすく説明していただきました。日本のように教科書をただ読んでいくというのではないところが新鮮でした。また、スウェーデンの歯科医療について、現状と、導入を開始したキャピテーションシステム、ナショナルリスクアセスメントシステムについて説明がありました。学術や予防を日常臨床にうまく取り入れていこうとするシステムを作り上げているように感じました。
ただ自分が一番印象に残ったのは、システム自体ではなく、姿勢でした。前述のキャピテーションシステムやナショナルリスクアセスメントシステム、これは既存のシステムにいつまでも依存するのでなく、コスト意識を持ちつつ、最新の歯科医療に合わせて、改革、改善をしていった結果であり、それを大学の教授、講師陣達が国とうまく連携し、挑戦していく姿勢が素晴らしいと思いました。
これから日常に戻っても、日々の臨床に埋没することなく、この研修のことを思い出して日々過ごしていきたいと思います。
以前からカリエスリスク活用の先進国であるスウエーデンには興味があり、また強い財政・強い経済・強い社会保障を兼ね備えた国でもあるという点においても興味があったため、今回は迷う事なく参加の申し込みをした。
成田での団結式にて熊谷先生からのメッセージをいただき、始めての北欧ということで緩みがちだった気持ちにも活が入り、スカンジナビア航空は極めて快適ということもあり、11時間のフライトはあっという間だった。
デンマークのコペンハーゲン空港に到着した後、一路バスにてマルメへ。
EUは経済統合されており、ごく簡単なゲートをくぐっただけであっという間にスウエーデンに入国した。
次の日からはマルメ大学にて懇切ていねいな研修がスタートした。
非常にわかりやすい講義内容と適切な通訳のおかげで、最新のカリオロジー理論を余裕を持って学ぶ事ができた。
パブリックデンタルヘルスケアセンターや幼稚園では、実際の市民の方々がどのようなサービスを受けているのかについて職員の方から生の声を聞く事ができた。
お店はだいたい18時で閉店する。そして土日は閉店のお店が多い。そのような状況の中でほとんどの人たちは余裕のある労働環境を享受し、気持ちにゆとりがあるように感じられた。
晩餐会ではマルメ市長のお話も聞く事ができ、非常に大切な客人として迎えていただいたことを実感した。
楽しく、あっという間の研修だったが、最新の歯科事情を学ぶ事ができたのはもちろん、北欧の現状を肌で感じる事ができたことも、とてもよい勉強になった。同じ研修を受けた仲間と出会えたことも大きなプラスとなった。
スウェーデン出発前に「歯科医療のスキルやシステムを学ぶのではなく、歯科医療哲学を学んでほしい」というメッセージを熊谷崇先生より頂きました。これは、単なる自己研鑽ではなく、これからの自分の歯科医療をどう構築すれば、患者さんの真の利益に結びつく医療を実践する事ができるのかを考え学ぶターニングポイントとなる研修にしたいと心に誓い出発した。
本研修は、2014年オーラルフィジシャンスウェーデンマルメ研修の第3期として2014年8月18日から22日までの5日間、マルメ大学歯学部にて行なわれた。カリオロジー科教授Dan Ericson先生をコースディレクーターとして同大歯学部の全面サポートのもと企画され、日本からは多くの歯科医師、歯科衛生士が参加致した。研修前より既に日本から参加する歯科衛生士の意識の高さが私に多くの期待を感じさせた。
プログラムは、歯科医療の哲学、深部齲蝕への対応、PBL教育、メインテナンス等多岐にわたる内容の講義、パブリックデンタルヘルスセンター、訪問歯科オーラルケア社の講義、およびグループディスカッションから構成されており、エビデンスに基づいた講義に参加者は多くを学び、途切れない質問が寄せられた。
・カリオロジー
最少の侵襲で口腔の健康を維持させることを目的として、スウェーデンの歯科医療(Advance Dental Health)が行われていることが理解できた。
そのためデータ収集からリスクアセスメントを行い、う蝕に対してもまた国民の口腔健康の向上を目的として対応をすることが重要である事が示されていた。
患者はう窩処置を期待して来院する。しかしその一方で、処置した蝕の感受性がなくなる訳ではなく、原因が究明されれば、対策を施す事ができる。これは、既にG.V.Blackがう蝕とは何故生じるのか、リスクを考える必要性を示していた。我々歯科医は、過去から現在まで疑問も持たずにただ修復を繰り返してきた結果、スウェーデンでも治療の多くが補綴物の再治療であり、そして日本ではさらに多くの時間を費やして来た。タービンの誕生により、齲蝕の除去にかかる時間は大きく減少したが、多くの健全歯質の切削をもたらした。カリエスが1mm進行するため、1年以上の期間が必要であるが、タービンを押し当てれば数秒で1mm以上の窩洞を形成できてしまう。カリエスの進行は自分が考えているよりも緩徐で、象牙質カリエスができていても充填するのは良くないケースもある事に驚かされた。また、再治療もやり治しせずに、リペアすることを選択するべきと強調されていた。自身の診査、診断力を考えさせられる講義であった。発症を予防には、まずはカリオグラム等によりリスクを診査すること、リスク改善には高濃度フッ素が効果的であること。「健康な状態を維持することにお金を出せるのか、出せるように教育するのが歯科医療である。」と言うコメントに歯科医療の本質を感じ得た。
・ペリオドントロジー(インプラント周囲炎含む)
歯周病、インプラント周囲炎に対しては、多くのエビデンスを提示して頂いた。発症予防やメインテナンスを中心にインフェクションコントロールを重視した考えで効果が出ていた。子供の頃から定期的なメインテナンスを受ける事で、多くの患者は重度の進行する人はごく少数で、特にリスクが高い場合にしか起こらないという認識のもとリスク把握(全身状態、喫煙等も含む)が重要と考えていることが理解できた。
・学生教育(歯科医学教育、歯科衛生士教育)PBL
歯科医師よりも働いている歯科衛生士が特に輝いて見えた。医療制度やそれに伴い働く環境や待遇も異なるかもしれないが、教育が大きく影響を及ぼしているのではないかと感じた。スウェーデンの学生教育ではPBLを交えながら、知識と技術を相互に学んでいるということ。教えられるという形よりむしろ自分で考察することは実際の臨床下の困難に直面したときに効果を発揮できる。また教育側のスキルによって伝達結果も大きく変化すると思われので、教育者側のスキルアップやプログラムのバージョンアップと努力が必要と考えた。教育の中でDR、DH、DTがチーム医療の体系を組み、早い段階から患者さんをチームで持つことにより、コミュニケーションスキルの向上や、医療人としての心構え、他職種との連携について時間をかけてじっくりと学ぶことができる。そのため、スウェーデンの歯科衛生士は「歯科衛生士の役割」というものをしっかりと理解し誇りを持ち働いているように感じた。
当院は、臨床研修施設(歯科医、歯科衛生士)に登録され、教育にも携わっているのでこの教育システムをモデルに構築していきたいと考える。
・訪問研修
パブリックデンタルヘルスセンターと幼稚園を訪問研修した。福祉国家と聞いてはいたが、施設も素晴らしい環境であった。子供の医療費は20歳までは矯正治療も含めて無料。幼稚園を教育される人数やスキル、情熱も高く、その道のプロとしてプライドを持って仕事をされている事に感銘を受けた。
パブリックデンタルヘルスセンターを見学させて頂いた際にも、また最終講義でも詳しく説明を頂いたキャピテーション・モデルや歯科各分野のナショナルガイドライン、スコーネ県のパブリックデンタルヘルスサービスにおけるリスクアセスメントのためのクリニカルガイドラインなど歯学部やパブリックデンタルヘルスセンターで行われた臨床研究が国や県の政策に反映されていた。すなわち政策のために臨床研究が行われていた。歯科研究者と行政と良好な関係が築かれていると感じた。患者のリスクアセスメントを行いリスクの程度によって3グループに分類しリスクに応じてメインテナンス間隔や料金を決定した上で、メインテナンス中心の治療を受けることができるシステムがあり、高リスク患者に集中した対応ができることや経済的な効果もあるとのことなど、将来の歯科医療・医院モデル像を伺えた。
・まとめ
現地を目で見て地を歩き会話し肌で感じ取ることで国際感覚や広い視野を持つ大切さを実感した。現状として、スウェーデンの歯科と日本の歯科では大きな差があったが、数十年前まではスウェーデンも日本よりDMFTが高い時代があったのも事実だ。
残念ながら日本にはスウェーデンの制度と高濃度のフッ素は手元にないが、すでに効果のある手法は理解できている。
早期の介入からは良い結果を生まず、経過観察できる診療体系や医療哲学が重要であり、治療を行う場合には最小限のリペアを考える事。悩んだ場合は処置せず経過観察する事が重要である。最新の知識を生かし、スタッフや患者さんにも口腔の健康のための知識を与えていけば、必ず多くの健康な国民を育てることができると確信した。また、全ての患者さんにMTMを行いメインテナンスを行うことで真の利益に結び付く歯科診療をまずは目の前の患者さん1人1人に提供することができるようにこれからも日々精進していきたいと考えた。
私の今後の目標はアンダー20での情報提供と患者教育であった。予防には高齢者のメインテナンスも重要であるが、小児から若年期まで十分に患者教育行わないと意味がない。すなわち小児歯科専門分野の必要性を感じた。
申し込みをさせていただいてから、首をながーーーくして、もしや切れるんじゃないかと思うほど、待ちわびておりました。それほどまでに期待していたマルメ研修ですが、感動は期待を勝る素晴らしいものでした。
世界最先端の歯科予防に触れることが、自らのクリニックに今後どう影響してくるのか。高福祉高負担の国家の現実をこの目で見たとき、それはどう映るのか。二つの疑問と期待を胸に、スウェーデンへ旅立ちました。
まず、歯科医としての立場から、やはりスウェーデンの歯科医療のシステムは素晴らしいものだと実感いたしました。その中でもスウェーデン全21県中15県の公共の歯科医院が導入しているという予防のためのプログラム=キャピテーションモデルは素晴らしいシステムと感じました。私は、このシステムについて日本で聞いた時に勘違いをしておりまして、これは保険制度で成り立っているものと思い込んでいました。しかし、完全な自費診療で成り立つシステムだと知った時に、いかに自分自身が国の制度に依存した思考回路の中にいるのかということに気づかされました。私は今の日本の保険制度に疑問を感じるあまり、スウェーデンは素晴らしい保険制度があるに違いないと思い込んでいたのです。しかし実際は、とても国民は自立しており、高負担だから、何でも施せと言っているわけではなく、少なくとも歯科の制度に関しては20歳までの歯科医療費負担が矯正を含めて無料ということ以外には、自分の身は自分で守るという考え方が根付いているのです。それは、このキャピーテーションモデルがスコーネ県では44%という高い実施率だということからも明らかです。しかし、そういった予防に対する意識の高さは、子供のころの無料期間中に、医師、衛生士が密にコミュニケーションをとり、患者教育をさせていった結果ともいえます。
このシステムは、ぜひ、院内に取り入れていくべきシステムと感じました。少し形を変えながらも、自分の医院に反映できるような取り組みをしていきたいと考えます。
教育に関しても感心させられました。スウェーデンは医師歯科医師以外の職種(弁護士までも!)は国家試験というものがないそうです。衛生士ももちろんで、教育機関は臨床家としての教育を行い、即戦力はもちろんのこと、医療人としての資質の教育も行う。国家試験の合格率に翻弄された日本の学校とは明らかに違う、本来の職業訓練所の形がそこにはありました。
歯科の治療に関する考え方も日本は考えなければならないことを実感しました。スウェーデンで作られたデンタルケアのためのガイドラインは、エビデンスに基づき、すべての症状に対する治療行ためがどれぐらいの効果があるかを示し、最も治療効果のある方法を示唆します。日本では色々な治療が色々な先生によってなされます。本当に効果があるかもよくわからない治療方法でもテレビで放映されれば、次の日には患者さんはそれを求めて来院します。しかし、診療所に行けばその治療方法が場所によっては否定されてしまうこともあります。患者は何を信じてよいかわからず、そして、歯科医師も何を信じてよいのかわからず、世間に翻弄されています。ぜひ、こういったガイドラインは日本の歯科界でも実現されれば、歯科治療行ための正当性と統一性がもう少し整備され、それは日本の歯科の信頼回復にもつながるものだと思いました。
その他、実際の治療内容についての講義や実習も大変意義あるものでした。すぐに実践できる内容ばかりで、大変ありがたいものでした。ですから、感想を述べよと言われると、尽きなく話してしまいそうですが、最後に保育所見学で感じたことを。
今回のセミナーは講義、実習はもちろんのこと、公共の歯科医院、マルメ大学内研修施設、そして保育所の視察ができるという、歯科のセミナーではなかなかない、内容のセミナーでした。スウェーデンは待機児童の問題も少なく、日本は保育に関しても見習うべき点が多いとされています。しかし、根本的なところで日本とスウェーデンが違うことにも気づかされました。
それは日本で最も頭を悩ませている3歳児未満の待機児童の問題。これがスウェーデンで解消されている一番の要因は、2歳位まで両親の育児休暇が十分にとれるので、保育所に預ける必要がないということです。一番一緒にいてあげるべき時期に、退職することなく、両親が安心して育てることができる。こういったハード面の充実だけでなく、ソフトの充実によっても、状況の改善をはかるフレキシブルな発想に本当に感心させられました。これは介護の場面でも同じで、介護施設の増設よりも、家での自立支援に国が力をいれる、という考え方にも通じる部分だと思います。また、日本でも議論されている幼保一元化も早くから行われ、子供たちが就学前保育のなかで、テーマ学習をしっかりとされている点にも関心いたしました。
女性が働く限り、保育の問題は必ず解決しなくてはなりません。特に私たちが働く医療福祉の分野には女性が欠かせません。だからこそ、この問題も私たちが積極的に考えていかなければならない問題です。どうせ政治家が何もやらないからと言っているだけでは、今の日本は何も変わらないわけで、こういった勉強を国民がすることで、それを大きな声で政治家に訴え、それを聞いてくれる人に投票する。私たちにも動かせることはあると信じて、保育所を増やすといった改善策だけでなく、まだ考えられることはないのか。この問題に日本も真剣に取り組んでいただきたいと、強く思う視察となりました。
