熊谷先生の言葉
ボストン大学研修セミナーを終えて
熊谷 崇
オーラルフィジシャンセミナーの第一回の開催から、約2年が経過しました。
多くの方に受講していただきましたが、全員が修了証を手にしたわけではありません。
修了証を手にされた方でも、日常臨床に戻ると、メディカルトリートメントモデルにのっとった診療を診療所全体に反映させて実践してゆくことは本当に難しいと感じている方も多いと思います。
さて、4月4日から12日まで、オーラルフィジシャンを取得した方々を対象にした、「ボストン大学研修セミナー」をボストン大学の全面的なバックアップのもとに行うことができました。
今回の参加者は総勢31名。
ボストン大学歯学部の先生方による3日間の集中講義は歯科のさまざまな分野における最先端の情報を網羅した質の高いセミナーでした。
フォーサイス歯科衛生士学校の見学や、開業医の診療所見学もボストン市内の大規模・小規模の都市型の診療所を2カ所、ボストン郊外で開業している診療所も大規模・小規模2カ所の計4カ所見学するなど、参加者の皆さんには単なる研修セミナー以上の経験や発見の多い旅になったことでしょう。
また、期間中に何度か催された大学関係者や開業医の先生方とのパーティーなどを通して、歯科医療に携わるものの社会的なステータスや人間性などにふれて、学ぶことも多かったのではないかと思っています。
参加した多くの先生方からは、それぞれに今回のセミナー旅行について、さまざまな感想が寄せられましたが、ほとんどの方は今回のセミナー旅行をよいきっかけとして自分の臨床を再度見直し、オーラルフィジシャンとしてどのように社会に貢献すべきかについて、新たな模索に入ったように感じられました。
そこを突き抜ければ、歯科医師として診療所としてきっといくつかの段階をステップアップすることになると思います。
そういう意味では、それぞれに大変意義深いセミナー旅行になったのではないでしょうか。
また今回のセミナーでは、メディカルトリートメントモデルの実践が歯科医療を行うにあたって特別なものではないということがよくお分かりいただけたのではないかと思います。
ワールドスタンダードの歯科医療においては、それがごく当たり前の手順に過ぎないことがよく理解できたのではないでしょうか。
これがきちんと行われている歯科診療所でなければ、本来歯科医師としての会話は成立しません。
私達はともすると最先端の歯科医療の情報に心を奪われがちですが、最先端の情報を本当の意味で臨床に生かすことができるのは、歯科医療の基本的な技術やシステムをきちんと積み上げていて、データもよく管理され、自身や診療所の実力を客観評価できる診療所以外にありません。
私はオーラルフィジシャンセミナーで、ワールドスタンダードの診療所づくりが目標であることをこれまで何度も繰り返しお話ししてきました。
なぜ診療室が個室でなければいけないのか、必要な検査をきちんと行う診査診断の重要性、歯科衛生士が自分のチェアーを持って歯周治療や予防処置などのメインテナンスケアを歯科医師と連携して行うシステムの構築やそのための教育、エビデンスに基づいた治療を実践するための知識や技術の習得の必要性などを繰り返し強調してきました。
しかし、それは私自身が作り上げた歯科医療に対する個人的な理想論なのではなく、歯科先進国で診療にあたるためには非常に基本的な概念であることを本当によく理解していただいたのではないかと思います。
大学でも開業診療所でも、その規模の大小や患者さんのターゲットの違いに関わらず、歯科医療に対する基本的な概念はほとんど変わりがありません。
歯科診療所の本来あるべき姿を、しっかり確認していただけたと思います。
そして、もう一つ大事なことは、どの歯科医療関係者も、歯科衛生士学校の生徒でさえ、社会人として人間として非常にプライドを持って仕事に取り組んでいることでした。
かれらのそうした姿を大変うらやましく思いました。
私達の仕事というのは、社会的に本当の意味でステータスのある仕事なのです。
人間性を磨き、今以上にプライドを持って社会貢献できる歯科医師でありたいと思います。
メディカルトリートメントモデルの実践は、その様な歯科医師になるための最初のステップでしかありません。
私達の実践はまだ始まったばかりです。歯科臨床の行く先はまだまだ奥深く、その先にはより多くの感動と喜びが待っていると信じます。
皆さんの今後の健闘を祈りたいと思います。
最後に、今回の研修セミナーがさまざまな方のご協力や努力によって実現できたことに感謝したいと思います。
特に、ボストン大学では学長はじめ多くの先生方にこのプロジェクトの成功のために協力していただきました。
見学を許していただいた歯科衛生士学校や、開業医の先生方にもお礼を申し上げたいと思います。
そして、実際に多くの人と交渉してこのプロジェクトをコーディネートし、実現のために働いてくれた宮本貴成君に心からの感謝を申し上げます。
■ボストン大学研修セミナー日程表
■参加者の感想
参加者の感想-PDF