今回の研修は私にとって、一人の歯科医としても、一人の開業医としても、一人の国民としても、とても実りあるものとなりました。この経験を生かして、さらに外の風を取り入れられる柔軟性のある人間として、成長していきたいと思います。そして、これから日本の歯科のさらなる発展のため、まずは自院で私の目の前にいる人たちから、地道に着実に予防歯科の必要性を、一人でも多くの人に気づいていただけるよう努力し、そしてその成果が出せるようなクリニックを確立していくため、研鑽を積んでいこうと思います。
スウェーデン マルメ研修に参加して:東山デンタルクリニック:長縄 敬弘
以前より、オーラルフィジシャンセミナーや熊谷先生の講演会等で、スウェーデンでは個々のリスクに基づく歯科治療やメインテナンスが行われている事、多くのスウェーデン国民は定期的なメインテナンスを行っており、口腔の健康度が非常に高いと聞いていました。よって今回のマルメ研修は、それら伝え聞いてきた事が、本当にスウェーデンで行われているのか? また本当なら日本と何が違うのかを自分の目で確かめたくて参加させて頂きました。
レクチャーの中で最も印象に残っている所は、冒頭のエリクソン先生の
「歯科医師は予防で生計をたてるべきだ」との言葉です。
「多くの歯科医は崩壊した口腔内を美しく修復補綴した時に達成感を感じるが、残念ながら健康な口腔を長期に渡り守ったところであまり達成感を感じない」
「修復治療からの喜びはすぐに得られるが、予防からの喜びは何十年も後にしか訪れない。」
「未だに多くの歯科医師は削る事を好むし、患者も歯科医に早く削てもらう事を望むが、しかしせめて私達だけは、そうはしないようしよう」
この一言は私の胸を熱くし、またスウェーデンまで来て良かったと感じさせました。
5日間の研修のkey wordは正に「リスクアセスメント」にでした。マルメ大学では実際に、カリオグラムに基づき患者のリスクを評価し、メインテナンスや治療方針に役立てられています。また公立の歯科診療所で行われているキャピテーションシステムでは、患者のリスク評価に基づきメインテナンス間隔や支払額まで決定されるなど、何事にもリスクアセスメントを行い、患者にも医療者側にも解りやすく公平なシステムが確立されている事に非常に興味を持ちました。
スウェーデンが日本と最も違うと感じた点は、国家戦略と大学研究施設の考え方が一致している事です。綿密なデータを採取し、国民の健康とコストバランスが最も良い方法は何かを常に検証し改善し続けている事にあると感じました。
渡欧する前は、スウェーデンは高福祉高負担が故、ある意味、社会全体に停滞感を感じるのではと思っていたのですが、実際に行ってみると、皆で平和で公平な、未来に永続できる国を作って行こうという温かくまた前向きなポリシーを感じ、なんと民意の高い国民だと感銘を受けました。
この研修に参加し、あらためてこれまで学んで来て、またこれからもやり続けて行こうと思う事柄の確認ができました。そしてスウェーデン人ができているのだから日本人ができないはずが無いとも感じました。海外から日本を眺めていると多くの気づきがあり本当に参加して良かったと思います。
マルメ海外研修感想文:福田歯科医院:福田 幹久
8月17より24日まで、幸運にもオーラルフィジシャンマルメ研修に参加することができた。今回は総勢60名近くと大変大規模な研修となった。自身にとっては初めてのヨーロッパ滞在ということで少し緊張しつつ、集合場所の成田空港に向かった。
成田空港では、研修団の団結式が行われ、熊谷先生の有難いお言葉を頂戴し、期待を胸にスカンジナビア航空でコペンハーゲンに向かった。飛行時間約10時間の後、コペンハーゲンに着いたわけであるが、まず現地の気温の低さに驚き、北欧に着いたのだなと即実感させられた。コペンハーゲンからはバスで巨大な橋を渡りスウェーデンに入国、マルメに向かった。マルメでの初日は、ホテルチェックイン後にレセプションパーティーが行われ、翌日からの研修を共にする先生方や、衛生士の方々と親睦を深めることができた。
そうして翌日から、連日の研修が始まったわけだが、まず、この研修を実現してくださった、ダン・エリクソン教授初めマルメ大学の関係者の方々、各見学先の方々、コーディネーターの加藤先生、熊谷先生をはじめとした日吉歯科診療所の皆様、オーラルケアの大竹社長、トップツアー、シロナの方々に厚く御礼申し上げたい。研修内容は多岐にわたったが、主に4つの柱からなっていたように思う。
1つは、衛生士の教育、業務内容についてで、これには日本と大きく違う点があった。スウェーデンでは、衛生士は倍率が10倍近い大人気の職業で、当然収入も高いということである。このような環境の中で、より優秀な人材が衛生士となり、さらに良い仕事を実践していくという好循環を作り出す体制が制度としてでき上がっているように思われた。さらに、教育方法も日本のように机を並べて、使えるかどうかわからない知識を詰め込み、臨床に触れるときは、どこかのクリニックで短期間見学かアシスタントの介助というような本来の衛生士業務とは程遠いというものではなく、スウェーデンではPBLを取り入れ、必要とあらばDr,DTとも協力してチームアプローチを実践し、臨床に即して知識・技術を習得するという臨床に側したものであった。さらに、スウェーデンの衛生士事情で特筆すべきは、その離職率の低さである。結婚子育て、育児休暇後も復職率は100%であり常識的に、衛生士が家庭と仕事を両立できる環境が整っており、働く衛生士側も離職という選択肢は初めから持っていないといった感じであった。やはり、担当衛生士がメインテナンスを行うには、一人ひとりの衛生士が長期間現役でいられることが大前提であり、その方が、人材も高度に成長できるだろう。日本では衛生士の離職率が高くなっていることを考えると、一人の衛生士がある程度成長しては離職し、また次の人員を教育してまた離職という、同じところを行ったり来たりする様になってしまうことも、非常にもったいない感じがすると思った。日本でも、衛生士の就労環境と、衛生士の就労概念が成熟するべきで、そうすることでより多くの優秀な人材が育つのではないだろうか。
2つは、カリエスリスクとカリオロジーであった。まず、オーラルフィジシャン診療室ではルーチンに使用しているカリオグラムであるが、文献をもとにカリオロジーの妥当性の評価があり、やはり将来のカリエスを予測、カリエスリスクを把握するにはカリオグラムは信頼性の高いリスク診断ツールであることが確認できた。カリオロジーについては、カリエスリクスのマネージメントと同様、生じてしまったカリエスをいつ、どのように処置するのかということも大きな問題である。MIという概念が日本でも表面的に浸透してきたように思われる。実際の臨床でも最も議論される部分の一つであるが、今回の研修でも度々テーマとなっていた。その結論として、ダン・エリクソン教授初めカリオロジー教室の講師の先生方は、治療介入するべきところを豊富な臨床例とともに楽しく教えてくださった。そして最後に、介入の是非や、処置のタイミングを議論できるのは、定期メインテナンス下にあり、リスク診断によりリスクを把握、マネージメントできていることが大前提であるとおっしゃられた。やはり、その通りであり、歯科修復処置におけるMIの概念は、単に一時点で削らない治療しないということではないので、日本における定期管理、リスク診断のない表面上のMIに危険性を覚えた。やはり、定期メインテナンスとリスク診断に基づくMIが整って初めて、患者利益の実現になるのではと再確認できた。
3つめは歯周炎とインプランンとについてである。
やはり、歯周病やインプラントに対しても、カリエス同様に重症度とリスクの二本の柱に対してアプローチが行われているように感じられた。オーラルフィジシャンはぺリオの診断については、OHISをルーチンに用いているわけであるが、この点ではOHISは重症度とリスクを分けて数値化して診断できるので大変優れたものだと思った。やはり、歯科治療は、カリエスもぺリオも、重症度とリスクという二つの指標のもとにDR,DHがチームアプローチするべきものと再確認した。
4つめは、歯科治療を取り巻く社会情勢として、地域歯科診療よと幼稚園を見学させていただいた。地域歯科診療所は公的機関として運営されるものであるが、ここでもR2とT4 という診療データ管理システムがあり、これにより重症度とリスク診断を行い、ガイドラインに基づいて治療と、適正な間隔のメインテナンスが提供されており、リスクと重症度に対し歯科疾患をマネージメントしていた。このシステムは行政が運営するものであるが、このシステムに加入希望する患者が年々増えているということである。ここでは日本の保険制度と雲泥の差を感じさせられ愕然とした。定期的に通院することやリスク診断することも稀な一般の日本の歯科医療、かたや、医学的に歯科疾患をとらえ制度に反映し医療システムの発展を遂げるスウェーデン。。。 保険は医学じゃなくルールですから。。。という暴論が聞かれる場合もある日本と、医学的な観点から制度を進化させ大きな患者母集団の患者利益を実現するスウェーデン。。。そして、スウェーデンでは、電子カルテ(日本でいうレセプト??)のデータが一元管理され、その膨大な臨床のビッグデータの蓄積が、ガイドラインや診療指針の作成、医療行政の評価に用いられるとのことである。一昔前まで、スウェーデンの国民の口腔内は悲惨な状況だったことを考えると、いかに制度を正しく有効なものにすることが大事であるかを認識させられた。制度を適正化することで、国民の多くが適正な歯科医療を受けられ、やがてその継続を望むようになったわけなのだろう。やはり日本の歯科医療制度、行政は見直されるべきであると思った。また、幼稚園の見学では、幼稚園でもカリエス予防の秘策的なものが行われているのかと思いきや、それは親と歯科医療の責任であるとの説明を受けた。やはり、スウェーデンの歯科医療の成功はここにあるのかと感じた。つまり、子どもを取り囲む親、歯科医療従事者がその責任をキッパリ担っているということである。あそこの歯医者が悪いから歯が悪いとか、あの子と親は全然歯磨きしないからとか人のせいに言い合うわけでなく、定期的にかかることが患者(もしくは親)の責任で、しっかりしたリスク診断、リスクマネージメント、必要なら治療を提供するのが歯科医療従事者の責任ということである。いずれの施設の見学でも、施設云々というより、そこにいた人々のふとした一言に、大きな印象と学びがあったように思う。
最後に、今回の研修では、やはり歯科疾患を重症度とリスクの二つの側面でとらえ、それぞれに必要なアプローチをチーム医療で提供していく重要性を再認識した。自院でも、このような取り組みを行ってきているが、その方向性を再確認し、さらに院内全員のチーム力を上げ、歯科疾患のマネージメントと患者利益の実現に努力を重ねたいと想いを再認識いたしました。
日吉歯科に勤務して3年目、研修終了後すぐに日吉歯科に勤務させて頂き、日々の臨床にも少しづつ慣れ、熊谷先生の背中を見ながらあらためて歯科医師としてどうあるべきかを再考している時期に今回の研修に参加させて頂く機会を得ることができたこと大変うれしく思っております。
マルメ研修といえば、日吉歯科の根底に流れる歯科医療哲学を学べる研修。歯科医師として日々研鑽し正しい知識や良い技術を獲得することは非常に重要なことであり、医師として当然のことだと思っています。しかし実際にその知識や技術を臨床に落とし込み患者の最善の利益につなげようとするとき、その歯科医師の人間性や軸となっている診療哲学が間違っている方向を向いていると、患者に不利益すら与えかねないと熊谷先生・ふじ子先生からよくアドバイスを頂きます。本来歯科医療は誰のためにあるものなのか、どのような考えを持ち日々患者と接していけば良いのか、現在自分の中にある診療哲学を今回の研修でさらにぶれない大きな軸とできれば、自分の歯科医師人生の大きな基盤になると考えながら研修に望みました。
実際に講義が始まると、講師の先生方はみなさん非常にユーモアあふれるゆったりとした口調で話してくださり、初日から最終日まで食い入るように講義に集中することができました。最初のダン・エリクソン先生の講義で今回の研修のゴールは「口腔の健康増進」であり、そのためには「知識の確認」、「知識の追加」、「新しい視野の獲得」が必要であるとお話がありました。
知識の確認・追加という点では、カリオロジーに基づいたカリエスに対する唾液検査・カリオグラムを用いたリスクアセスメントや病変に対する非外科的介入や外科的介入への考え方、ペリオのリスクアセスメントについて現在まで日吉歯科で学んできた内容と重なることが多く、新しいエビデンスも含め非常に頭の中が整理されたように感じました。
新しい視野の獲得という点では、エリクソン先生の歯科医師の脳内の報酬型の話や行動変容の話、カールソン先生の1枚のデンタルに対し誰もが過小評価も過大評価もしてしまうという話、メヤール先生の歯科医師の頭の中でのトリートメントディシジョンの話、エヴァ先生のR2システムやキャピテーションモデルの話、また公立歯科医院や幼稚園の見学やオーラルケアAB社の説明会で知ることができたスウェーデンという国全体社会全体で行っている医療について、その中で歯科医師がどのように考えながら患者に接しているかを垣間みることができ、今まで自分の中になかった考え方を得ることができました。また、最後の質疑応答でダン・エリクソン先生が仰った「科学的根拠のある情報が1番信頼できる」という言葉がとても印象に残り、臨床家として科学者として科学的根拠のある知識を学び、それを患者に還元しなければいけないと強く感じました。
マルメ研修を終えて、自分の視野が広がるとともに軸となる診療哲学があらためて根付いたように感じています。また、現在自分が身を置かせてもらっている日吉歯科はやはり素晴らしい環境でありあらためて熊谷先生・ふじ子先生に対して感謝の気持ちが強まりました。この環境の中で、今回根付かせることができた診療哲学をより確固たるものにし患者にも日吉歯科にも自分にも還元できるように、今回のマルメ研修で学んだことを念頭において日々研鑽を積んでいきたいと思います。
私はこの研修に参加している間、また参加した後にも、“とても勉強になった!”、“感動してやる気が出た!”などという一言で片付けることができないくらいに本当にたくさんの事を学び、感じ、そして考えることができました。私は間違いなくこの研修が私の始まったばかりの歯科医師人生のターニングポイントになると確信します。なぜならばこの研修では日本で高尚だと信じられている歯科医療従事者が当然持つべき診療哲学や歯科医療像といったモノを、“そんなモノは持っていて当たり前でしょ!”と参加者の身体に、脳に直接染み込ませるようにプログラムされていたからです。
私はこの研修に参加する以前よりスウェーデンの歯科医療について漠然とではあるが知ったつもりでいました。スウェーデンでは高額な税金により担保された充実した社会保障制度により医療従事者はもちろんそれを含めた全ての国民が自身の健康に対する高い知識と意欲を持ち合わせている、そしてそれを日本で実現する事は奇跡であり、日吉歯科での取り組みも熊谷院長やふじ子先生のカリスマとスタッフや患者の努力の上にその奇跡が成っているものとどこか特別視するように考えていたと思います。しかしエリクソン先生をはじめとした諸先生方の講義を通じその考えは一変させられました。彼らは単純に患者、ひいては国民が恒久的に健康で幸せに暮らせるように努力しているだけだったからです。EBMもカリオグラムも唾液検査もキャビテーションシステムも本気で国民を健康にしようと考えた時に必要になったツールであり、彼らにとって何も特別な物ではなかったのです。彼らは“何かを考えるときの3つのGolden Circle(http://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action)”
の通りに取り組んでいました。そして彼らにはWhy(哲学)があり、How(方法)を考え、What(ツール)に至るよう当たり前に考え、取り組んでいたのです。もちろんスウェーデンと日本では国民性も国策や制度、社会的背景も全く違うため、そのままのツールを日本に持ち込んだだけでは上手く作用しないでしょう。しかしながら、私はもし我々が本気で取り組もうとすれば日本のどこでもスウェーデンのようなコンセプトの歯科医療は可能だと確信する事ができました。私たちが彼らから学ぶべき事は、彼らの頭の傍らに常にある“ぶれる事の無い診療哲学とコンセプト”に他なりません。そして我々はそれらを日本という背景に落とし込み、目的の達成のために歯科医師をはじめとする歯科医療従事者や患者が“何が必要で何をすべきなのか”を本気で考えなければならないのだと思います。そしてその最中必要なツールがあれば世界中から良いツールを集め、利用すれば良いのだろうと思います。熊谷院長がしばしば言う“日吉歯科はスウェーデンとアメリカの良いとこ取り”という言葉の真意がここにあるのではないかと思いました。
私は現在アメリカで歯周病・歯科矯正専門医のオフィスでデンタルアシスタントとして仕事をしながら勉強をさせてもらっています。そして近い将来、日吉歯科のU20・歯科矯正部門で勤務することを強く望んでいます。もしそうすることができた時、そうなる前にこの研修に参加する事ができて本当に幸せであったと振り返るだろうと思います。特にU20の部門において、対象となる患者は未成年であるため、カリオロジーは私の仕事の主軸となります。何のためのリスク評価、唾液検査なのか、なぜMTMが必要なのかといった本当に基本的な事を深く反芻する機会を得る事ができて本当に良かったです。そして何より、日本・アメリカ・そしてスウェーデンと3つの視点から“今何を勉強していて何が起こっているのか”を捉えることができて幸運であったと思います。また現地で学ぶ事によるアドバンテージは確かにあったと感じました。日本にいてスウェーデンを学んでいては見えない事もたくさん見ることができました。マルメ大学の高い要求を満たす歯科医師の教育方法や幼い頃からの患者教育など具体的に挙げれば切りが無いですが、現地でそれらを見て・感じるからこそ本当の意味で日本の現状をみることができたと思います。そして日吉歯科の取り組みはワールドスタンダードであり最高水準なのだと再確認する事ができました。日吉歯科のように地域住民の健康の価値観を変え、真の患者利益を求めるために着実に努力を続ける歯科医院が少しずつでも増えるように、自分自身も着実な努力の元に進歩し続けなければならないという使命感を授けられた思いです。私はこの度のマルメ研修に参加する事ができて本当に幸せでした。一週間という短期間ではありましたが、もしこの研修に参加していなければ私の歯科医師人生は全く別の物になっていたと思います。もし機会を頂けるなら、留学を終え日吉歯科に戻る前にもう一度この研修に参加できたらと思います。
昨年東京でアクセルソン教授のオフィスの継承者であるアンダース先生よりスウェーデンの歯科について拝聴したり、年明けから歯界展望に連載された西先生の北欧歯科事情に関するレビューを読み、北欧の歯科の制度やその源流にある哲学について大変関心が高まった折に、マルメ研修に臨むことができました。
エリクソン先生をはじめ講師陣の先生方のユーモアを交えたカリオロジー・ペロドントロソジー・スウェーデンの歯科制度・教育制度についての講義は大変魅力的なものでした。
最初の講義では何故歯科医師は修復したがるのか、人間の甘いものへの欲求の話題で、それらが脳の報酬系が大きく関与している話は、オーラルフィジシャンとして仕事をすることが、自らの、また患者の脳の極めて原始的な部分とのせめぎ合いであることを認識することができました。基本的には健康な状態を「変化させないこと」が予防であり、そこに喜びを見い出すには高度な知性がなければならないとエリクソン先生はおっしゃっていたのが印象的でした。
また一つの物事をあらゆる方向からみる力が自分には欠落していたと気づかされました。私は患者が虫歯になってしまうことは教育することも含めて歯科側の責任だとずっと考えていました。一方スウェーデンの先生方は患者教育の重要さを何度も熱く説きながらも、歯科が口腔健康への寄与度はたったの3%であり、「患者の責任である」と断言していることや、カールソン先生の「私は毎日エラーしている」という言葉や実際にX線写真の読影をする実習の中で、診断するときには不確実性が伴うことなども触れることで、1つの事例に対して異なる視点から物事を考えるスウェーデン流のバランスの良さを実感することができたと思います。
何かに偏ることなく様々な視点に立ちながら考え、自分・スタッフ・患者がやるべきこと・責任を明確にすることや、患者をリスク毎に分類し真に時間と手間をかけるべき患者に対して十分にかけていくこと、前段の話題をそこだけぱっと文章にすると、非常に冷静でドライな感じに捉えてしまえそうです。しかし実際には一つ一つの事象をシステマティックにエビデンスに基づいて整理し、ガイドラインや医療制度が考案され、医療哲学を共有する歯科医療者により実行される学生教育を含めた持続可能なシステムを作りあげ、より高めていく流れの中の一部の側面であり、人的・経済的資源には限りがある中で、いかに多くの人がより健康に一生を過ごせるかを考え抜いてきたスウェーデンの先生方の情熱と探究心とたゆまぬ努力の中から生まれたものであると今回の研修で常に感じ続けました。ライセンスを与えられて3年目、まだまだ雛鳥のような未熟な中でどこまで吸収できたのか疑問に思うこともありますが、医療者とはプロフェッショナルとはかくあるべきという姿というものをあらためて考えるセンセーショナルな研修になりました。
私は、どんなに素晴らしい義歯もインプラントも自分の歯には勝らない、だから生涯自分の歯で食べる事ができる歯科医療を実現したいと考えていました。そんな中で参加した若い歯科医師のためのオーラルフィジシャン育成セミナーで、熊谷先生から直接同じ言葉を頂き、この医療を貫くと心に決めました。日吉歯科に勤務して2年半が経ち多くの事を学び、欧米の先進国を実際に見てみたいと思っている中で、スウェーデンマルメ研修に参加させて頂ける機会を頂くことができました。
本研修ではエリクソン先生の「永久修復なんて存在しない」「MIとは"A systematic respect for the original"だ」というキーワードでスタートし、初日の講義から多くの参加者に衝撃を与え、「歯科医療とは何か」ということを突きつけられた気がします。
帰国途中の機内で研修を振り返ると、スウェーデンの社会的背景や制度は異なっていても、歯科医師としての姿勢、歯科医療の在り方などは今まで日吉歯科で学んできた事と変わる事はなかった、これまで学んで来た事が歯科先進国スウェーデンのトップクラスの先生達によって、実際に現地を訪問することで更に裏付けられたというのが感想です。その中でも印象的だった事についていくつか挙げたいと思います。
中でも印象的だったのは、ちょうど私がリサーチしていたStepwise Excavationに関する調査と、Dr.AndersのDeep Cariesの講義内容が類似していたことでした。これは、熊谷先生が常々提言されているEBDの実践によるところが大きいと言えます。EBDを実践する事で、GPも専門医も、日本でもスウェーデンでも同じ知識を得る事ができる、その一端を感じる事ができました。幸運にも質疑応答の通訳を担当させて頂く事がで、Dr.Andersと深くディスカッションすることもでき、更なる深いリサーチへのヒントを得る事ができました。
今回私は有り難い事にあるパートで通訳という仕事を担当させて頂く事ができました。この経験で日本の歯科医師とスウェーデンの歯科医師の間で、ガイドラインや知識への考え方に大きな以外があることが分かりました。エリクソン先生も「ガイドラインとは参考にするものであって、必ずそうしなければならないというものではない」と仰っていました。スウェーデンの歯科医師は科学的根拠に基づいた知識を有しながらも、歯科医師の限界、患者が持つ責任、医療制度を十分に考慮し、物事の本質は何かを理解しています。それに対して、私たちはとかく知識やガイドラインを厳守しなければならないようなイメージに縛られてしまっていたり、材料やテクニックに興味が偏ってしまっているのかもしれないと考えさせられました。私も日吉歯科に勤務している中で、何度も本質を考えなければならないと言う事を学ばせて頂いています。今回の研修を通じて、あらためて患者にとって何が大切なのかを常に自問自答し続けなければならないと実感しました。
我が国の歯科医療には医療政策や保険制度など多くの問題が山積しています。その点を踏まえ、エリクソン先生にアドバイスを求める質問があがりました。「医療政策や社会的システムに関しては、スウェーデンでも問題があるが、それでも多くの歯科医師や政治家、国民が口腔の健康のためにチャレンジをしてきた。日本にも問題は多くあるだろうが、患者のためにチャレンジをし続けていかなければならない」という解答を頂きました。この言葉によって、私たちはとかく問題や課題を先延ばしにしようとしまいがちではないかと気づかされました。つまり、私たち自信が困難に対してチャレンジする姿勢が少なく、歯科医療の価値が低迷を続けているのではないでしょうか。しかし、そういった姿勢を貫く良い指導者が凄く身近にいました。それが、熊谷先生の歯科医療に対する姿勢です。敢えて困難な道を選択し、真の患者利益のためにとことん戦う。私は日吉歯科を少し離れスウェーデンに来てあらためて、今自分が学ばせて頂いている環境のありがたさを再び実感するとともに、どういった歯科医師になるべきなのかを再確認することができました。
日本を出国する前、マルメ市は連日雨という天気予報でしたが、持ってきた折りたたみ傘を一度も開く事もなく、朝の太陽に照らされた美しい街並みを眺めながら爽やかな気分でマルメ大学の講義に向かうことができました。
この研修を通して感じたのは、スウェーデンと日吉歯科の歯科哲学には共通したことがたくさんあり、講師陣の言葉に、ほとんど違和感がなかったということです。熊谷先生がずっと前から北欧の歯科医療の考えを取り入れていた上に、1回目2回目に参加した先輩達が日吉歯科にフィードバックし、着実に根付かせてくれていた環境の中で過ごすうちに、いつのまにか私の中にしみ込んでいたのだと思います。そのような安心感(?)のなかで、落ち着いて講義を聞くことができました。
システマティックなリスクアセスメントに基づく歯科医療、カリオロジー・ペリオドントロジー、幼稚園の教育から高齢者に対する歯科医療、遺伝子診査についてなど、講義テーマがそれぞれの講師で異なりましたが、一貫した考えを感じる構成となっており、全てを聞き終えたとき、スウェーデンの歯科医療と全体像とはどういうものか理解できたように思います。
講義の中で、ダン・エリクソン先生の、「科学が政治を動かす」という言葉があり、ダン先生を含め、ナショナルガイドラインを作られた先生達が勢揃いした集合写真を拝見したときは、先生達のスウェーデンの国民の口腔の健康を守っているのは私たちだ、といっているような誇らしい表情が印象的でした。私たち日本の歯科医療従事者もダン先生たちのように本当に健康になるための医療を示していくことが必要であり、それによって分野の枠を超えた協力を得るべきであると感じました。
スウェーデンの歯科医療システムがリスクアセスメントに基づいて医療費・時間が割り振りされていること、経済的な後押しや教育システムによって、医療従事者も、国民も本当に必要な医療に向かわせる仕組みがしっかりと作られているということも印象的で、私たち日本の歯科医療従事者が学ぶべきことはたくさんありました。
私はリスクアセスメントとはいままで、その人のリスクがどうかみてそのひと個人の臨床に生かすものであるという認識に留まっており、そのような私の考えはとても狭いものだと気づきました。スウェーデンでは個人の臨床に生かすことに加えて、リスクの低い・高い人達を見つけ出し、年間の患者に懸ける時間、治療内容(歯科医師と衛生士が行う治療の比率)・スタッフの配置を決め、限りある人材・時間・資源をより有効に使えるように検証を毎年行い、翌年にフィードバックしていました。それがより効果的な医療への進化になっているのです。日本の医療費はパンク状態で、早急な対応が求められます。ただそこにある疾患を見るだけでなく、長期的な視線をもって、戦略をたてていくことがこれからの日本の課題で、このスウェーデンのシステムを知ることで自分の視野を広がりました。
子供達の対応についても講師との会話から気づきを得られました。例えばカリエスについては、メインテナンス期間を大きく開けることによって(どれくらい期間をあけるのか明確には聞きそびれてしまいましたが)、なんらかの理由でカリエスが発生してしまったらどうなのか、と質問すると「ティーンエイジャーがカリエスになったら誰に責任があると思う?」と聞かれ、医療者側が全て負うのではなく、ある程度の年齢の小児患者にはきちんと教育した上での、「自立」「責任を科すこと」も大切であることをあらためて認識しました。普段の私には少し欠けていたところだと思います。
しかし、その一方、大きく期間を空けることで、カリエス・歯肉炎だけでは対応できない問題(歯列や位置異常など)が生じた場合、それを見逃す可能性もあります。また、19歳までの無料期間が終わると歯科医院の通院が途絶えてしまう、というスウェーデンの問題もあると聞き、それまでの教育が良い健康観を持つ所まで行き届いていない場合、有料になった瞬間それが明らかになってしまいます。
U20にいま来ている子供達のさまざまな状況・変化の大きさや、小さい頃から通院し、進学によって他県に引っ越ししても長期休みに来てくれたり、成人になっても通院が成人口腔衛生部にバトンタッチしながら続いていることを考えると、U20で現在行われている患児・保護者に寄り添うきめ細やかな対応は、問題を見逃さず健康を見守っていけるものであり、さらにその経過の中で本当の健康観が高い患者と、本当の信頼関係を育てているのだ、とあらためて感じることができ、やはりこの医療をもっと学んでいきたいと気持ちを新たにしました。
日本への帰り道で、熊谷先生から「日吉歯科はアメリカの治療と北欧の予防を取り入れた診療所だよ。」と伺ったことがふっと頭に浮かんできました。今回の研修と2年前のアメリカの歯科医療を見た経験から、それら2つの国と比較して、日吉歯科は熊谷先生のいう通り、どちらのよい所も取り入れ、さらに日本人の繊細さと真面目さが加わったよりきめ細やかな歯科医療だと、外側から自分の目で確認できました。そしてコースが始まる前に成田空港で配布された熊谷先生のお手紙にあった「日本の歯科医療に変革しようと取り組む」オーラルフィジシャンの道を選んだ一人としての力を地道につけていきたいと思いました。
今までセミナーの中で海外との比較というのは何度も耳にしていたのですが、百聞は一見にしかずとはまさに今回のことで、直接見ることで外から見た日本の歯科事情、歯科衛生士事情、そして何よりも自分が今どの位置にいていかに視野が狭いのかがよくわかりました
セミナーに参加すると自分に足りないところを知れることはもちろんですが、今回の講義の中で、歯科衛生士教育方法の一つとしてPBL(Problem Based Learning)という手法を教えてもらいました
PBLを取り入れることで、教わるのではなく自分で調べることで知識を得るという今までとは全く異なる学習方法を学生時代から取り入れることで、視野の広い歯科衛生士を世に送り出すことができ、今のスウェーデンの歯科を根底から支える幹になっていることがわかりました
このように今持っている知識と新しく得た知識を整理していくトレーニングを積んでいけば、様々な視点を持つことができるというヒントも得ることができました
今後PBLをスッタフ間でも共有し、それぞれの知識の整理に応用できたら良いと思いました
今回のセミナーでもう一つ確信できたことは、今私たちが行っていこうとしている診療モデルはやっぱり間違っていなかったということでした
それは、世界最高レベルの予防歯科を実践しているスウェーデンがそれを実証し、国のガイドラインとして発表していることからも理解できると思います
私たちは、特別なことをしているわけではありませんが今の日本の歯科医療を変革していくには今回参加された常に上を目指している歯科衛生士の皆さんと歯科医師の方々との交流が重要な核になっていくと強く感じました
海外の歯科医療の現場で一番視察したかったのがスウェーデンでした。
スウェーデン国民の歯への予防意識が高く国民の90%が定期的に歯科医院に通院していること、歯科医師、歯科衛生士が一丸となって国民の口腔内を健康にしようという熱意と行政によるバックアップの強さ、圧倒されました。
世界的権威のある講師の先生方による講義は分かりやすく、私が分かるような短い文を並べて説明してくださいますし、ダンエリクソン先生のちょっとしたジョークでリラックスして聴くことができました。
なかでもリスク評価があってこそ予防プログラムを患者さんに提供できるという考え方、それによって個々に予防方法が違ってくる意味が分かりました。どんな患者さんでもほとんど同じような予防方法を伝えていた私。臨床でやっている唾液検査に対しての考え方を見直すいい経験になりました。
公立病院のデンタルハイジニスト、デンタルナースの方の堂々とした姿をみてプロ意識をもって働いていらっしゃるところも観れましたし、かつ優しい雰囲気を持った笑顔の一面もあり、こんな衛生士になりたいなと思いました。
この一週間を終えて、日本とスウェーデンがこんなに違うことを痛感させられました。「さあ今日から頑張ろう」と思っても日本がスウェーデンと同じような現状にすぐにはならないことも分かります。しかし日本の歯科衛生士の代表として参加している責任がありますので、日本人が健康な口腔内になってもらうためにまずはクリニックに来院する患者さんへ情報発信していきたいです。それがクリニック近所の方へ、京都市の方へ、京都府の方へ、全国へ…と願うばかりです。
同じ志しを持った全国の歯科医院さんとの交流もでき、がんばり続ける力をもらいました。この感想文を書いている今、さらに意欲がみなぎってきてます。
初めて海外研修を受けさせていただきました。とても充実した研修で、たくさんのことを感じ、学べたと思います。最初にダン先生が言われたように「今までの確認」「さらに知識を増やす」「新しい視点をもつ」をゴールにできた研修でした。
また、スウェーデンの歯科医師、歯科衛生士みなさんがユーモアのある方ばかりで、授業全てが楽しかったです。
そして、実際に保育所などにも見学させていただき、貴重な経験をさせていただきました。
この機会をいただいたことに感謝です。ありがとうございます。
まず、スウェーデンでは、PBL法という学習法をされていて、自分で考えるということを意識されていると思いました。最近、日本の専門学校の先生から、考えるということが苦手な人が多いと聞いたことがありました。実際にこの研修の中でPBLをしてみましたが、周りの人ともコミュニケーションがとれたり、さまざまな考えがでてきたりします。一方的に伝えるだけでなく、自ら学ぶ姿勢が大事だと思いました。日本でも、このPBL法が増えていけばいいなと思いました。またスタッフ教育にも、これを取り組んでいけたらいいなと思いました。
また、リスクに合わせて患者様の口腔内の健康を守る。歯科医師、歯科衛生士、デンタルナース、歯科技工士、そして患者様の意思が強いと思いました。チームワークが必要だと。
子どもの口腔健康のために、親が教育を受け、それが成長してからも継続される。
リスク評価にもされているため、患者にも伝わりやすく、自分でも何をすべきなのか分かる。
予防というのが本当に重要で、さらに歯科衛生士として口腔内の健康を守っていきたいという思いが強くなったかと思います。まだ、私は歯科医院に来られた人にしか予防の重要性を伝えることができていません。もっと、多くの人に幼少期からできることを、親への教育がもっとできたらいいなと思いました。
スウェーデンと日本では、環境や経済面などさまざまなことが異なりますが、できることは院内でも活かし患者様の健康をサポートしていきたいと思います。
今回初めての海外研修に参加させていただきました。英語が全くできない私にとって、果たして講義についていくことができるのだろうかと不安な点が多々ありましたが、大学の先生も分かりやすくていねいにお話してくださり、西先生と岩上さんの通訳もとても理解しやすく、充実した講義を聞くことができました。
今回の講義項目の、MI,感受性のある歯周病患者へのインプラント、PBL、患者のメインテナンス、薬剤と歯周炎/カリエス、健康へのインセンティブとキャピテーションシステムの講義はもちろん、公立の歯科医院や幼稚園の見学もすごく充実していました。
特に、公立の歯科医院での内容はもっと深く聞いてみたと思いました。実際の臨床の場においての様子も伺いたかったのですが、時間の都合上質問はできませんでした。
また、幼稚園での見学や質問は充実していました。教育方法は個人を尊重していて、個人の可能性を伸ばす良い方法が取られていると思いました。口腔内の健康を守るためにはやはり歯が生えてからの早期予防が重要だと思います。スウェーデンではそれが実現しており、幼児のう蝕はほとんどないという素晴らしい結果をもたらしています。
講義に関しては、ほとんどが適切な論文の研究結果に基づき理論的に説明していただき全て納得のいくものでした。
それから講義の中で先ず初めに驚いたことが、スウェーデンの街を歩いている人に「歯医者は何をする所か」と尋ねるとほとんどの人が、「歯を削る所だ」と答えるという点です。私のイメージではスウェーデンの人達は健康観が高く、誰もが自らメインテナンスを希望し行っており、「歯医者は予防する所」という回答がくると思っていました。しかし想像していた答えとは真逆で、この回答にはとても驚きました。確かに、スウェーデンの街を歩いてみると、喪失歯がある方もちらほら見かけました。
しかし、日本人と同じ歯科のイメージを持つスウェーデン人の大多数の方の口腔内の環境がなぜ良いのかという疑問が生まれてきました。その理由は国の保険制度にあったようです。
スウェーデンでは、1歳から19歳まで医療費が無料です。また、段階ごとに歯科医院を受診する義務があるようで、定期的に歯科医院へ通院し、子供たちは生まれた時から健康を守られていたのです。その後も、パブリックのデンタルケアではR2を用いたリスクアセスメントに基づき、3年ごとにリスク評価をしているようです。それを聞いた際に、オーラルフィジシャン受講医院がパブリックの医院のように提携し、旅行や転勤で行った際に、言った先の土地の医院で応急処置やメインテナンスが受けられるようなシステムを作りたいと思いました。
一方日本は歯科健診で早期治療の勧告をし、早期の治療介入で再治療を繰り返し口腔内の崩壊を導いているのです。
マルメ大学の講義の全てにおいて、いつも熊谷先生が言っていた「日本の医療制度の改革が必要だ」とうことと繋がり、あらためて熊谷先生の言葉が理解できました。熊谷先生はいつも私たちにスウェーデンの歯科医療哲学を伝えようとしていたことと繋がりました。
しかし残念なことに日本の歯科医療制度はなかなか簡単には変わりません。そうなると、私たち医療従事者が変わらなくてはなりません。
今回スウェーデンの歯科衛生士の講義で聞いていると、日本の衛生士と行っていることはほとんど変わりないことが分かりました。
今回の5日間は、本当に毎日が充実していて贅沢な日々でした。
今後、肌で感じたスウェーデンの歯科医療哲学を念頭におき、日々患者やその周りの健康のために自分の行っていることに自信を持って携わってまいります。また、機会が与えられるならば、再度マルメ研修に参加させていただきたいです。
チームミーティングやオーラルフィジシャン育成セミナーでの熊谷先生や海外の先生方の講演をきかせていただいてきた中で、海外の歯科医療の現場を実際にみてみたいと思い、中でも予防先進国スウェーデンでの研修が希望でした。
いざ研修がはじまり、ダン.エリクソン先生をはじめ、講師の先生方の講義はとても興味深く、驚くことばかりでした。スウェーデンと日本がこんなに違うものなのかと、現地で実感しました。歯科衛生士学校の教育年数は、スウェーデンも日本と同じなのに、なぜこんなにも違うのかと疑問に思いました。日本は昔からずっと変わらない教育をしているんだとあらためて思い、日本での歯科衛生士の知名度の低さ、助手と同じ仕事をしている歯科衛生士もたくさんいる現状で、歯科衛生士の仕事の価値を伝えいかなければならないと強く思いました。国民の歯の健康を守る、知識と技術を持った本当の歯科衛生士が増えていくような活動をしたいと思いました。
研修で思ったのは、親への教育をしっかり行っていることでした。日本でも乳児健診はあるものの、親への教育はあまりされていない気がします。当院での患者教育を再度見直し、スタッフで話し合う必要があると思いました。
今回は貴重な体験をさせて頂きダン先生をはじめ、多くの先生方に感謝致します。
スウェーデンの予防歯科のシステムが確立しているために、予防が根付いていることがわかり、本当に素晴らしいことだと思いました。
当院の院長が3年前にマルメ研修に行かせて頂いてから、絶対にスウェーデンに行って自らスウェーデンの歯科医療哲学に触れてみたい!と思い、今回志願しました。
院長から3年前に講義内容などを聞いていたので確認にもなりました。すでに取り入れている考え方がいくつかあり、それを見つけるたびに嬉しくなりました。
PBL(Problem Based Learning)は新人スタッフ教育や、症例検討ミーティングで使用してみたいとおもいました。行動医学はとても興味があります。フッ素洗口リンスも取り入れたいと思いました。
熊谷先生のファイナル講演に行かせて頂いた時に「20歳までにいかにカリエスフリーでいるかが大事である」「健康な人を健康なまま維持する」という言葉を聞いて衝撃を受けました。それから当院では、色々なプロジェクトを組み頑張って来ました。まずは家族を呼び込むということを衛生士チームはチェアサイドから語りかけてきました。実際、家族で予防に通って頂ける方は増えてきましたが、まだまだです。私は、ホームページやブログ関連のプロジェクトをしていますので、ネットからも予防の重要性を発信することに力を入れてきました。
そして今回もまた、ダン先生から冒頭に「もともと健康な人を維持するのは難しいことだ。もう一歩踏み込む必要がある。よく考えよう!」と言われました。
これは日々の臨床を積み重ねながら一生考えていかなくてはいけないテーマだと思いました。
マルメ研修に参加する事が決まり考えただけでドキドキしてしまう毎日でした。三年前マルメ研修に参加した院長から話を聞く中で、私も一度、自分の目で見、肌で感じ、スウェーデンの風を受けてみたい願望が叶ったからです。考えると生涯に於いて、とてつもなく大きなでき事で、予防の先進国であるウェーデンのマルメ大学で学べる事は、奇跡に近いことです。それが現実となった事に熊谷崇先生をはじめ、この研修を支えてくださったスタッフ、多くの方に感謝します。
講義では、ダン・エリクソン先生のユーモアかつ惹きつける話力、そして、解りやすい説明、あっという間に時間が経過してしまいました。街で道に迷って偶然ダン先生にお会いした時も、心温まる対応にフアンになってしまいました。
また、衛生士の先生方も一つ一つ質問にていねいに答えてくださり、対面でお話しできてとても有意義でした。自信に満ち溢れ、確固たる信念とプライドを持った姿に羨望を持ちました。
講義の中でも、PBL問題解決型学習は「なぜ?」から始まる学習が、自身の知識や意欲を持つ事に繋がり『机上の空論』ではなく、実践につながり、私自信の仕事の上で、医院のミーティングの症例検討、そして、患者さんのモチベーションアップに意識して取り入れていきたいと思います。我が医院では、院長がマルメ研修後、グローバルスタンダードを念頭に入れて、治療の介入の時期、高濃度フッ素、ディラファット、ダン先生考案のフェンダーウェッジプロ、そして、ステップワイズエクスカベーッションを取り入れ、スウェーデンに近づきたいと考えながら診療しています。今回、私も「予防歯科の哲学」を学び、予防システムに乗るだけでなく真の予防、この研修のゴールである「歯の健康を高める」には、エビデンス、データーに基ずいた考えを理解した上で、患者を中心に、Dr、DH、CC(受付)、とのチームとして、歯牙だけ、口腔の中だけにとらわれず「木を見て森を見て!」、全身の状態、生活習慣、色々なファクターを考慮し患者と向き合うよう努めていきたいと思います。
マルメ研修で学んだ事は、わたしの宝であり、この上ない経験をさせて頂き、今後の歯科医療に貢献していきたいと思います。
ダン先生からいただいたピンバッジを胸につけ、バッジの重さを感じながらグローバルスタンダードを念頭に歯の健康に力を注いで行きたいと思います。
マルメありがとう! 出会いに感謝!
今回の研修に参加した理由は、日本と世界との歯科事情の差がどのようなものなのか?
本当の歯科予防とは何か? 歯科衛生士としての役割、チーム医療とはどのようなものなのかを現地で見て感じたかったのが理由です。
海外は旅行も含めてもほぼ初めてでした。何もかもが分からないだらけで正直どうして良いかわからなく、出発の数日前から緊張して眠れずドキドキでした。
当 日、出発の日に顔合わせをさせて頂いた時に何度かお会いしている先生や、衛生士さんがいらしたので少しホッとした面と参加されている医院さんのレベルの高さに圧倒されて違う緊張がありました。私がこのようなすごい研修に参加させて頂いて良いのか・・・と一瞬不安もよぎりました。
しかし、自分自身が置かれている立場やレベルの違いを見つめなおす良いチャンスということ、また人の事を気にするよりも大切なのは学びに行く事だと気持ちをあらため、参加させて頂くことに感謝し自分が見てきた現状を医院でアウトプットして日々の診療に活かしていこうと思いました。
8月17日出発当日緊張で言葉にならないのだけは覚えています。それ以外はあまり記憶にないのが正直な所です。スウェーデンに着くとあいにくの雨で思っていた以上に寒かったです。
ホテルに付き窓から見る景色でようやっと研修が始まるのだと感じました。
大学で研修初日、1番印象に残ったことは講師の先生方が時間を必ず守っていたことです。始まりの時間終わりの時間がはっきりしていました。何気ないことかも知れませんが時間を守ることはとても重要だと感じていた中で徹底した時間厳守は驚きました。
研修内容で、PBLやスウェーデン歯科衛生士の教育の話しの中で感じたことは、教育の仕方・あり方でした。プログラムがしっかりあり何でこのようにして教育しているのか? 全て経済的なことも含めての教育がされているため歯科衛生士は自分の国の現状を良く理解していて将来を見すえた行動をとっているのと感じました。プロフェッショナルとしてまさに活躍している歯科衛生士です。
外から見た日本は、なんで歯科衛生士が必要なのかがちょっと分かりづらいです。何のためにこの職業に付いたのか? 歯科衛生士になってどうしたいのか? とりあえず医療に関わって職に安定してそうだから・・・そんな思いで資格をとり何となく仕事をしている日本の歯科衛生士のひとりとして恥ずかしく思いまた危機感を感じました。
日本の教育システムが全て悪いとは思いませんが、歯科衛生士は世界と日本の歯科事情、歯科衛生士業務、患者さん教育の違いをもっと意識していき日本の患者さんに口腔の健康を理解してもらえるよう自分の医院で伝えていきたいです。
施設見学ではパブリックデンタルケアセンターで歯科衛生士が現場で活躍している姿を拝見しました。
同じ歯科衛生士として、活躍している姿は自分が日本で働いている光景とは全く違いました。自分がどれだけ低いレベルで業務をしていたのかがよくわかりました。
日本での治療は早い段階で歯を削っていくことが、早期治療で良いことなのかということがすでに遅れているし、それを望んでいる患者さんもまだ多いことが将来に関わるのか本気で伝えていかないといけないと思いました。
この研修に参加させていただき研修にいらしている医院さんのレベルと自分の医院のレベル、そして世界のレベルの違いを痛感した今、年齢にとらわれず歯科衛生士として生涯の職業として日々勉強し、地域の患者さんや社会に貢献でき本当のプロの歯科衛生士を目指していきたいと思います。
今回の研修に参加させていただき本当に有難うございました。
以前研修に参加した方のお話を聞く中で、是非私も自分の目で見て学びたい!と思い、今回の研修への参加を決めました。実際に参加してみると、人から聞くのと自分で見て聞いて学ぶのとでは全く違い、本当に参加して良かったと心から思いました。歯科衛生士人生の中で、1番刺激的な5日間になりました。
今回の講義では、歯学教育プログラムにおけるPBLをはじめ、カリオロジー、MI、薬剤と疾患パターン、ペリオドントロジー等学びましたが、全てがエビデンスに基づいた情報であり、どれも説得力がありました。今までの知識を再確認し、更に新たな知識を身につけることができる講義の内容でした。
日本との違いとして、まず学生の教育方法から違いました。マルメ大学の教育方法で学生から高い満足度を得ている理由のひとつとして、PBLが挙げられていました。通常の学習方法では、試験前に覚えて、試験が終わると忘れてしまう悪循環の繰り返しですが、PBLを取り入れ、自ら学ぶことで、自分の持っている知識を活性化させ、新たに学んだ知識を今まで学んだ知識と結びつけることで記憶に残るという考えでした。現在日本の大学等でも取り入れられているところがあるようですが、更に多くの学校や医院の勉強会等にも取り入れられれば良いと感じました。
MIの講義にて、齲蝕の介入する時期、いつ修復すべきか? はとても難しい問題だと思いますが、年齢やカリエスリスク、歯種によって総合的に判断しなければならないのだと思いました。また、修復に入った場合、隣在歯や健全な部分を削ってしまう可能性がとても高いこと、カリエスになる確率が上がるということを学びました。エナメル質から象牙質まで齲蝕が進行する速度は比較的遅く、すぐ手をつけるのではなく、できるだけ修復を遅らせることが歯の健康を守り、歯を救うことに繋がるのだと考えさせられました。
多くの世界の歯科の考え方は未だに「歯の健康=金儲け」になっているところが多いが、本来は「歯の健康=口腔維持サポート」でなければならないと話の中にありました。私たちは口腔を守るとても大切な部分を担っているのという責任感をあらためて感じました。まず私たちが患者さんの長期にわたる口腔衛生状態の維持を望み、そのためには何ができるかを考え、多くの人に広めていきたいと思いました。今回学んだことを活かし、口腔維持サポートをするプロフェッショナルとして今後の診療に取り組んでいきたいと思います。
まだまだ先のことだと思っていたマルメ研修が終わりました。
出発前は、10時間以上のフライトに、苦手な英語、勉強と、正直、不安要素しかありませんでしたが、今は心の底から行ってよかったと思っています。
私が歯科衛生士学校に行っていた頃、ただ歯科衛生士という資格を取るために学校に通っていました。講義も面白いと感じたことは無く、私たち学生も単位取得のために教室に行って、気づいたら寝ていたなんてことが多かったように思います。なので、今回の研修に参加するにあたり、寝てはいけない!ということが、私のひとつの課題でもありました。しかし、そんな心配は全く必要ありませんでしたし、そんなことを思って今回の研修に臨んだことが恥ずかしく、もっと大きな期待を持って参加すれば良かったと思っています。
今回の研修は歯科の分野もそうですが、その他にも日本とスウェーデンの違いをあらゆる場所、場面で感じました。施設見学で訪問させていただいた保育所の規模やクラス割り、公立のデンタルセンターが50%もあるということ、保険制度、キャビテーションシステム、デンタルナースの存在など。
スウェーデンは予防先進国と聞いていたので、誰もが毎食後にブラッシングやフロスをし、間食も少ないのだと思っていました。しかし、講義の間のブレイクタイムには毎回パンやお菓子があり、町中やスーパーにもお菓子が沢山。ブラッシングも1日2回で、保育所では感染の問題から歯磨きはしない。これなら日本と同じかなと思いましたが、このスウェーデンという国には、メインテナンスを受けるという習慣がありました。
19歳まで医療費がかからない制度や、リスクの評価、歯科医療従事者の予防への考え方も学生の学ぶ姿勢も日本とは違うように感じました。特に今回知った、問題解決型学習(PBL)は日本でも早く取り入れたらいい学習方法だと思います。いろいろな観点から物事が見られるようになり、自ら調べたり、関心を持ったり、私自身もこういうことが足りていないな…と考えさせられました。そしてもうひとつ、スウェーデンの歯科衛生士と日本の歯科衛生士にも大きな差がありました。日本の歯科衛生士はスウェーデンのデンタルナースに近い立場で、スウェーデンの歯科衛生士は、浸麻ができて、レントゲン撮影も可能で、診断までできる。学校の教育方法や、歯科と政府との関わりなど、その辺りが日本とは差がありました。いつか日本もそんな環境が整う国になってくれたらと願います。
このマルメ研修に参加して、他院の方々と関わることができたり、言葉の壁にぶつかりながらも先生に質問したり、そもそもこのような海外研修に参加できたこと事体、数年前の自分からは想像できませんが、とても良い経験をさせていただきました。そして、現場の歯科衛生士の声や教育、臨床などももっと見てみたいと思いました。いつかまた機会があれば、その時はもう少し英語の勉強もして、参加したいと思える研修でした。今回学んだことや経験を日々の診療に生かして、歯科衛生士として頑張っていこうと思います。
故Douglass Bratthall先生の功績がDan Ericson先生を初めとする多くの先生方に受け継がれ、アップデートされながら今日もスウェーデン国民に深く浸透し続けている。文化や風土の異なる日本においても、それが実現し得ることを熊谷先生が示して下さっている。今回の研修でこのような歴史の一端に触れていることを、しみじみと感じた。
私は1年半前にキャリアを転じ、歯学部生となった。講義内容は、一大学生として知識の壁を痛感するところはありながらも、総じて分かりやすいものであった。講師の先生方はプレゼンテーション能力に長けており、難しい事象を分かりやすく伝えてくれた。通訳の岩上さんと西先生は、地域や講師特有の表現についても的確に訳して下さり、日本語で講義を受けているような印象すら覚えた。「カリエス、歯周病のリスクアセスメントとマネジメント方法」、「それらを行動医学に基づいて実践すること」、「医療の担い手となる学生に対する教育システム(PBL)」等、現在の歯科医療を形成する考え方や仕組について多くを学んだ。その提供方法として導入されているキャピテーションシステムは、医療者、医療を享受する国民の両者に対して合理的であり、経済的観点からも需給体制を維持させ得るものであると感じた。多くに根拠となる文献が示されており、根拠を得ることが難しいものに対しては、その理由を伺うことができた。それでも未だスウェーデン国民の多くは、歯科医院を「DrillしFillする場所」と表現するだろうとDan Ericson先生は仰っていた。
最後の講義スライドに研修のゴールのひとつとして”To get new perspectives”とあった。研修を通じ、日本を発つ前にはなかった視点を得て、新たな想像を描けるようになった。しかし私がいくら高揚感を覚え、想像を膨らませても、それだけでは社会に一切の変化をもたらさない。
”We realize it in Japanese society.”
今回の研修は私の歯科衛生士人生において、大変貴重な経験をさせていただきました。
日本での日常の診療では経験できない体験が沢山できたと思います。
初めての海外研修を受けてまず感じたことは、日本とスウェーデンの違いです。
制度はもちろんのこと、歯科治療に対するリスク評価と個々への必要な正しい情報の提供、歯科衛生士の仕事内容の差、歯科衛生士教育への取り組みを特に感じました。
ただ、直接スウェーデンで働く歯科衛生士の方のお話を聞いていて感じたのは、歯科衛生士として悩んでいる(考えていること)は日本とスウェーデンにあまり差はないんだ、ということです。
いかに目の前にいる患者様に今必要な情報を提供し、実際に理解し口腔の健康を維持してもらえるか。患者様の健康のサポートをしている、誇りが持てるやりがいのある仕事だということもあらためて感じました。
もっとスウェーデンの様なエビデンス、リスクに基づく歯科医療を提供しようという、意識の高い歯科医師、歯科衛生士が増えていけば日本の歯科医療も変わっていくのではないでしょうか。
歯科衛生士学校も3年制になっているならスウェーデンのように麻酔やレントゲン撮影、診断などができるようになり、もっと質の高い人材を育成していくべきだと思います。
PBL(問題解決型)という教育プログラムを日本でも積極的に行うべきだと思いました。そして教科書だけでの勉強、専門的な知識のことだけでなく、全体を見渡せ物事を深く考える力を養わないといけない、ということが重要なのではと感じました。
明日からの臨床は、今回の研修をきっかけに今見えている部分だけで考えずに、別の視点、世界水準で物事が見れるような歯科診療に取り組んでいきたいと思います。
今回のマルメ大学での研修は、自分を見つめ直すよい機会であり、歯科衛生士としてするべきことはなにかを再確認できたように感じます。初めての海外研修で緊張と不安もありましたが、始まってみるとあっという間に8日間が終わりました。
この研修に参加させて頂けたことに感謝致します。
歯科衛生士の社会的認知度が日本とスウェーデンに大きな差があると思いました。
日本で予防やメインテナンスという考え方は、広がってきていますがまだまだ予防先進国のスウェーデンのようではありません。
今後、歯科衛生士が'予防歯科における専門職'として広く認識されるように、
行動医学が私たちに必要とされている分野と理解し確かな知識を得て、患者に気づきを与え意識変化・行動変容してもらえるように、情報提供をし口腔の健康に務めたいと思いました。
スウェーデンという予防大国での初の海外研修、マルメ大学で講義を受けることにワクワク感いっぱいで参加させてもらいました。こんなにも勉強したのは学生の時以来かと言っても過言でないぐらい毎日頭をぐるぐる回転させていました。もっと若い時に出会っていればなと実感しています。とは言うものの10時と3時にはコーヒーブレイクがあり、時には窓を開け体を動かすなど講師の先生方も集中できる環境を作ってくださったおかげで一度も眠ることなく講義をうけることができました。特にダン・エリクソン先生は時間の采配がうまくよくジョークで私たちを和ませてくださいました。講義内容もすごく分かりやすく次回もう一度聞きたいと思っても聞けないのが残念です。
30年近く衛生士をやっていますが卒業した頃は早期発見、早期治療が一番だと思っていました。今でもそう思ってる歯科医院が多いことや、それ以前にX線を撮ることもなく明らか穴が開いてからカリエスに気づくそんな医院が多い中、スウェーデンの予防の考え方を学ぶと同時に日本は進んでいるようで何て予防に関しては中途半端なんだろうと思いました。実際自分たちの業務もいい加減な所が多く、MTMの流れの中でのサリバテストやリスク評価の大切さが再認識できました。多くのトピックスを学ぶ中で一瞬ふっと気を抜くと正直訳がわからなくなる内容もありましたが基本概念や哲学と言われる部分はしっかりおさえられたのではないかと思います。最後のキャピテーションシステムについては今後もっと利用する人が増加するだろうし患者さん側も病院側にとっても有益で今後どのような結果が得られていくのか興味深いところです。今回得られた経験を生かし多くの患者さんの健康を守り維持していけるように努力していきたいと思います。
研修を挟んで施設見学や自由行動の時にはコペンハーゲンやヒリエにある大きなショッピングモール(3年前にはなかったそうです)に行くことができ、講義とはまた違った有意義な時間を過ごせました。最終日、出発の前にもルンドへ行きマルメとはまた違った雰囲気を味わう事ができました。丁度マルメフェスティバルの期間と重なっていたのもラッキーでした。
講義や自由時間を通してオーラルフィジシャンである先生や衛生士さんたちと意見交換などができとても貴重な時間を過ごせたと思っております。
5日間の研修期間中、全ての物事が刺激的で感想文を書いている今も、思い出しながら大変気分が高揚しています。
授業の内容は時差の眠気を感じさせないほど、どれも興味深いものばかりでした。
カリエスやペリオについての講義の各論はもちろんですが、スウェーデンの基本的な考え方、そもそもの観点が違うこと、スウェーデンから見た日本という国の歯科医療を含めた国の現状や国民性などを知り、熊谷先生のおっしゃるワールドスタンダードの“本当の意味”が解った気がしました。
私が今まで診療をしながら抱いていた疑問はすごく小さな細かいことで、いかに狭い視野で考えていたのかを実感しました。
質疑応答の時間もたくさん設けていただき、研修を終えた今、とても清々しいすっきりした気持ちです。
それはこの研修の間で、私たちが次に何をすべきか明確な方向が見えてきたからだと思います。
ここで感じたことを医院のスタッフと共有し、患者さんにより良い歯科医療を提供できるよう更に努力していきたいと思います。
マルメ大学の歯科衛生士教育も大変魅力的で、卒後の衛生士のレベルの高さを肌で感じ、自信に満ち輝いている様子に憧れを抱くと共に、そのような衛生士を目指すことも私の目標の一つになりました。
そしてそのような意識の高い衛生士を育てることの重要性についても考える機会を頂けました
また、今回参加した他院の皆さんと意見交換の機会も十分にあり、医院にいるだけでは気づけなかった様々な視点での意見を聞けたことで、また違う目線で自分の医院を見れたことも、このマルメ研修に参加できたからこそだと思います。
医院は違えど同じ目標を持った仲間がこんなにたくさんいることも大変励みになりますし、日本に帰国してからもその繋がりを大切にしていきたいと思いました。
今までスウェーデンの歯科事情、国や地域のシステムなど何度も聞く機会はありましたがやはり“百聞は一見に如かず”です。
個人の力は微力かもしれませんが、少しでも日本の歯科が良い方向に変わっていくことを望みながら私たちにできることを精一杯取り組んでいこうと思います。
この度は素晴らしい研修を企画して頂きありがとうございました。
沢山の気づきと学びを得る事ができました。
沢山の論文を読んでエビデンスに基づいて行動していく事も大切ですが、何より
スウェーデンの方々の人としてのあり方や、個々を尊重する心を学びました。
それは街を歩いていても感じる事ができました
ボタンを押すだけで開く扉は学校だけではなく街全体にありました
これなら車いすの方、力の無い高齢のかたや小児でも重たい扉を開けられます。
幼稚園でも朝早くから預けられるので、女性の方も早く職場に復帰しやすいと思いました。
また、そこでも一人一人得手不得手が違うので、その子の得意な事を保育者が発見し伸ばしていく、このような国全体の考えが歯科の現場でも反映されているのではないかと思いました。
私は日々の診療で患者さんを口腔だけでとらえるのではなく全体で捉えるという事を意識し
実践しているつもりでしたが、スウェーデンに行って、今までの見方は患者さんの一部しか診ていない事に気づきました。
ダン先生を始め他の講師の方々もどんな質問でもお答えしてくださり私たちを受け入れてくださる姿を見れたのは本当に嬉しかったです。
今回の研修では知識はもちろんのこと医療従事者としてや人としてのあり方を学ぶ事ができました。
感動した事が沢山あるので、自分は何に対して感動しどう理解しているのかという事がまだ把握しきれていないので、感想文がこんなにも短くなってしまいました。
これもいかに普段からしっかりフィードバックをしていなく書く事の訓練怠っているかが現れてしまっている結果だと思いました。
何回も今回の研修を復習し、知識を深め、人として医療従事者としてのあり方考えていきたいと思います。
そして何より大切なのが行動することと学びました。
今回の研修で得た事、反省した事を行動して日々の診療に活かしていきたいと思います。
沢山の課題がありますがそれらをこなしていきたいと思います。
今回の研修会、人数の限られた中、参加させていただきまして大変感謝しております。以前より、耳にしていたことや、本で知り得た状況が、その土地へ行き自分自身の体で感じられた経験は歯科衛生士として大きな財産となりました。
出発の日、熊谷先生からのお手紙に「皆さんは、一個人として参加しているのではなく、日本の歯科医療が本当の意味で国民にとって有益なものになるために変革しようと取り組んでいる歯科医師、歯科衛生士の代表として参加しています」とありました。常にその言葉を胸に置き、先にある大きなものを見据えて、スウェーデンでの時間を過ごすことができました。きっと、他の参加者もあの言葉でこの研修をより良いものに変えることができたと思います。
スウェーデンと日本の違いをいくつも気づき、その違いがどこまで差のあるものなのかもよく分かりました。違いというのは歯科だけに限らず、行政・国民・教育など、またそれぞれとの関わり方の違いということです。教育の面ではPBLに関して興味深く、またその実践の時間も設けていただいたのでその学習法の意義も理解することができました。学習が受け身になることが、知識の習得や思考を阻害させるものなのだと考えさせられました。これは、自分自身においてはもちろん、歯科衛生士の学生と関わる機会もあるので、反映できればと思い始めています。
また、今回400近いガイドラインについての存在をしりました。その中で、行動医学を用いた予防指導をすること、モチベーションインタビューというものと、それの有効性を知りました。患者教育の重要は十分感じている分、それに関する知識を今後深めたいと思っています。今回、生まれた自分への今後の課題の一つでもあります。
他の課題としては、治療介入の時期についてです。デンタルでの進行の比較をするとリスクコントロール下では進行が抑制されていており、ここまで変化しないものなのかと驚きました。勉強を重ね、スタッフ間で同じ意識と知識を持つことを今後徹底していきたいと思いました。
今回、強く感じたものがエビデンスをもとに行われる診療の重要性とデータを読む力の必要性です。私自身、データを読み解く力がまだ低いのでそこを高めて、先に進められるように努力していきたいです。自分の力のなさを実感じた日でもありましたが、足りないところを見つめなおせた日でもあるのでよかったと思います。あとは、今抱えた思いを継続して、実行する努力を継続すること。
現在のスウェーデンの国ぐるみで予防・健康への取り組む姿勢や、それに関わるシステム数々の研究がもとにされエビデンスをベースに作られているように、未来の日本でも実現することを願っています。行政のことを思うと困難であろうとは分かりますが、まずは、自分に近いところから変化を与えられる存在になるよう、一歩一歩進んでいきたいと思っています。
これまでオーラルフィジシャンチームミーティングでは、他院の方々と交流することは少なく、どんな様子で診療をしているのか、どんな想いでいるのかは知ることはほとんどありませんでした。ですが、今回は日数も多く環境的にも会話をすることが多く、交流の機会がもてたことは良かったです。同じ熱い想いで本気で日々取り組んでいる医院があると思うと、スウェーデンのような未来が本当にやってくるのではないかとすら感じてしまいました。仲間がいると思うのは心強いものだと思いました。そういった面でもいい研修となりました。
一人の患者さんを見る目、世界を見る目、どちらも持ち合わせた歯科衛生士に成長できるよう努力を重ねていきます。本当にありがとうございました。
とある12月の昼下がり。
「先生、スウェーデンの研修行く?」
院長からのこの言葉が、私にとって2014年マルメ研修へのスタートでした。
もちろん金額も聞かず「行きます!!」と即答したのは言うまでもありません。
一般開業医にて臨床経験を積み、削る、つめる、削る、印象する、時には抜歯。いわゆる治療というものを行ってきましたが、治しても治してもう蝕というものはなくならない。
何故なくならないのか。
当時、勤務していた歯科医院では予防に重点を置いてはいませんでした。そこに疑問、無力さを感じ、予防を中心に考えている歯科医院で働きたい、そう強く思い山下スマイル歯科にて昨年の7月から勤務することとなりました。
勤務し始めてまだ日が浅く、予防に関しての臨床経験、知識は赤ちゃん程度。
そんな中での今回のマルメ研修を受講できたことは、私にとってとても幸運で一生に一度のチャンスとなりました。
大いなる期待とワクワク感、そしてほんの少しの不安を抱きながら待ちに待った研修は始まりました。
最初の講義はダン・エリクソン先生の研修目的と歯科医学の本質についてでした。私達の仕事とは何か? という重要さを教わり、興味深い内容とユーモアのある先生のお話で、私たち受講生は歯科医療のあるべき姿、予防の世界へと一気に引き込まれました。
どの授業も熱意があり、新しい発見があり、先生方が一丸のチームとなって充実した講義をして下さり、大変素晴らしいものでした。
今回の講義で感銘を受けた内容は
1、 カリエスの進行。講義と演習
2、 ナショナルガイドライン RECOMMENDATION
3、 キャピテーション モデル
についてです。
1、カリエスの進行、講義と演習では観察が合っているのか、評価が合っているのか、いつも私達はエラーをしている事、う蝕と判断し次に見たときにはそうでもないと判断することもある。そのような事は常にあるんだ、ということを聞き、驚きました。常々迷うことはありますが、そういうものなのだ、それが当たり前なのだという事に気づきました。
また、演習では個人によっての判断の違い、それを目の当たりにし、あらためて臨床の難しさ、色々な考え方や判断があるのだということを知りました。
2、ナショナルガイドライン リコメンデーションでは、疾患の重篤度やそれに対する治療のプライオリティーがエビデンスに基づいて数値化されているという内容で、このようなお話は初めて聞きました。素晴らしいと思いましたし、大変勉強になりました。
3、キャピテーション モデルについては、スウェーデン公立歯科医院でのリスク評価の方法、それに伴った料金、治療法、フォローアップの仕方などを一律にしたプログラムであり、これによって20歳以降の人々にも来院してもらおう、予防をしていこうという画期的なもので、このような考え方や方法に感動したのを覚えています。
一連の授業や見学をして、大事なことは今回学習したことをきちんと自分自身の中で習得すること、臨床にいかす事、日々の研鑽が必要であることを忘れてはいけないということです。
講義の中で治療時の隣接面ダメージが6割強あることを学び、日本に帰国してから早速Fender Wedgeを用いて治療を行ってみました。学んだ事を実践することで確かな手ごたえを感じつつ、一つ一つ着実にできるところから始めようと思いました。
日本に在住し日本の環境、制度の中で今生活している私たちに何ができるのか?
授業の中で先生方が何度も「決めるのは先生達だよ。」と言ってらっしゃいました。自分達で考え、やってみなさいというメッセージ。まだまだすべきこと、そこに未来、そしてやりがいがあります。
2014スウェーデン・マルメ研修に参加して:山下スマイル歯科:矢下幸恵子
今回、「Advancing Dental Health」 を予防歯科の先進国・スウェーデンで学ぶことができました。
熊谷先生のオーラルフィジシャン育成セミナーを受けて、「ワールドスタンダードを知り、エビデンスに基づく治療の大切さ」を教えていただきましたが、まさに、その内容を国家レベルで実施して、虫歯予防の成果も出しているスウェーデンで、現在進行形の歯科医療について学べる、とても素晴らしい機会でした。
どの講義も、とても興味深く聴くことできましたが、私が特に印象に残ったのは、冒頭で、ダン・エリクソン教授がお話しされた「歯科医学の本質」でした。これなくしては、オーラルフィジシャンとしての歯科医療が成り立ちません。このお話を聴くことで、あらためて、真髄に気づかされ身が引き締まりました。
また、スウェーデンの歯科衛生士についてのお話も心に残りました。スウェーデンと比べると、日本のDHができる業務範囲は狭いですが、少なくとも、私たち、オーラルフィジシャンを卒業したDHたちは、同じように頑張っているのではないか、と感じました。ただ、足らない部分もたくさんあります。高齢者歯科や禁煙指導などがそうですが、私がもっと興味深かったのが、「行動医学」というワードです。DHは、SRPなどのスキルも大切ですが、患者さんと協力して、その人のリスクを下げることも重要です。指導というのは、「人」対「人」なので難しい部分も多いです。私自身、日々臨床で苦労しているので、とても興味がありました。スウェーデンでも、「行動医学」についての特別な教育プログラムがあるということでしたが、それが1年後くらいに、オーラルケア社から何らかの形で出るというお話だったので、それを期待しています。今から待ち遠しいです。
そして、「歯科医療のためのナショナル・ガイドライン」と「キャピテーション・システム」!!
本当に素晴らしかったです。これは、スウェーデンの宝であり誇りでもあるのではないかと思います。エビデンスに基づいたガイドラインは、私たち日本でも、各医院単位で取り入れることはできそうなもので、とても有効な情報でした。キャピテーション・システムは保険のシステムなので、これを日本で行うのは難しいですが、何らかのアイデアのヒントになりそうで、説明を聞いているだけでもワクワクしました。
最後に、ダン教授をはじめ、スウェーデンの講師の方々のレベルの高さ、素晴らしさにも感動しました。講義の内容も、もちろんそうですが、人としての魅力があって、「上に立つ人」特有のオーラを感じました。そして、その素晴らしい講師陣の中に女性が多かったのは、同じ女性として嬉しかったです。マルメの町を歩くと、妊婦さんが日本よりも圧倒的に多いことに気づきました。きっと、女性が安心して子供が産める社会で、産んだ後も社会進出できる環境が整っているからなのだと思いました。この素晴らしい経験を毎日の臨床に生かしてまいります!
マルメ感想:早乙女歯科:神家満 久実
私にとってこの研修で過ごした日々は、とても価値がある事ばかりでした。私がこの研修に参加しようと決めたのは2013年のチームミーティングでのあの会場です。純粋に予防歯科先進国であるスウェーデンの歯科を自分の目でみて、そして基礎から勉強をしたいと思ったことがきっかけでした。
私はまだ臨床経験も3年目と浅く、もちろん知識も技術も社会経験もない中での参加でした。そのような中で初めはとても不安で、まだ参加するには早いのではないかと悩んだこともありましたが、しかしそんな不安は初めのダン先生のイントロダクションの時に「To confirm knowledge To add knowledge To get new perspectives」という言葉を聴いてなくなりました。周りと比べず自分なりの成長ができれば良いのだと思えたからです。マルメ大学で受けた講義はどれをとってもエビデンスベースの内容であり、またそれらは全て予防のために生きているものばかりでした。あらためてエビデンスやデータというものをベースに物事を考えていくことの重要性を再確認しました。
またマルメ大学で取り入れられているPBL法も大変興味深いトピックでした。PBLによって教育を受けた学生は、臨床の場でも自ら考え行動できる歯科医療従事者になると講義で話されていました。私は何かわからないことがあると、すぐわかる人に聞くか、そのままにしてしまうことがあります。ただしそれでは身につくどころかその場しのぎになってしまいます。患者さんとのコミュニケーションを築いていく上で、衛生士としての知識も信頼の一つにつながると思います。そういったときにPBLで自ら学び得た深い知識が役立つのではないかと考えさせられました。日頃PBLを通して学ぶこのとは難しいとは思いますが、物事の考え方や学び方の一つとして役立てて行きたいです。
そして、キャピテーションシモデルについても多くの学びを得ました。スウェーデン各地の公立の歯科医院で、統一されて行われている事やデータが共有できたりする事、統計を出せたりする事に驚きました。このようなシステムがあることで、統一された規格があるので通院する患者さんも安心であり、衛生士もアセスメントをするだけの力量が必要となるため、知識や技術も統一されやすいという利点があるなと感じました。それと同時に日本も早く予防の観念が根付き、そういった日本全体での取り組みが始まれば私達のやっている予防の意義が早く日本に広まるのではないかと考えました。
この研修は大学での講義だけではなく、公立の歯科医院や保育園、企業のお話も伺うことができて大変充実した5日間を過ごす事ができました。
未熟ながらに参加し、充実したマルメ研修でしたが、やはり自分の知識や経験を積み重ねてから参加したら、もっと違う視点からより多くの事を学べるのかなとも思いました。なので、さらに知識と経験を重ねた時にまた参加したいと強く願います。そしてこれからも患者さんの口腔の健康を一生守り育てることができるよう、今回の研修を多いに活かし、今自分ができる全てのことにベストを尽くして行きたいと思います。
オーラルフィジシャン海外研修をへて:オーラルケア:久松 麻耶
今回の研修を経て、私は“歯科衛生士”として、“人”としてたくさんの気づきを得ることができました。
D Ericson先生がマルメ修の目標(①知識の確認、②知識を加える、③新しい視点をもつ)を掲げてくださったことで、研修をどのように受けていくべきなのか? 自分の目標はどこにフォーカスすべきなのか明確に聴き進めていくことができたように思います。
今回の感想文は、③の新しい視点をもつという点について述べさせていただこうと思います。
“予防はよく考えないと、良いことをしていると思えず、エキサイティングではない”という視点
本当にその通りだと感じています。
人は達成感を求め、良いことをし、感謝されたい気持ちを潜在的に持っている。人の脳のシステムを考えさせられる講義をしてくださいました。短期的に患者さんの疾患を早急に治療し続け、被せたことの達成感、患者さんに感謝されるという満足感を得ることができます。これによりスウェーデンでも「予防はエキサイティングではない」と考える歯科医師もいるようです。
しかし、それは患者さんにとっても医師、衛生士にとっても一時の満足感であって、患者さんの人生において、本当の感謝とは何か、本当の満足とは何かをきちんと考えられていないのではないか? と疑問を投げかけられているように思いました。
歯科医療が患者さんの健康にどのくらい貢献できているか・・・予防を軸とした歯科医療を提供し続けることでこの貢献度は確実に高まるのだと確信することができました。
“自分の意見が正しい・普通だ・常識だと思わずに、常に自分を疑う事”
D Ericson先生のお言葉です。
権威ある先生方でも、自分が必ずしも正しいと思わずに一度立ち止まって、他の先生や生徒・患者さんの意見を聞き自分を客観視する。
そして、一歩引いてもう一度冷静に考える。
自分と意見が違った場合、その人が発した意見は自分の経験していない、過去の経験や自分と違った感性・価値観の意見であるため、まず、その人がなぜこの意見を述べたのかという考えを聞き、理解することがとても重要で自分のヒントにもなるということを感じました。
D Ericson先生のこの一言で、私は自分を客観視すること・視野をもっと広げることの重要性をさらに強化していこうと決めました。
また、このような視点を常に持っていらっしゃることで、権威ある先生方にも関わらず、気さくにユーモアあふれる接し方をしてくださるのだと、心から尊敬いたしました。権威ある身ではありませんが、私も様々な人の反応からたくさんのヒントを得ていきたいと考えています。
この度、“新しい視点をもつ”という点で書きましたが、日本を離れ、スウェーデンから日本を振り返り、あらためて日本の歯科医療を見つめなおしてみました。“予防に対する意識の違い”や“患者とのディスカッションの重要性”という点において、スウェーデンと日本では大きな違いがあり、これがまた歯科界に大きく差をつけているのだと実感しました。
今回の貴重な経験が、研修に行ってきたという満足だけにならないよう、オーラルケアでの共有はもちろん、情報を必要としている歯科医院さんにお届けできるよう、この機会をさらなる原動力とし、今後も努めさせて頂きたく思います。
マルメ大学研修Advancing Dental Healthに参加して:株式会社オーラルケア:関山 牧枝
歯科衛生士になると決めて以来、予防歯科の本場であるスウェーデンに訪れ勉強をしたいとずっと想いながらも勇気と決断ができず働いてきました。オーラルケアに入社してからは著名な先生方の講演を聞く機会にも恵まれ、本当の予防歯科を学びました。しかし、講演を聞けば聞くほど「スウェーデンで直接学びたい」という気持ちが強くなっていました。
日本の歯科衛生士学校は“知識を詰め込む”“国家試験に合格する”ということに重きを置きすぎ、歯科衛生士として“どんな知識・スキルを持っているべきなのか”“それは現場で役立つ状態で記憶されているか”ということとはかけ離れているように感じています。入学の条件がそもそも大きく異なるという事実はありますが、歯科衛生士として、患者さんに接するプロとして、「何を学び・何を理解し・何を提供するのか」これは日本でもスウェーデンでも変わることのない事実だと思います。
だとしたら、今私は歯科衛生士として患者さんの歯を守るためにどんなことができて、どんなことができなくて、どんな知識を強化しなければいけないか・・・を考えながら、マルメ研修に臨みました。
知識がないことは理解に苦しみます。何となく知っているだけでは、私たち以上に知識のある先生方から本当に意味ある形で講義の内容を聴き、自分のものにすることはできません。英語と日本語が逐次通訳される講義ではより理解のスピードを上げる必要があると過去の経験から学びました。そのためにマルメ研修前に「トータルカリオロジー」をくまなく学びました。関連する情報は調べ追及し、自分のものになるまで何度も確認しました。
実際にスウェーデンの地に立ち、Dan Ericsson先生をはじめ多くの講師の先生方から講義していただきました。著名であるかそうでないかではなく、同じ志を持つ歯科医療従事者として接してくれたことにも驚きましたが、講義の内容が実践的であり、私たちがイメージしやすいように理解しやすいようにユーモアを交えてお話してくださったことがとても印象的でした。
多くの知識を得られたことはもちろんですが、エリクソン先生の講義でもお話しくださいました【知識の確認・追加・新たな視点を得る】が私の頭のなかで自然と行なわれているような感覚になっていることに気づきました。ベースとなる知識を持って講義が聞けたことで、1つ1つの知識が確認され、深くなり、より納得できるものになっていきました。中にはベースが作れなかったテーマもありました。やはりそのテーマは上辺の理解に留まっているように思います。これは反省すべき点です。学ぶ環境があるにも関わらず、学ぶベースがないというのは教えていただいている知識をむだにしてしまうことに繋がるのを身を以て感じました。
事前にどれだけの準備ができたのか?
納得できるまで調べつくしたか?
マルメ大学で実施しているPBLは、上記を自分の関心のあることから追及していくというとても有意義で効果のある方法だと講義を聞いて、また頭の中でシュミレーションして理解・イメージすることができました。“知識を詰め込む・試験でいい点数を取る”を目的にしていては、絶対に得られる効果ではありません。
多くの講義から、帰国後すぐに実践していることは、「学習のスタイルを変える」ということです。教えていただいて知識を自分のものにするために、学び方を変え、プロフェッショナルであるべく適切な学習ができるように、そしてその学習した知識を本当の意味で活用できる状態に自分の中で仕上げたいと、マルメ研修から帰国して以降日々取り組んでいます。講義で聞いたことだからとそのまま鵜呑みにするのではなく、なぜなのか? どうしてなのか? 何をしたらそうなるのか? などずっとずっと深く理解していけるようにしていきたいと考えています。
私自身がそうすることが、結果的に周囲にも影響を与え、オーラルケア全体の知識となり、歯科医院に提供するに値する情報になるだと思うからです。もちろん自身のためでもありますが、私は歯科医院で働く歯科衛生士ではありません。だからこそ、私たちがしなければならない・できることがあります。それは得た知識を歯科医院で働く歯科衛生士に意味ある形で提供しつづけるということです。もしかしたら、「学習のスタイルを変えてもらう」ためのアプローチも必要なのではないかとも考えています。
セミナーや研修は参加して終わりではありません。参加して得た知識と視点をどのようにして自身の活動に反映していくのか、さらにはそれらを反映したことで患者さんや日本の歯科医療にどんな成果を残すのかまでを考えなくてはいけないのだと思います。
マルメ研修でお会いした先生方はみなさん、本当の意味でさまざまな分野で貢献され、成果を残されています。私も先生方と同じレベルで今後の歯科医療に貢献できるよう日々努めていきたいと考えています。
「本場で学びたい」という気持ちが、「スウェーデンでお会いした先生方に知識でも経験でも近づきたい」に変わりました。現状はまだまだほんの少しも近づけていないと思います。だからこそ、私がやるべきことはまだまだあります。プロフェッショナルであるということは、学びと成長に終わりがないということだと思います。
今回マルメ研修で多くの知識を学びましたが、知識だけでなく「人間としてどんな人生を歩むのか」を様々な形で教えていただいたように感じています。私は歯科衛生士としての将来が明るいものではない・・と思い、臨床現場から離れました。ですが、本来歯科衛生士は患者さんにとって本当に必要な存在なのだと強く思っています。自分のような歯科衛生士さんが増えないように・・・それも目標として今後の活動に励みます。
日本で本当の意味で予防が当たり前になる時代を作ることで恩返しできれば思います。
2014年 オーラルフィジシャン マルメ研修:平井歯科医院:歯科衛生士:太田 惠
日本の歯科医療では考えられない、しっかりと考えられたシステム、国民一人一人の歯の価値観の高さ、学生の時から学ぶ体制が整っている環境など、本来の歯科医療とは何か実際に肌で感じ、またマルメ大学にて色々な講義を受け、スウェーデンが現在問題を抱えている事と日本の問題を抱えている問題とはかけ離れている現状を知る事ができました。
スウェーデンでは当たり前のことが日本では通用しない現状ですが、日本で熊谷先生が35年間行ってきた事をもっと私達医療従事者が国民に求め伝え続けなければ、日本の歯科医療は変わらないのだと感じました。
私達が今できることは何なのか、日々考え国民全体が変われることができる様、実行し患者さんに伝え続け、次世代へ繋げていかなくてはいけないと思いました。
今回のマルメ研修を通じて、日本の現状をあらためて見直し、何のためにMTMやメインテナンスを行っているのか、医院全体で話し合う時間を設けたいと思います。また、患者さんにも今回のスウェーデンと日本の違い、どちらを選択すべきか患者さんともう一度向き合っていきたいと思います。
スウェーデン・マルメ研修に参加させていただいて:日吉歯科診療所:吉田 安子
「歯科医療哲学」を直接学べる機会を与えて頂けた!その瞬間から
とにかく、内容の全てをしっかり習得しよう!という今までには無いくらいの強い意志で研修に臨みました。
D Ericson 先生の「持っている知識を確め、知識を加え、新しい展望を得る」から始まった講義初日から5日間、今確かに自分の目で見ている!今確かに自分の耳で聞いている!という実感にわいていました。
率直に感想を述べさせていたくと、スウェーデンの歯科医療と日吉歯科診療所の基本は同じであるとあらためて確認できました。
特に、リスクアセスメント、メインテナンスの重要性とこれら無くしては不可だと思われるMI 治療がそうでした。
スウェーデンと日本。環境、文化、国民性等の違いはあっても、歯科予防治療に対する意識の大差は、国の制度、価値観の違いからなのでしょうか。
D Ericson 先生が「スウェーデン人に歯科医院はどういう所だと思いますか? と訊いたら...歯を削る所と答えるでしょう。しかし、スウェーデン人の良いところは、必ず定期的に来院する事です。だから、caries? 疑わしければ待て!ができるのです」とおっしゃっていました。また、「現状維持(予防)には、高度な知識と長い時間が必要です。それにより地域の人々の口腔の健康を維持し報酬を得、生計をたてるのです」とおっしゃっていた事が印象に残っています。
日本の歯科医療従事者が、今直ぐに、何を気づき、やるべきか? と問われたように思えました。
スウェーデンと日本の歯科衛生士の権限に差はあっても、予防のプロフェッショナルとして重要な役割を果たす義務がある事は確かです。
日本の歯科医療の変革が使命の歯科医療従事者の一人として、一人でも多くの患者さんに、確かな事を伝える自信が増しました。
「歯科医療哲学」直接肌で感じ取れました。それは、言葉では表せない、今までにはなかった体験であり一生の財産になりました。
研修の半ば、マルメ市庁舎に訪問させていただいた時は「熊谷院長がマルメ大学名誉博士号を授与された所!」と思いながら、研修の機会を与えてくださった事に感謝していました。
そして研修に携われた方々に、深く感謝しています。
そして、スウェーデンの人々の笑顔にも。
マルメ研修の感想:日吉歯科診療所:幡野 彩乃
今回は初めての海外研修であり、私が日吉歯科以外での初めての勉強、研修でもありました。
印象的だったのは、MTM、カリオグラム、エビデンスに基づく臨床など日吉歯科で私が見てきた事、勉強させて頂いた事がそのままだったということです。公立の歯科医院も見学に行きましたが、個室や器具、整理整頓の仕方など、「日吉歯科と同じだ!」と感じた事が多々ありました。世界的に評価される診療室やそこで働く歯科医療スタッフには共通する事が多くあるのだと思いました。熊谷先生は常々、国際的に評価される診療室を作り、先進国の歯科医師・歯科衛生士と同じようにプロフェッショナルでなければならないと仰っています。今回のマルメ研修を通じて、そういった診療室で学んでいたことは私にとっても自信につながり、また、日吉歯科しか知らない私はとても幸せなことなのかもしれないと感じました。
DrでもDHでもない私が出産、育児のため仕事も離れている中での研修だったので大きな不安の中参加しました。しかし、ダン・エリクソン先生をはじめとしたマルメ大学の先生は、私たちの距離が近く、同じ目線で授業をしてくださり、難しい内容も理解しやすく解説して頂けました。ユーモアもたっぷりでとてもお茶目なところも、授業を集中して聞ける雰囲気作りをして頂いているのだなと感じました。そのおかげもあり、最初から最後まで集中して講義を受けることができました。
スウェーデンはDH学校の倍率が11倍だったり、DHが伝麻やカリエス除去ができたり、歯科医師の半分が公務員だったりと、日本と仕組みや業種の人気がぜんぜん違うことは興味深い内容でした。また、R2、キャピテーションモデルなどをもし日本で取り入れる事ができたら、患者さんの意識はもっと上がるんじゃないかなと思うシステムも多くありました。
スウェーデンは国レベルで予防歯科意識が高いとの事でしたので、ほとんどの人が禁煙していて、キシリトールガムを噛んでいるようなイメージがありました。しかし、私が思っていたより喫煙率は高く、スウェーデンの歯科にも「削ってほしい」と思っている患者さんが多かったりすることも知りました。定期的に来院している日吉歯科の患者さんの方が予防意識は高いのではないかと感じる一面もありました。
今回の研修で心に残っている言葉は、エリクソン先生の「虫歯になるのは誰のせいだと思いますか? それは患者です」「永久修復なんてない」という言葉です。どんなに良い修復治療をしても永久には持たないので、やはり自分の歯を守る事が大切であり、患者さんにも自分の口腔の健康を守る責任を認識してもらう事が大切だとあらためて考えました。
今回研修に参加して、他のDrやDHの方たちとお話する機会があったり、沢山の先生からお話を聞けたりと、とても充実した時間を過すことができたことを感謝しています。
マルメ研修を終えて:歯科衛生士:阿部 繭
成田空港からマルメへ向かう朝、結団式が行われ、熊谷院長先生から研修参加者に向けて次のようなメッセージが届きました。
「研修には一個人として参加しているのではなく、日本の歯科医療がより患者さんにとってより有益なものになるよう取り組む人の代表として参加するように」と。
そのメッセージを受け、私はあらためて研修に対して身が引き締まる思いがしました。
私は、このマルメ研修で予防に長けたスウェーデンの歯科医療に従事されている先生方のお話しを直接聴きるということで楽しみにしていました。
マルメ大学での研修一日目、エリクソン先生から今回の研修の目的、目標が話されました。目的は口腔の健康を向上すること。そのために今持っている知識の裏付けを行い、知識を加え、新しい視点を得ることが大切であると。
講義の内容は、リスクアセスメントの内容やその大切さ、カリオグラムなど、これまで持っていた知識の確認を行い、さらに、マルメ大学の先生方の直接の指導のもと、実際にサリバテストを行い、カリオグラムの入力を行いました。
研修はカリエス、歯周病という疾患の奥深さ、複雑さをあらためて感じた一週間でした。
例えば、コンタクトカリエスのレントゲン読影で、最初に読影した時と再読影した時では、カリエスのカウントが変わることがあったり、また、カリエスの治療介入時期をエナメル質内カリエスにするのか、象牙質まで進行してから行うのか、治療の時期に対する考え方が変わることで、診断にバイアスがかかり、診断も変わってくる。そして、国別に比べてみても、スウェーデン、ノルウェー、フランス、ブラジル、アメリカなど国によって治療の介入時期は異なるという点が興味深いと感じました。
そして、カリエスの治療に踏み切る時期もカリエスリスクなどにその場に応じる、という結論に至り、カリエスという一つの疾患の奥深さを感じました。
今回私にとって新たに勉強になったことはフッ化物の使用で、コンタクトカリエスが存在していても、エナメル質の透過像が薄くなり、コンタクトカリエスの診断が難しくなるということです。
また、カリエスの遺伝的要因について、同じ遺伝子をもった一卵性双生児でかつ、生後分かれて暮し、別々の環境において育った被験者の調査を用い、講義がありました。
それによると、味覚が敏感な人はカリエスになりにくい傾向があるということ。
研修の3日目には公立幼稚園や公立歯科クリニックに見学に行く機会がありました。そして、スウェーデンのオーラルケアの方にマルメ大学にお越し頂き、スウェーデンの訪問歯科医療制度について講演して頂き、また訪問診療で実際に使用している器具などを見せて頂きました 。スウェーデンでは訪問歯科診療は無料の部分があり、高齢になって在宅や施設にいても、手厚く歯科診療が受けられる制度が整い、それを専門としている会社が設立されていると知り、日本にもそういったより手厚い制度などが整備されることを望みます。
研修最終日にはスウェーデンで行われているキャピテーションモデルについて講義がありました。キャピテーション制度を使用するかどうかは自由に選択することができ、スウェーデンでは約50%の使用者がおり、特に若者はキャピテーション制度を使用している人が多い。それはキャピテーションモデルが、スウェーデンでは20歳から歯科医療費が発生するため、その後も定期的に歯科医院を受信することを期待し、作られた制度であるからです。キャピテーションモデルは10段階の支払いランクがあり、3年ごとに更新されます。
またスウェーデンの歯科衛生士学校のカリキュラムや日常業務について講義を聞きました。歯科衛生士学校は2年制、その後希望性でプラス1、2年で学位の取得が可能。国家試験は特になく、卒後は即戦力となるそうです。
入学後、PBLによる主体型学習やマネキンを使った実習が週半日を2回行い、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士によるチーム医療も行われています。大学の治療は大学教授によるものと学生によるものを選べ、学生による治療費は大学教授の3倍以上となっており、学生の治療は退職者などが多く選択しています。そして、学生による治療はじっくり行われ、しっかり話をきいてくれるので、好評とのこと。
衛生士学校の学生は最初は軽度の症例の患者さんを担当し、学期が増すごとに重度の患者さんや、小児や高齢者を担当することになります。
研修を通して、スウェーデンの歯科衛生士がいかに独立しているかや、歯科医療の本質、エビデンスに基づいた医療の大切さをあらためて感じた一週間でした。スウェーデンでは、国民全体の口腔健康を維持、増進するため、小児、成人、高齢者、そして移民などが多く生活する地域の医療まで幅広くハード、ソフト面において整備がなされており、日本もその点において学ぶことが多いと感じました。
研修で歯科衛生士は今日、歯科医療を施す時間よりも患者さんとコミュニケーションをとり患者さんを「助ける」役割があるというお話がありました。この言葉をきき、歯科衛生士は患者さんの言葉によく耳を傾け、理解し、口腔の健康を維持、増進できるような歯科衛生士業務ができるよう努めたいと思いました。そうすることで、日本の歯科医療が少しでも患者さんにとって有益なものとなる手助けができれば、と感じました。